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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第20話 『球技大会とその裏側』

2/3

 


 ミニゲームではない、球技大会の本筋。

 それは、奇妙な『人型』との『試合』だった。


 野球部は『鬼』、バスケ部は『木の葉天狗』——妖怪型のモンスターだ。

 それでも、ルールは人間同士と同じ。

 妙に整った動きで、淡々と試合をこなしていく。


 無難に試合は行われ、勝ったり負けたり。

 勝敗に一切の感情を見せないまま、彼らは霧のように消えていった。

 試合が終わるたび、無表情の審判役が迷宮通貨の袋を無言で差し出してきた。


 ・

 ・

 ・


「くだらねぇ遊びだったぜ」

「まったくだ。いい歳こいて青春の汗ごっこなんてな」

 元サッカー部が21階層の片隅にある怪しげな喫茶店に集まっていた。


 元テニス部や陸上部も混ざっている。

 そもそものパーティメンバーや、クエスト中意気投合した者たちだった。


「だが……」

「ああ……」

 後ろ暗い雰囲気で頷きあった。


「このダンジョンは……」

「金になる」

 彼らの横には、迷宮通貨の入った賞金袋がある。

 勝敗に関係なく、参加者全員に迷宮通貨の袋が配られたのだ。

 さらには試しで買いこんできた購買部の商品も並べられている。


 ダンジョン素材が金で買えると確認できたからこその「金になる」だった。

 比較的安全そうで、今回のイベントでわかるとおり、アイテム(迷宮通貨)集めも楽に行えている。


 そのうえで、多種多様なダンジョン素材が手に入る。

 このダンジョンは狙い目だ、となりもする。


「調査段階の、今のうちなら――」

「ああ、ぼろ儲けできそうだな」


「話に乗ってきそうなやつらに心当たりは?」

「あるぜ」


 ニヤリと笑って、二人が取り出したのは違法に改造されたスマホだった。

 中継機を介さずに、地上と連絡を取り合える高出力機だ。


 欠点は、送信はできても、受信するには相手も同レベルのスマホを持っていなくてはならないというところ。

 だが、それは呼び寄せた者たちが近づいてきてから、どこかで落ち合えばいいだけのことだ。

 呼ぶのに支障はない。


「よし」

「やるか」

 二人は・・・いや、そこに集まった者たちは、思いつく限りの『儲け話に乗ってきそうなやつら』に連絡を取った。


 『ちょっと奇妙だけど楽しく遊べるワンダーランド』、そんなダンジョンに無法者が入り込もうとしていた。

 入口の警告のことは、誰も思い出さなかったのだ。


 学園祭の裏で、ルールが破られようとしている。

 どこかで、誰かか笑い出し、冷たいため息がこぼれた。


 ダンジョンが、ダンジョンに戻ろうと準備を始める。


 ◇舞台裏◇


「これが、狙いですか?」

 冷ややかな問いが、カルマの頬を撫でた。


「い、いや。狙ってはいない。通貨制度の普及になればと思っただけだよ!」

 21階層のイベントで、大量の迷宮通貨が『お客様』に渡るようにしたことについてだ。


 悪事を働こうとする者が出ると予想していたのか?

 そう聞いている。


 カルマは否定した。

 誤解だと。


 ほんとかしら?

 妖怪たちは信じていなさそうだった。


「ともかく!」

 疑いの目を振り払うように声を張り上げて、カルマは言った。


「クセのある『お客様』がたくさん来場しそうだ。お迎えを頼むよ」

「お迎えですね!」

 ぴょん!

 元気に跳ねた女子が敬礼した。


 別の『お祭り』が始まる。


 ◇野球部視点◇


「続けるってことで、いいんだな?」

 お好み焼き屋の奥座敷、『漢』たちが結束を深めていた。


「もちろんだ」

 一人が代表して答え、全員が頷く。


 傍らには、ニコニコ顔で座る『マネージャー』がいた。


「こんな中途半端でやめられるか!」

「コンプリートするまでは終われねぇ!」

 マネージャーを見ながら熱弁が振るわれた。


 彼らは、21階層に来るまでマネージャーのパーツ集めに奔走していたのだ。

 メインクエストである『目指せ甲子園!』の派生クエストで『マネージャー』に関連しそうなものを片っ端からこなすという方法で。


 結果、彼らのマネージャーは、グラウンドだけでなく、こうして店にも来られるようになっている。

 まだ私服はなく、セーラー服ではあるが大きな進化を遂げていたのだ。

 惜しむらくは、表情が真顔とニコニコしかないこと。


 真顔だけでは哀しい…あるいはコワい。

 ニコニコもずっとはツライ。


 もう少し、自然な表情が欲しかった。

 それに、いまだ『声』がない。

 彼らについて歩くだけなのだ。


 試合やクエストによる練習の場面では、懸命に応援してくれるのだが動きだけ。

 見ていても、見なくても、どこか切ない。

 本当に、いろんな意味で中途半端なのだ。


 だからなのか、『野球クエスト』に選択表示が出ていた。


 【クエストを終了しますか? 終了/継続】だ。


 『甲子園出場』でクエストは達成した。

 報酬ももらった。

 そこで終わりとするか、まだ続けるか。


 続ける場合、一定数の部員確保を求められる。

 この意思確認をするための集まりが、今のコレだった。

 そして、満場一致で続ける意向が示されたことになる。


「わかった。継続だ!」

 部長が宣言すると同時に、脳内のシステムチャットが反応した。



 【『新人戦に向けて、強化に努めよう!』、クエストが発生しました】



「新人戦か」

「がんばるぞ!」


「おお」

 部員たちが、こぶしを突き上げる。


 その横で、マネージャーもこぶしを振って、腕を上げていた。


 野球部による、マネージャーのための戦いが始まった。


 ◇美術部◇


 一方、美術部などの文化部はクエストが続いている。

 球技大会参加は一生徒としての参加で、部は関係がなかったようなのだ。

 クエスト達成となったのは試合をした部だけだった。


「ああ、そういうことかぁ」

 スマホで、クエストの詳細を確認した美術部員は、納得顔で頷いた。

 クエスト説明の最後に、今までなかった文章が追加されている。


 『文化祭で展示会を開こう!』、とある。


 そして、それはどうやら30階層で開かれるらしい。


「運動会、球技大会ときて、文化祭もあるわけね」

 学校行事を模しているらしいダンジョンならではの展開と言えるだろう。


「まぁ、がんばりますか」

 美術部員は、重そうな袋を持ち上げた。


 運動部ほどではないが、十分な量の『迷宮通貨』が入っている。

 次はきっと、もっともらえるだろう。

 がんばりがいがある。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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