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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第23話 安全日ってのはただの幻想 ~魂の値段~ ②

7話投稿します。1/7



「リサイクルした甲斐があったね?」

「ふざけないでくれる?」


首に包帯を巻いた女が、不機嫌を隠しもせずに言い返す。

その声には、怒りよりも、諦めに近い何かが滲んでいた。


彼女は、カエル座りで地面にうずくまっていた。

身に着けていたものは、ほとんど焼け落ちていた。

皮膚の一部には、まだ焦げ跡が残っている。

それでも、彼女は生きていた。


いや、『生かされていた』。


『再生虫』──仲間のモンスターに寄生し、傷を癒やす補助モンスター。

それを、死体に寄生させてみた。


結果、彼女は蘇った。

記憶も、意志も、声も、残っていた。

だが、身体はもう、彼女のものではなかった。


『ダンジョン内のモンスターは、ダンジョンマスターの手足ですから』


つまり、彼女の体は、オレの手足。


命令には逆らえない。

でも、言葉では反抗する。

その矛盾が、妙に愛おしかった。


蛙飛びで移動し、カエル座りで待機する姿は、まるで、自由を模倣する人形のようだった。


『ただし、蘇生は成功しています』

「あ、ちゃんと生き返ってるんだね」


記憶の継承ではない。

本人が、ちゃんと『ここにいる』。


ただし── 体は、迷宮に縫い止められている。

焼き付いた記憶のように、もうどこにも行けない。


人間の意志は自由。

でも、体は制限付き。


それが、この迷宮での『生』の定義。

そうなるのかもしれない。


命令に従うたび、彼女の瞳がほんの少し曇る。

その曇りの奥で、かすかに揺れる記憶。

かつて、誰かに名前を呼ばれた記憶。


それが、彼女の『痛み』なのだと、オレは理解できた。


意識は残っていても、体は『ダンジョンの意思』に従う。

それが、支配者の手足として造られたモンスターの宿命。


『高レベルだったおかげで、脳死にまで至っていなかったものと思われます』


「普通の人間なら手遅れになるところだけど、高レベルの『探索者』だから蘇生できたというわけか」


納得の理由。

でも、そこにあるのは希望ではなく、運用の可能性。


「これ、他の人間にもやれるんだろうか?」


魂を逃さず、手元に置く。

それだけで、ソウルポイントが増える。


痛みが資源になる。

魂が数字になる。


それは、痛みの証明か。

それとも、罰の記録か。


オレは、まだ答えを知らない。


ただ、あの旧校舎で誰にも見られなかった『オレ』が、今は誰かの痛みを数えている。


飾り付けは全部一人でやった。

折り紙の花も、模造紙のポスターも、誰にも見られないまま壁に貼った。


もしかしたら、誰か一人くらい来るかもって思ってた。

でも、廊下の向こうから聞こえたのは、笑い声すらない沈黙だった。


あの時、誰もオレの存在を数えなかった。

今はオレが、誰かの痛みを数えてる。


それが復讐なのか、救いなのかは、まだわからない。

でも、確かなのは──


あの旧校舎の沈黙は、今もここにある。

迷宮の壁に染みついて、誰にも気づかれないまま、息をしている。


だが、それは解き放たれた。

誰も来ないなら、迎えに行くとしよう。

意思は、——尊重しない。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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