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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第21話 『21階層へ』

3/3

 


 ミニゲームは、その他の参加者も堪能し終えた。


 ポンポンと自発的に跳ねるボールに追い掛け回される者。


 バスケゴールに引っ掛かって泣き叫ぶ者。


 ……間違いなく『堪能』しただろう。


 なので――



 『参加者はみんなスポーツの楽しさに目覚めました。クエスト達成。

 21階層が解放されます』



「ようやくか」

「人数多すぎ!」

 陽翔と澪が息を吐いている。


 200人を10人で仕切るのは大変だったようだ。


「運動会のほうがマシだったっすね」

「ホント、それ」

 運動会はチーム戦だったので、ある程度チーム内の世話焼きさんに任せられた。

 今回のように一人一人相手にするよりはマシだったのだ。


「30階層は—―」

「言うな。ついてから考えろ」


 とにもかくにも、21階層への扉は開いた。

 開いたはずだ。


 再び、探索者の本分、ダンジョン探索に戻れる。


「どこから降りるんだ? お好み焼き屋の地下倉庫か何かか?」

 陽翔が何気に問うが、予想は外れた。

 マップに記載された『扉』の位置は、少し遠かった。


 ◇


「マップによると、こっちですけど…って――」

「……楽しそうっすね」

 呆然とする澪。

 面白くないですって顔で笑う朔也。


 どこにでもありそうな、古びた倉庫の中だった。

 目の前には闇に向って螺旋を描く滑り台があった。


「滑り降りろって…ことだろうな」

 何か他の解釈はないかと探す素振りの陽翔。

 だが、『他の解釈』を思いつくことはできなかった。


「朔也、行って!」

「俺っすか?!」

「滑り台は、あなたの担当でしょ?!」

「そんなのいつ、誰が決めたんすか?! 俺、知らねっすよ!」

 朔也の抗議を澪は眉一つ動かさず聞き、口を開いた。


「さっき、私が決めました」

「……」

 真顔の澪に気圧され、言葉が出ない。


「強く生きろ」

 ポン、と肩に手を置いて、魔法使いも真顔だった。


「行くっすよ、行けばいいんでしょ。こんちくしょう!」

 やけっぱちになって、朔也が滑り台の端に座った。


 そして――


「ぬを――! 思った以上に急っす。先が闇なの、めっちゃコエ―!」

 滑り降りていった。


 ・

 ・

 ・


「スリリングだったわね」

 21階層に降り立った澪の第一声が、それだった。


 朔也と陽翔を先に滑らせて、安全を確認した上でのことだし、陽翔が下で『ライト』の魔法を使ったため、闇の中に滑っていくというものでもなくなっていた。


 アトラクションとして楽しめたらしい。


「ズルいっす! ズルすぎっす!」

 朔也が抗議しているが、華麗に無視だ。


「さて、今度は何が出るのかしらね」

 学校の備品が学用品。

 武装した虫ときた。

 次は何が出るのか。


「無視されたっす! 危険なところに放り出したうえに、言論封鎖っす! 時代錯誤っす!」

「うるさい!」

 騒ぐ朔也を一喝して、澪は陽翔に視線を向けた。


 メンバー全員が到着していた。


「よし、進むぞ」

 ヤレヤレという顔で、陽翔が進み始め、すかさず澪が続く。


 朔也は魔法使いに肩をポンポンされて、慰められていた。


「いや! 慰めになってないっす」

「しつこい!」

 澪の投げたクリームパンが朔也の口をふさいだ。


「おまえら! しっかりっすよ!」

 秒で立ち直った朔也が号令をかける。

 口の端に、クリームが付いたままだった。


 21階層。

 内装は変わらず。


 木の香りがする木造校舎だ。

 ただ——


「少し暗くなったか?」

「窓が小さくなっているわね」

 壁の上側に半分ほどが窓、そんな廊下だったのだが、天井の下20センチくらいが、板壁となっていた。

 その分、窓が小さくなっている。


「板の色も濃いっすね。上が建てたばかりだとすると、この辺のは10年くらい経った感じの色っす」

 辺りを観察して朔也が言う。


「より深みに入ったってとこか?」

「実際、そうだしね」

 ダンジョンの階層を降りている。

 深みに入るとは言い得て妙だった。


 廊下はまっすぐだ。

 時折、右か左、または左右に直角に曲がっている。


 左右の壁は窓があるだけでなく、教室もあった。

 だが――


「開かないっすね」

 鍵なんてなさそうな引き戸だが、どれも開くことはなかった。


「中は普通の教室に見えるんすけどね」

 幻というわけでもなさそうだと、朔也が呟く。


「開けるには、なにか条件が必要なのかもしれないわ」

「10階層の生徒会室分室みたいにか?」

 あれも、生徒会としてクエストを受けるまでは、入れなかった。


「たぶんね。ありそうなのはスタンプラリーのスタンプかしら?」

「ああ、それか。俺たちは生徒会ってことで、その辺が免除されてるっぽいからな」

 先へどんどん進めているのは、そういうことなのだろう。


 自分たちの役目的には好都合だったが。

 『生徒会ルート』とでもいうべきルートに乗っている気がしていた。


「え? なにか聞こえなかったか?」

 先頭を進んでいた陽翔が、足を止めた。


「風?」

 耳を澄ませた澪が首を傾げる。


 かすかに空気を裂くような音が聞こえてきていた。


「す…リボン?」

 それは、セーラー服のリボンだった。

 くるくると回転しながら飛んでくる。


 キィーン!

 音にならない音が響いた。

 高音域の超音波だ。


「状態異常か?!」

 耳を抑えて叫ぶが、それでどうにかなるものではない。


「『フレアバレット』!」

 複数の火弾が迎え撃つ。


「!」

 一発掠めた。

 バランスを崩して揺れている。


「『フレアバレット』!」

 2発目。

 今度は直撃している。


 パッと燃え上がり灰になった。


「よし! よくや……」

 見事な反応を見せた魔法使いを褒めようとして、陽翔が硬直した。


 杖がまだ動いていた。

 まだ何かを狙っている。


 そして、それは——


「ちょ! ま、待つっす!?」

 朔也だった。


「『フレアバレット』!」

 三度目の魔法がハッキリと朔也に向けて放たれた。


 不意を突かれた朔也は避けられなかった。

 全弾をもろに受けてしまう。


「朔也!? くっ、惜しい奴を亡くした」

 陽翔ががっくりとうなだれる。

 横では呆れ顔の澪が魔法使いに、状態異常解除の魔法を放っていた。


「か、勝手に殺すなっす! こんなとこで死ねねぇっすよ!」

 大盾を構えた朔也が声を張り上げた。


「チッ」

 陽翔が舌打ちをする。


 もちろん、防げているとわかったうえでのからかいだ。

 不意打ちだったとはいえ、防げないとは思っていなかったのだ。

 そこは、信用がある。


「は、わ、私は…何を?」

 我に返った魔法使いが、茫然としている。


「朔也を殺しそこなったのよ」

 澪が肩をすくめてみせる。


「……そうか、失敗か」

 理解した魔法使いが無念そうだ。


「やる気だったんすか?! ひでぇっす!」

 朔也が構えたままの大盾を、魔法使いに押し当てた。


「熱い!」

「あんたの魔法のせいなんすから存分に味わうといいっす!」


「大人気のない奴だな」

 ヤレヤレと首を振る。


「幻覚に踊らされたやつに言われる筋合いないっす!」

 二人の言い合いが続く。


「はいはい、そこまでよ」

 パンパンと手を叩いて澪が割って入った。


「この階層では、精神攻撃もあるみたいね。みんなそのつもりで備えてちょうだい」

 幻覚にかからないように、かかった仲間に不意を撃たれないようにということだ。


 パキャン!


  なにか、軽い音がした。

 目を向けると陽翔が剣先を床に突き立てていた。


「コンパクト?」

 剣先には何かが突き刺さっていた。

 二枚貝のような形だ。


「『海』系ダンジョンにいたモンスターに似ているわね。あっちはデカい貝だったけど」

「コンセプトは一緒だろう。ともかく階層が変わって、モンスターの危険度も上がった。それは間違いないだろう。気を引き締めて進むぞ」

「はい」

 心のギアを一つ上げ、彼らは再び歩き出した。


 さらに、奥へ。



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