次航路への鍵
冬の最終週、中央から機密指定の照会が届いた。
件名は短い。
『沿岸調整会構成員名簿(閲覧限定)』
イオナは封を開かず、先に会議体制を整えた。
機密は単独で読むほど危険だ。
同席者を決める。
ガルム、メラ、監察書記、住民代表。
閲覧室へ入る者の筆記具を統一し、持ち出し紙の枚数を記録する。
閲覧後の口頭要約はその場で議事化し、誰か一人の記憶に依存しない形へ落とす。
封を切る。
名簿は完全ではない。伏字が多く、上位二名は未記載。
だが一つだけ、決定的な行があった。
『上位調整窓口: レフカ中枢管理局』
ガルムが低く言う。
「次は港じゃない。中枢だ」
メラは腕を組む。
「デルガを空けるなら、代行体制を二重にしろ」
イオナは名簿を閉じ、頷いた。
「やる。ここまで守った運用を、そのまま持っていく」
公開順もその場で決める。
一、四港実務者共有。
二、共同掲示板で要旨公開。
三、中央本部へ追加照会。
情報は速さだけでは武器にならない。
速さと順番が揃って初めて、制御できる。
夜、イオナは要旨公開文を作成した。
『上位窓口を確認。次段は中枢照会へ移行』
固有名詞の衝撃を煽らない文にする。
煽りは一時の快感を生むが、運用を壊す。
彼女は新しい帳を開き、見出しを書いた。
次案件準備: レフカ中枢。
これが、終盤を動かした最後の鍵だった。




