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「血の契約をしたいのです」
リディアナが落ち着くと、クラウドは切り出した。
「血の契約?」
初めて耳にする言葉に首をかしげる。
「わたしが騎士の誓いにより、王族へ心臓を捧げているのは以前お話ししましたね。騎士の誓いの対象は王族。その中でも高位の王族つまりは国王の命を優先することになります」
リディアナは頷く。
「騎士の血を持ってその対象をただ一人と定めるのが血の契約です。そしてこれは何よりも優先されます」
つまりは、例えば国王陛下とリディアナが同時に危機に晒されていたとして。
本来であれば騎士の誓いによって国王陛下はリディアナよりも優先的に守られるが、血の契約を結ぶことでリディアナを守ることができる、ということだ。
「騎士の誓いを立てると両者に誓いの印が現れます」
そういうとクラウドは着ていたシャツのボタンを外し始める。
「く、くくくらうどさん?!」
突然のことに、今までの重苦しい雰囲気も忘れ、声が上ずった。
ぱっと両目を手で覆うと、くすりと笑う息の音が聞こえる。
「ああ、突然すみません。見ていただいた方が早いかと」
クラウドの着ているシャツが擦れる音がするが、手をはずすことが出来ずにいた。
「騎士は左胸。心臓の上に刻まれます。わたしは、今までこの印が忌々しくて仕方がなかった」
クラウドが話始める。
「今の王族に、命を捧げる価値などないと思っていました。けれど貴女が血を引くとわかった今、わたしはこの印が愛おしい」
顔を押さえていた手を片方とられ、印へと導かれる。
つられるようにして誘導される手を視線で追うと印が目にはいった。
見ないようにしていたはずなのに、一度見てしまうと視線をそらせない。
印は楯と2本の剣、それに薔薇が複雑に絡み付いたような模様だった。
「綺麗…」
視線を縫い付けられたまま小さく呟いていた。
「貴女のモノです」
その声にはっとしてリディアナは視線を上げる。
同時にクラウドは印に導いていたリディアナの手を自身の頬へあてる。
その姿を目にして、リディアナは背筋にぞくりとしたものが走るのを感じた。
クラウドの瞳は蕩けるように細められているが、そこから覗いているアメジストの瞳は月光を帯びて煌めき、リディアナ射抜く。
「貴女へ捧げたい」
クラウドは視線はそのままに、頬にあてたリディアナの掌に唇を寄せる。
(掌への口付けは、たしか懇願の…)
そこまで考えたリディアナは一気に顔面に熱が集まるのを感じた。
「ね?お願いします。"許す"と言って?」
クラウドに取られたままの手に、甘えるように頬擦りをされリディアナは陥落した。
とりあえず手を解放してほしい一心で、壊れたおもちゃのように首を何度も縦にふった。
にも関わらず、クラウドは手を放さないまま。
何かを待つようにじっとリディアナを見つめる。
「ゆ、ゆゆゆるします!!」
真っ赤な顔で何度も首を振りながら、吃りながらも半ば叫ぶように言い切ったリディアナに漸くクラウドは手を放した。
「ありがとう」
詳しい説明をしますね、と何事もなかったかのように説明を始めるクラウドに、リディアナは疲労困憊しながらも頷いた。
(い、色気が半端ない…)




