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2020.5.11誤字訂正しました(半月→半年)
リディアナは涙が止まらなかった。
この間まで、両親の愛など信じていなかった。
口減らしのため捨てられたのだと、そう思っていた。
(私はちゃんと愛されていたのね)
「…お母様は、いまは…?」
「ナディア様は、おまえを私に預けた後、常闇の塔へ幽閉された。母親でありながら、王家の血を引く娘の誘拐をみすみす見逃した、と」
「っそんな…!」
常闇の塔とは、最も重い罪を犯した低位貴族牢として使われている塔だった。
塔内は昼でも薄暗くじめついており、曰く"一月入れば気が狂い、半年入れば死を望む"ようになるのだと。
(そんな中に12年も…)
実際に触れ合った記憶はない。
けれど、今朝の夢は戻りつつあった記憶なのだと確信していた。
その中の母はとても優しい瞳で見つめてくれた。
優しく抱き締めてくれた。
「…あぁ」
リディアナは両手で顔を覆った。
期待すらしていなかった母の愛に、その在り方に、心が押し潰されそうだった。
(私が何も知らず、おばあさまのところで自由に過ごしている間、お母様は…)
その暗い塔の中で、宿命だからと諦めたように笑っていたのだろうか。
―――――――
気がつけば日は落ちていた。
リディアナはベッドの上で立てた両膝を抱き込むようにして埋めていた顔をそっと上げた。
泣きすぎて頭もずきずきと痛いし、目も腫れていることだろう。
(お母様の望みは、私が自由に生きて幸せになること。だけど私は、わたしは…)
またじわりと涙が滲む。
その無力さに腹が立ち、乱暴に拭おうとする。
その手を、大きな手がそっと止めた。
「リディ、」
「…クラウドさん?」
気が付かなかった。
何時からいたのだろう。まさか、ずっと…?
ベッド脇の椅子に座っていたクラウドがそっと近づき、ベッドに腰を下ろした。
「乱暴に拭ってはいけませんよ」
両手がリディアナの頬にそっと添えられ、親指で優しく涙を拭う。
「大丈夫です。母君の様子が知りたければ必ず突き止めます。国王が、王家が憎ければ相応の報復を与えましょう。貴女が望むなら、全てわたしが叶えます。だから一人で泣かないで。わたしを頼って」
優しく胸元に抱き寄せられる。
「教えてください、リディ。貴女は、何を望みますか…?」
リディアナの頭と背中に回された大きな両腕にそっと力が籠る。
安心する温かさに包まれ、再びリディアナの瞳から壊れたように涙が溢れる。
リディアナは縋り付くようにクラウドのシャツを掴む。
「お母様を、助けたいの」
今どうしているのか、わからない。
最悪儚くなっている可能性も、大いにある。
そうだとしても、
「その魂だけでも、暗い部屋から出してあげたい」
手を貸してくれる?
そういう思いを込めて見上げると優しく細められた瞳とかち合う。
「仰せのままに、我が主」




