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公爵家別邸。
別邸があるというだけでも驚いたのに。
(なにこれ、広っ…)
入口の前には大きな噴水、裏には庭園、そして屋敷のなかには中庭なんてものもある。
「植物で溢れてて、素敵です…」
前世憧れたドラマや物語に出てくるようなお屋敷だった。
「気に入ってくれたのなら光栄です」
まずは部屋へご案内します、と手を差し出される。
どきどきしながらその手を取り、連れていかれたのはモスグリーンと金色を基調とした広い部屋だった。
一つ一つの家具などは落ち着いた色合いで、素人目にみても質の良いものだった。
「こ、こんな素敵な部屋使えないです!ご厄介になるわけですし、もっと小さな、そう屋根裏とかで全然…」
「気に入りませんか…?」
あまりの待遇のよさに遠慮をするリディアナに、しょんぼりとしたクラウドが悲しそうに言う。
「え?え?!気に入らないとかではなくて!」
誤解を解こうと慌てるリディアナに、クラウドが床に落としていた視線を上げた。
「では気に入っていただけましたか?」
「も、もちろんです!気に入らないとかどころか、むしろすごく好みでした!」
「よかった!では使用していただけますね?」
「はい!もちろんです!…ってあれ?」
遠慮するつもりが、クラウドの調子にすっかりのせられて了承の返事をしてしまう。
「ありがとうございます、クラウドさん」
やられた、と思いながら楽しそうに笑うクラウドにお礼を言い、リディアナは部屋のなかを少し見てまわる。
(庭もとっても綺麗…)
「クラウドさん、後で庭園も見てみてもいいですか?」
問いかけるが返事がない。
振り返るとクラウドは眩しいものを見るような眼差しでリディアナを見たまま微動だにしない。
「クラウドさん?」
もう一度呼び掛ける。
はっと気が付いたクラウドにリディアナは聞く。
「体調が悪いですか?」
「、いえ。母君のことで無理をされているのではと思いましたが、気鬱だったようで安心しました」
「その節は、ご迷惑を…」
縋るように泣きついてしまった記憶があるため、気恥ずかしく感じる。
「迷惑だなんて思わないでください。頼ってもらえたことが、嬉しいのですから」
「…クラウドさんは私を甘やかすのが上手ですね」
「わたしは貴方の騎士ですからね」
このまま慣れてしまうとクラウドがいないと駄目になってしまうんじゃないか、とも思ってしまうほど。
「…クラウドさんがいなかったら、多分今こうして前を向くことは出来なかったと思います」
過去を嘆くことしかできなかったリディアナの願いをきいてくれた。
力を貸してくれると、言ってくれた。
あの時どれほど救われたことか。
「クラウドさんが辛いことや困難なことにぶつかったら、今度は私が力になりますから!」
拳を握って意思を示すとクラウドは優しく笑う。
「…わたしはもう、すでに貴女に救われているんですよ」
「え?」
小さく呟かれた声は少し離れた窓辺にいるリディアナには届かず、聞き返す。
「いえ、ありがとうございます。と言ったのです」
さぁ、庭園をご案内しましょう。と差し出された手に、リディアナは自身のそれをそっと重ねた。




