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16.電話と

家に帰った。ご飯を食べた。風呂に入った。

そしてスマホを見た。


後藤に謝らなきゃ。でも勇気が出ない。


違う。嫌われると覚悟するのが怖い。

確定してしまうのが心底恐ろしい。


通話ボタンを押す指が震える。


簡単にできることなのに動けない。



その時通話画面に切り替わった。


後藤からだ。


スマホを撮る手が震えた。あの時のことを無かったことにできたら、記憶が消えてくれればどれほど良かったか。


それでも、出なければ。


そうじゃなきゃ、本当に俺は自分が嫌いになる。


「.........後藤」


『市ヶ谷くん、少しいい?』


「......うん」


『市ヶ谷くんがみんなに優しいのは、みんなが好きだからとかそういうのじゃないって分かってた』


「......うん」


『それそのものは悪いことじゃないと思う。明るくて優しい、そんな人は私も好き』


死刑判決を待つ囚人のようだった。


いっそ「お前はクズだ」そう言われたほうが楽かもしれない。


『でもね、私もそうだったからわかる。苦しいよ。心に除去できない塵がどんどん積もっていって、そうなっているのが当たり前みたいになる』


全部分かっていた。後藤は。


『だからね、そうなる前に、本当にだめになってしまう前に、どこかで吐き出さないと』


「どうして?」


「どうしてそんな踏み込んでくるんだよ。だってそれがいいって、そう思って、だから」


言葉が出てこない。喉に蓋が被さってるみたいに。


「......何で放っといてくれないんだよ」



『......分からない』


『でも、でもね、貴方が思うよりも貴方を思う人はいるよ。私もね、そうだよ』


『だかは、市ヶ谷くんには笑っててほしい。本当の意味で。最悪嫌われても、市ヶ谷くんがどうにか辛くならないようにしたい。求められてなくても』






「......嫌わないよ」








やっと、やっとわかった気がする。俺が本当に諦めていたのは俺自身だった。


俺が俺を見ていなくて、そんな奴だと定義づけて、誰かと衝突するのを避けて、何も考えなくていい。そんな自分を作っていたんだ。


ただ怖かっただけだ。


自分に向き合うのも、他人に向き合うのも。


後藤はきっとそれを乗り越えようとしてる。


だから強く、逞しく

そして眩しく見えるんだ。


「後藤」


『ん?』


「ちょっとだけでいいから......愚痴聞いてくれる?」


『もちろん』


「ありがとう......」


過去から培ってきた自分を変えるのは簡単なことじゃないかもしれない。



それでも、自分を見てくれる人がいると分かって、それだけで、何もかもから救われた気になった。

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