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第一部総括
航路上で、イオナは第一部で獲得したものを整理した。
一、災害前公開の原則。
二、避難導線の平時訓練。
三、保持者残留前提設計の拒否。
四、妨害記録の制度化。
五、港間連携テンプレート。
どれも派手ではない。
だが派手な勝利より再現性が高い。
ガルムが総括紙を覗き込む。
「この五つ、レフカでも最初に確認する。基準線を失うと崩れる」
イオナは頷いた。
「了解。最初の会議で共有する」
メラはデルガに残っている。
それでも彼女の言葉は紙端に残っていた。
『戻る導線を切るな』
船首に立ったイオナは、曇り空の先を見た。
次はレフカ中枢。規模も敵も一段大きい。
それでも原則は変わらない。
公開を先に。
判断を後に。
列を切らさない。
総括の末尾に、彼女は新しく一節を足した。
『中枢域初動: 到着四十八時間は観測塔確認・掲示地点確保・照会流路整備を優先』
遠征先で迷ったときは、最初の四十八時間を見ればいい。
最初を決めておけば、焦りが手順を壊しにくい。
彼女は総括紙を閉じ、外套の留め具を締めた。
次の局面は、もう始まっていた。




