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※血の表現があります。
「契約の方法は簡単です。誓いによって刻まれている印に、騎士の血を吸わせるだけです」
「誓いの印…」
自分にもあるのだろうか。少なくとも昨日は無かったはずなのだが…
リディアナが小首を傾げると、心得ているというようにクラウドが頷いた。
「血の証が戻った今、リディにもあるはずです」
そこでリディアナは気づいてしまった。
クラウドの印が刻まれた場所は左胸。ということは自分も…?
リディアナは再び顔が熱くなるのを感じる。
印に血を吸わせるということは、それを曝さなくてはならないということだ。
(む、むむむむり!!)
思わず着ているシャツの胸元をぎゅっと握りしめると、思い当たったようにクラウドも視線をそらしながら補足をしてくれる。
「…王族の、印が現れる場所は右肩だったはずです」
確認していただけますか、と言い残し、クラウドは一度部屋を出る。
残されたリディアナは自室の鏡の前に立った。
シャツのボタンを外した後に、肩口を少しだけずらして右肩を露にする。
「…本当だ」
右肩にはクラウドと同じ印がくっきりと刻まれていた。
肩口をささっと直して、部屋の外にいるクラウドに声をかける。
「クラウドさん、ありました」
「…入ってもよろしいですか?」
了承の返事をすると小さな音を立てて部屋のドアが開く。
「では、始めましょう」
そういうと、クラウドはリディアナを近くの椅子に座らせ、自身はその右側へ片膝をついた。
印を出していただけますか?そういいながら、クラウドは懐剣を取り出した。
リディアナは先程と同様に右の肩口を少しだけ引き下げて、ドキドキしながらクラウドの行動を見る。
クラウドは懐剣の鞘を外し、その切っ先を左の人差し指へ当てる。
そのまま指先を刺すと、ぷくりと血が溢れる。
それを一滴、肩に刻まれた印に落としながら口を開いた。
「騎士クラウド・シル・オルゼンベルグは心臓を捧げし主、リディアナ・ヴァン・カタルフィーナを唯一とし、この血を持って契約を結ぶ」
"印に血を吸わせる"とは言い得ている、とリディアナは感じた。
印に血が触れた瞬間、その形をなぞるように印が赤く彩られて柔らかな光を放つ。
その光が強くなると同時に、印がじんわりと熱を持ち、するりと何かが体内へ入り込むような感覚を覚えた。
徐々に光が収まり、再び月明かりに照らされた部屋へと戻るとクラウドが満足そうに言う。
「終わりました」
手は大丈夫ですか?
そう問いかけると、問題ありません、と人差し指を見せられる。
なるほど、すでに傷口は塞がっていた。
「…不思議な、感覚でした」
「この印を通じて、わたしの魔力回路が貴女へ繋がったのです」
そうなのか。と疲れた頭で思い返し、はたと思い出す。
「そういえば、契約の時に私の名前でしたけど、第三王女はヒルデリアなんですよね?」
そこは問題ないのか、と気になっていたことを訊ねる。
「ヒルデリアというのはただの名称でしかありません。契約の対象は貴女なので、貴女が一番自身を認識できる名前で良いのですよ」
問題ありません、と頷くクラウド。
安心からなのか、疲労が限界に達したからなのか、リディアナは急に眠気が襲ってくるのを感じた。
「少し無理をさせてしまいましたね」
ぐらりと傾いだ体を難なく支えられ、温もりに意識が遠くなる。
「おやすみなさい」
ふわりと体が持ち上げられ、そこでリディアナの意識は完全に途絶えた。




