表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/31

13.エレガントな呼び合い。

今日は中間試験も無事終わったので、

響子さんと遊びに行く約束をしている。


僕はデートだと思っているし、

なんならこの日のために洋服も買ったし、美容院にも行った。


待っている間、浮かれている自分を諌めるために深呼吸をする。


いや、諌めることができない。

楽しみすぎる。


でも今日の予定は、響子さんに一任する形になったので、

どこに行くかはまだ分からない。


「遥くん」


響子さんが来た。


当たり前のことなのに、つい忘れてしまいそうになるけど、

やっぱり綺麗だ。


「おはよう。その服すごく似合ってる。綺麗」


「ありがとう。遥くんも服似合ってるよ。ヘアスタイルもいつもと違うね」


「今日のために切ったんだ……張り切りすぎたかな」


響子さんは首を横に振って、少し笑う。


「じゃあ行こうか」


「どこ?」


「科学館。プラネタリウムが見たくて」






それからバスで二十分くらいで科学館に着いた。


初めて来た。


「ここに来るの初めてだから楽しみだ」


「私も」


館内は静かで、少しだけひんやりしていた。

展示を見て回りながら、時々話して、時々黙る。


無理に話さなくてもいい時間が、心地よかった。


プラネタリウムに入ると、照明が落ちる。

ゆっくりと星が広がっていく。


宇宙の説明を聞いていた。


普段なら眠くなっていたはずなのに、

今日は不思議と、熱中して聞いていた。


ゆっくりと星が広がっていく。

暗闇の中で、光だけが浮かんでいる。


横を見ると、

響子さんが楽しそうにプラネタリウムを見ていた。


ああ、やっぱり好きだ。


僕の気持ち、心の声、すべてが相手に聞こえていたらどれだけ楽だろう。


いや、自分で伝えるからこそ価値があるのかもしれない。


そんなことを考えていると、

響子さんはこっちを向いて、


「遥くん、前を見なさい」


そう言った。


「はい、響子さん」


思わず返事をする。


その横顔も、声も、

すべてが柔らかくて、


うつくしかった。


どちらも。


再び前を見る。


星は、さっきよりも少し近くに感じた。


解説の声が、静かに続いている。


この時間が終わらなければいいと、

ほんの少しだけ思った。







気づけば時間はあっという間に過ぎていた。


外に出ると、少しだけ夕方になっていた。


「楽しかったね」


「うん、すごく」


並んで歩く帰り道。

何か話したいのに、言葉がうまく出てこない。


でも、沈黙は苦しくなかった。


ふと、前を見る。


「あれ……」


見覚えのある後ろ姿があった。


少し離れたところを、一人で歩いている。


市ヶ谷だった。


声をかけようとして、やめる。


なぜか分からないけど、

今は声をかけないほうがいい気がした。


市ヶ谷は気づかないまま、歩いていく。


その背中を、少しの間だけ見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ