第十一話 初めてのアンデッド
三階層。
「ご主人様、三階層からはアンデッドが出現します。ここからが本番、といったところでしょうか」
「なるほどな。注意点は?」
「まず、この階層からはゾンビが現れます。物理攻撃でも倒せますが、確実に仕留めるには首を刎ねる必要がありますわ。それと、この階層からは上の階層に出現するモンスターも現れるようになります。前衛と後衛の役割も考える必要がありますわね」
シルバが一気に説明してくれる。
前衛と後衛か……。
どういうことだ?
そう考えたところで、早速お出ましだ。
坑道の奥から現れたのは、ゾンビが二体。その後ろには、弓を構えたゴブリンが一体いた。
「なるほど、そういうことか」
「はい。一体ずつなら脅威ではありませんが、組み合わせによっては厄介になりますわ」
確かにその通りだ。
「ゾンビはオレが受け持つ。ゴブリンを頼む」
「承知しましたわ」
そう告げると、オレは前に飛び出し、盾でゾンビを殴りつけた。
衝撃によろめくゾンビ。その隙にシルバが横を駆け抜け、後方のゴブリンへと迫る。
ゴブリンは慌てて弓を引き、シルバに向けて矢を放った。
だが、シルバは動じることなく、レイピアで矢を弾き飛ばす。そのまま一気に間合いを詰め、ゴブリンを一撃で仕留めた。
一方、オレは怯んだゾンビの首を刎ねる。
残るは、もう一体。
動きは遅い。このまま首を刎ねれば終わりだ。
そう思った瞬間、ゾンビの後方から伸びてきたレイピアが、その頭部を貫いた。
勢いよく突き抜けた刃が、そのまま首を断ち切る。
ゾンビは崩れ落ちた。
「……容赦ないな」
「確実に仕留めるのが一番ですわ」
シルバは何事もなかったかのようにレイピアを引き抜いた。
「ふう、こういうことか」
前衛が敵を引きつけ、その隙に後衛が攻撃する。
敵の組み合わせ次第では、役割分担が重要になるわけだ。
「はい。ただ、坑道の構造は二階層とあまり変わらないはずですわ」
「なるほどな。ところで、素材は集めるか?」
そう尋ねると、シルバは明らかに嫌そうな顔をした。
……まあ、気持ちは分からなくもない。
「ゾンビからは、確かソウルコアが取れるはずだな」
「ええ。ですが、最下級のものですわ」
「なら、無視して構わないな。わざわざ体の中から取り出すのも気が進まないしな」
ソウルコアとは、モンスターの心臓のようなものだ。
亜人系のモンスターを除けば、多くのモンスターから回収でき、魔道具の動力源などに利用される。
ただし、コアの価値はモンスターの強さや種類によって大きく異なる。ゾンビから取れるものは最下級で、わざわざ回収するほどの価値はない。
「よし、先を急ごう。ここは損して得取れだ」
「賛成ですわ」
こうしてオレたちは、素材の回収を諦めて先へ進んだ。
寄り道をせずに坑道を進み、四階層へと続く階段を見つける。
そして――。
「ここが四階層か」
「ええ。この階層からはスライムが出現するようですわ」
「スライム? なら、ここからは素材回収だな」
思わず顔がほころぶ。
スライムから採れるスライムスラリーは、錬金術で加工することでシャンプーやグリスなどの原料になる。用途が幅広く、なかなか優秀な素材だ。
ただ、スライムは物理攻撃への耐性が高い。そのため、倒すのに手間がかかり、敬遠する冒険者も少なくない。
だが、オレにとっては話が別だ。
売ってよし、使ってよし。見逃す理由がない。
「スライムスラリーは、シャンプーや石鹸の原料にもなりますわね」
「そうだな。買うと高いですものね、ってところか?」
「ええ。実際、どちらもそれなりのお値段がしますわ」
「ははっ。オレなら自分で作れるぞ」
簡単な錬金術なら、オレにも扱える。
武器に魔法を付与する際にも必要になる技術だからな。
「それなら、ぜひ作っていただきたいですわね」
「材料が集まったら考えておくさ」
そう答え、オレたちはスライムを探し始めた。
やがて坑道の隅で、半透明の体を揺らすスライムを発見する。
「よし、見つけたぞ」
オレは片手剣を構え、斬りつけた。
しかし、刃はスライムの体に食い込むばかりで、思ったほどの手応えがない。
「……なるほど。確かに斬撃は効きにくいな」
「でしたら、わたくしにお任せください」
シルバが一歩前に出て、魔法を放つ。
魔法の直撃を受けたスライムは、体を震わせたあと、力なく崩れた。
「やっぱり魔法の方が効率的か」
「そのようですわね」
その後も、オレたちは見つけたスライムを倒し、スライムスラリーを回収していった。
剣で仕留めるのは難しいが、シルバの魔法があれば問題ない。思った以上に順調な素材集めになった。
こうして四階層も走破した。
「今日はこのくらいにしておくか」
「そうですわね。無理をする必要もありませんもの」
まだ先は長い。
八階層まで進むのが今回の目的だが、焦って怪我をしては元も子もない。
ノーブが移動魔法を唱え家に帰る。
明日からはここから再開できる




