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(第三王女ヒルデリアが私?)
混乱するリディアナに、少しおまえの母の話をしよう。と魔女は語り始めた。
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カタルフィーナ国、イルゼクト辺境伯の長女
ナディア・オル・イルゼクト
それがリディアナの母親の名前だった。
プラチナブロンドの髪にペリドットの瞳。
儚げな雰囲気は、更にその美貌を際立たせた。
その美しさはすぐに国王の耳に届くことになる。
国王はそういうものを好み、王宮には国中から美しい華がたくさん集められていた。
勿論ナディアも例外ではなく。
成人を迎えると同時に勅令により国王の側妃として王宮に入ることを余儀なくされた。
『これが私の宿命なのでしょう』
それがナディアの口癖だった。
そうして王宮に入ったあとはさらなる地獄。
国王は飛び抜けて美しいナディアを可愛がり、他の妃へ関心を示さなくなった。
妃たちは王に可愛がられるナディアに嫉妬や憎悪の感情を向ける。
しばらくしてナディアが身籠ると、嫌がらせはエスカレートした。
子ども共々命を狙われたこともある。
王に相談しても無駄だった。
『女の問題は女で解決せよ』
そうあしらわれた時も。
『これも私の宿命なのね』
諦めたように呟くだけだった。
そうしてひっそりと堪え忍び、ついに珠のように美しく、瞳の色以外はナディアの幼い頃に瓜二つの女児を産んだ。
幸い国王は赤子に興味を抱かず、ナディアの好きなようにさせた。
我が子を自らの手で育てる。
それは諦め続けて生きてきたナディアが感じた確かな幸せだった。
初めての育児に右往左往しながらも笑顔が溢れる日々。
そうして4年が経ったある日。
偶然にも国王は娘に出会い、幼いながらも光る美しさに目を着けた。
『ナディア、あの娘はなかなか素材が良い。もう少し育てば引く手あまたとなろう。わが手元に残してもいいが…いずれにしろ将来が楽しみだ』
これに関して、ナディアはいつものように"宿命"とは言わなかった。
そして当時、王宮魔術師をしており、あの王宮で唯一信用していたサルティアに力を貸してほしいと頼んだ。
『これはあの子の宿命にはしないわ』
それは今まで諦めて耐えるだけだったナディアが初めて見せた意思だった。
『母として出来る最初で最後の贈り物よ』
私の力では頑張っても成人までが限界だけれど。
どうか彼らの目が届かないところで幸せになってほしい。
『あなたはこれから、ヒルデリアではなくリディアナとして自由に生きるの』
そうしてナディアは、愛娘の記憶と共に"血の証"を、その魔力をブローチに封じたのだ。
その後は魔女サルティアへ託した。




