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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第27話 『答え』

3/3

 

「ウソ……だろ?」


 血だらけの男が、自分が作り出した惨状を前にして膝をついた。

 仲間たちはみんな、物を言わなくなっていた。


「見事な魔法でしたわね」

 柔らかな女の声がした。


「だ、誰だ!」

 思わず声を高くした男は、直後にうめいた。

 傷が広がったのだ。


 そこへ、女が現れた。

 地面をゴロゴロと転がりながら。


 前回りではない。

 横転だ。


 方向を一定にできないらしい。

 正面から回ったり、背面で回ったりしながら男のところまでやってきた。


 なんで、そんなことを……?


 そんな思いは浮かばなかった。

 そんな余裕はなかった。


 何より、必要がなかった。

 見た瞬間に理由ははっきりしていたからだ。


 その女には両腕両足がなかった。


「ごきげんよう」

 すぐそばまで来て、女は横倒しの態勢のまま、男を見上げた。

 手足がないことも、転がって移動してきたことも、ごく当然のように振舞っている。


「あ、私。『達磨ふよう』と申します。よろしくですわ」

 右を下に倒れていたところから、左を下に変えて、腰を曲げた。

 一礼……したつもりらしい。


「沈静化の魔法をかけてみたのだけど、いかが? 痛みがあったりするのかしら?」

「ちんせいか?」

「ええ、むやみに暴れられても困りものですからね」

 横倒しのままコロコロと笑う。


「あ、ちなみに、先ほどまでは逆に感情の波が高くなるように、興奮作用のある魔法をかけていたのですよ? よく効いたでしょ?」

「テメェの仕業か?!」

 男が、声を荒げる。

 荒いだけで、声量はなく、張りもなかった。


「仕業だなんて、人聞きの悪い。私はただ、皆さんを自由にしてさしあげただけ。たいしたことはしていませんわ」 


 結果を、答えを出したのはあなたたち自身。

 女は素っ気ない。


「考えもしないで答えを出すからよ。おばかさん」

 その言葉とともに、なにかの魔法が使われた。


「な、なにを?」

 回復ではなかった。

 なら、なんだ?

 彼には考えることが難しくなっていた。


「クロックアップよ。早く楽になりたいでしょ?」

 親切そうにふようが言う。


 男は聞いていなかった。

 流血の速度が上がり、目から光を奪い。

 脳も酸欠状態となっていたから。


「おやすみなさい」

 彼の心臓が静かになったのを見届けて、ふようは言葉をかけた。

 優しく、穏やかに。


「えっと‥…名前は――うん。書いておいてね」

 言葉を投げ上げて、また転がり始める。


 近くを這っていた『腕』が、どこからかペンをだし、名簿に書き込み始めた。


 ◇最初の男◇


 最初に飛び込んだ男は、まだ諦めていなかった。

 頑張って、潜り続けていた。


 きっと何かある。

 絶対、なにかあるはずだと。


 そして、見つけてしまう。

 水の底にいた『何か』を。


「ここはね。プールじゃないよ?」

 平然と小首を傾げて、そんなことを言う。

 水中なのに。


「ここはね。貯水槽なんだ。だから、通貨はないんだよ。残念だね?」

 クスクス笑って、男の手を取る。

 息継ぎが必要な男の手をだ。


「?!」

 慌てて振り払おうとするか、どうしても抜け出せない。


 見たところ、華奢な『女の子』なのに……。


「?!」

 違った。


 瞬きしていない目が、男から視線を外すことなく見つめてくる。

 細い指の間に水かきがある。

 肌の色が、どんどんと緑色になっていく。


 男が最後に見たのは、彼女の頭の皿だった。


 ◇カルマ◇


「おかえり」

 カルマが、声をかけた。


 河童の沢辺みどりが帰ってきた。

 濡れた髪にタオルを巻いて…‥


「ただいま!」

 悠になって飛び跳ねる。

 背後では、新しい名前を名簿に書き込む『腕』が見えていた。


「いいね。『ソウルポイント』が増えていくね!」

 ダンジョンのステータス画面を開いたカルマが、歓声を上げる。


 『ソウルポイント』。

 ダンジョン内で、Aランク以上のモンスターを作るのに必須の『素材』だ。


 枯渇寸前にまで減っていた、それの数値が上昇を始めている。

 人間の『恐怖』や『苦痛』で魂が削れることで、ソウルポイントが得られる。

 金欲しさに暗躍している者たちの行動が、ポイントになっていた。


「新しくネームドが作れるな」

 人としての記憶を持ち、人格を持つ特殊な個体ということだ。


 自然発生ではなく、カルマが意図して作り出すには、大量のソウルポイントが『人間の魂の欠片』が必要なのだ。


「作る……違うか。素材は決まっているの?」

 死亡した者の記憶や人格を使って特殊個体を生み出すことになる。


『誰の』を使うつもりなのか。

 相手は決まっているのか? との問いかけだった。


「んー……突出して『この人』ってのは思い浮かばないなぁ……」

 Aランク以上確定と言える人物は、ほぼ全員妖怪化してしまっている。


 逆に言えば、Aランク以上にしたい妖怪の分は足りるだけのソウルポイントが得られていた、ともいえる。


「溜まるまでに考えておくとしよう」

 死者の魂はまだダンジョンで保管できている。


 急ぐ必要はあるまい。

 カルマはそう考えた・・・のだが・・・・・・・


 『死者の魂ほ保管しておけるのは、四十九日間です』

 ダンジョンのシステムが甘くない現実を伝えた。

 四十九日目には解放しなければならないらしい。


「……って、四十九日か?!」

 ダンジョンで、ファンタジーだというのに、唐突に仏教が出てきた。


 死者の魂が、地上を離れ、死出の旅に立つのが四十九日目とされている。

 それまでしか猶予がないということだ。


「早く言っといてよ―」

 カルマは、困ったように眉を寄せ、システム内にある死者『かつての同窓生たち』のデータに目を通し始めた。



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