4.ドリーミーな図書館。
次の日から、ずっと六本木さんを目で追っている。
なぜ?
いや、もう分かる。
好きだ。
好きなんだ。
「三玉ー、勉強会しよー」
市ヶ谷がそう言うが、
「あ、ごめん、今日無理」
断る。
六本木さんはもう廊下に出ている。
「ねえ」
声をかける。
「なに」
「今日さ、もしよかったら一緒に勉強しない?」
ありえないくらいに緊張している。
手汗が止まらない。
六本木さんは少し考えて、
「いいよ」
と答えた。
胸が高鳴った気がした。
「じゃあ図書室に行こっか」
「うん」
道中も、胸の鼓動が止まらなかった。
横を見ると、彼女がいる。
そんなことが、本当に嬉しい。
「結構混んでるね」
図書室は案の定、生徒でごった返していた。
「あ、あそこ空いてる」
二人で座って、教科書を開いて勉強を始める。
静かに進めて、たまに分からないところを聞く。
その繰り返し。
楽しい。
いや、勉強はそこまで好きじゃないけど、
この人と一緒にいて、話して、
一緒に努力できることが、何よりも嬉しい。
「どうしたの?」
六本木さんが聞いてくる。
「え、えーと、いや、なんでもない」
見てたのがバレたか。
顔が赤くなるのを感じる。
「三玉くんって」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
そのまま勉強を終えて、一緒に帰った。
「六本木さんは頭がいいね。本当に。
自分ばっか質問してごめんね」
「気にしないでいいから」
この言葉も、嘘偽りのない本心なのだろう。
なんとなく分かる。
そんなところも好きだ。
「また一緒に勉強しようね」
「うん、予定が空いてれば」
別れて帰ろうとすると、
六本木さんが袖を掴んだ。
めちゃくちゃにびっくりして、
勢いよく振り返った。
顔が赤くなって、動悸が激しくなる。
「な、な、なに?」
そう聞くと、
六本木さんは寂しそうな顔をして聞いた。
「勘違いだったら申し訳ないけど、
私のことが好き?」
言ってもいいのか?
好きだ、と。
でも、それを言ったら、
離れられるかもしれない。
どうすればいい?
どうしたら、この場を凌げるだろう。
いつもならどうするだろう。
黙っている自分を尻目に、
六本木さんは続ける。
「もしそうだったら、やめて」
少し間を置いて
「私は多分、その気持ちには応えられないから」
そう言って、帰っていった。
かける言葉は、出てこなかった。




