11.煙と
二人の話をファミレスで聞いて、羨ましいと思った。
ああなれたら、とも思った。
でも、今のままでいることのほうが、ずっと楽で、怖さも感じない。
学校では、いつも通りやっている。
「ほんと市ヶ谷っておもろいわー」
「ありがとうね、市ヶ谷くん」
「いいやつだなー」
そのどれもが、何もない。
嬉しいとか、そんなものはない。
ただ、自分の自分じゃない部分を見られている。
でも、それは俺が作ったものだし、
俺がそれで苦しもうが、見る人はいない。
「市ヶ谷ー、あいつウザくね?」
「そんなこと言うなよー」
すらすらと言葉が出てくる。
誰かと衝突する度胸もないからだ。
三玉と六本木さんは、二人で勉強しに図書室に行っている。
楽しそうだ。
そして放課後。
みんな、誰かと帰っていった。
俺を誘う人はいない。
いつものことだから、一人で帰る。
一人のほうが楽だから、それでいい。
それで......
「あ」
顔を上げると、そこには玄関口で靴を履き替えている後藤がいた。
「あ、後藤」
「市ヶ谷くん」
「今帰り?」
「うん」
「奇遇じゃん。じゃあ一緒に帰る?」
「帰ろっか」
そうして二人で帰ることになった。
いつも通りのたわいないつまらない話をして。
「今日も市ヶ谷くん人気者だったね」
「いやいや都合よく使われてるだけー」
後藤は笑う。それを見て安心する。
「なにかあった?」
「え?」
「なんかいつもと違う」
え?
変だった?
どこが?
いや、いつものノリで返せば大丈夫。
「いやいや、いつもこんなもんよ」
軽く言う。いつも通りに。
後藤は少しだけ間を空けた。
「……ほんとにそう?」
「え?」
「......」
言葉が止まる。
「いやいや、本当だって」
笑う。
いつものように。
後藤は小さく頷いた。
「……そっか」
それ以上は何も言わなかった。




