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32/33

32.私、それと、キー

付き合うってなんだろう、と

たまに考える。


恋人。

彼氏。

彼女。


そういう言葉は知っている。


漫画も読んだし、

映画も見た。


でも。


実際に自分がそうなってみると、

よく分からない。正解も。


だから、

私は雑貨屋にいた。


放課後の、

冷房の効いた店内。


小さなキーホルダー。

文房具。

スマホケース。

アクセサリー。


いろんなものが並んでいて、

仁村くんに何か買いたかった。


理由は分からない。


いや。


本当は分かっている。

喜んでほしいから。


それだけ。


そう、本当に、

それだけ。


……本当に?


棚に並んだキーホルダーを見る。


青色で、海みたいな色。


仁村くんっぽい。


手に取る。

戻す。


また手に取る。


変かな。

重いかな。


いやでもさ、恋人なんだし。


恋人なら、これくらい普通?


分からない。

何もかも。


「プレゼントですか?」


店員さんに声を掛けられた。


びくっと肩が跳ねる。


「え?」


「彼氏さんとか?」


顔が熱くなる。


「か、彼氏です」


言った瞬間、

少し嬉しかった。


彼氏。


仁村くんが、

私の。


その事実だけで、

胸があたたかくなる。


店員さんは笑った。


「優しいですね」


優しい。


私は笑う。


でも。


心のどこかで。


優しいのは私じゃなくて。


仁村くんだと思った。


結局、青いキーホルダーを買った。


高くない。


でも、

安すぎもしない。


ちょうどいい。


そう思った。


放課後の昇降口。


「仁村くん」


「おー」


いつもの笑顔。


好きだな、

本当に。


「これ」


袋を差し出す。


「え?」


「この前のお礼」


「なんのお礼?」


「いろいろ」


自分でもよく分からない。


でも、何かあげたかった。


仁村くんは袋を開ける。


青いキーホルダー。


少しだけ目を丸くした。


「え、これ俺?」


「うん」


「めっちゃいいじゃん」


笑う。


嬉しそうに。


本当に嬉しそうに。


胸がいっぱいになる。


よかった。


よかった。


「ありがとう」


そう言って、

すぐに鞄につける。


嬉しい。


すごく。


本当に。


でも。


仁村くんは少しだけ困ったように笑った。


「でもさ」


「うん?」


「島」


優しい声。


いつもの声。


「そんな気使わなくていいからな」


胸が止まる。


一瞬だけ。


「え?」


「いや、

 普通に嬉しいんだけど」


「なんかさ」


仁村くんはキーホルダーを見る。


「島って、

 頑張りすぎる時あるじゃん」


笑って言う。


責めてない。


本当に。


ただ心配してるだけ。


分かる。


分かるのに。


「気使ってないよ」


言葉が先に出た。


少し早すぎるくらいに。


仁村くんが瞬きをする。


「そっか」


そう言って笑う。


それ以上は何も言わない。


優しい。


本当に優しい。


だから。


余計に。


胸が痛かった。


帰り道。


スマホを見る。


仁村くんから写真が来ていた。


鞄についたキーホルダー。


『似合う?』


思わず笑う。


嬉しい。


本当に嬉しい。


なのに。


その写真を見ながら。


私は考えてしまう。


喜んでくれた。


よかった。


じゃあ。


これで少しは。


私は。


仁村くんにとって。


必要な人になれたかな。


その考えが浮かんでは、浮かんで。


自分で自分が少し嫌になった。


それでも。


その気持ちは、









気持ち?

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