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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第18話 『購買部』

3/3

 


 20階層は、10階層同様に広々とした空間が広がっていた。

 『たこ焼き屋』などの屋台があることも変わらない。

 ただし…


「やったっす! 購買部があるっす!」

 平屋建ての建物に大きく『購買部』と書かれている。


「ほ、本当にあったとは……」

 澪が絶句している。


「焼きそばパン!」

「カレーパン!」

 とりあえず、駆け寄る朔也と陽翔。


 他のメンバーも興味津々だ。

 もちろん、澪も品揃えは気になるところだ。


「焼きそばパンはなかったっす!」

 うなだれる朔也。


「カレーパンもな」

 陽翔も残念そうだ。


「あったのはクリームパンだけだ」

「クリームパンください!」


「え?」

「エ?」


 二人の間に割って入り、素早く『クリームパン』を購入する澪。

 メンバー全員の視線が集まる中、おいしそうにほおばっている。


「濃い目に淹れたコーヒーが欲しいわね」

 食べ終えて満足そうに息を吐く。


「あーっとっす」

「コーヒーは確かに欲しいかもな。うん」

 ちょっとビミョーな空気が流れた。


「そ、それはいいとして……」

 『パン』以外の販売品目を確認していく。


「これ…は」

 澪の目が険しくなる。


「どうした?」

 後ろから覗き込む陽翔。


「目につくようなものはないようだが?」

 どこのダンジョンでも手に入るようなものばかりなのだ。


「そうね。一つ一つを見れば、そう評価されるでしょうね。重要なのは、その『すべて』がここで買えるってことよ!」


 どこででも手に入るものばかりではある。

 だが、一つ所で手に入るものではなかった。

 各種『テーマ』の『どれか』では手に入るのだが、『山』がテーマのダンジョンで『海』のものは得られない。

 逆もしかりだ。


 なのに、ここでは『テーマ』別にカテゴリー分けされて、並べられている。

 迷宮通貨さえあれば、いつでも、どれでも、買うことができる。

 これは、画期的なことだった。


「ですが、どれもレア度が低いですよ?」

 魔法使いの指摘にも、澪は首を振った。

 問題にならない、と。


「ここはまだ20階層。深く潜ればレア度も上がるかもしれないですね」

 初日以降、ほとんど空気だった女が口を開いた。

 真剣な顔で販売品目のリストを凝視している。


「そういうことになるわ。このダンジョン。とんでもなく効率がいいかも!」

 ダンジョンからの採取物が世界を回している現代社会で、この効率の良さは無視しえないものがある。


「中層から深層がどうなっているかによっては、生産性の高いダンジョンとして高評価できるかも」

 国として探索者を動員して、採取に当たらせる重要拠点となりえる。


 女の目の色が変わっていた。


 世界経済に変化をもたらすかもしれない事態となっていたのだ。

 日本国内だけで、資源が手に入るなら――

 いくつかの国の横暴に対抗できる可能性が出てきた。


 今回の調査には大きな意味が出てきた。




「他には何があるのかしら?」

 『購買部』を出て、澪が周囲を見回した。


 20階層。

 ダンジョンの節目となる階層である。

 他にも何かあるのか、ないのか。


「また、運動会ってことはないだろうな?」

「あるかもね」


 不安そうな陽翔に澪が肩をすくめてみせる。

 そこへ、朔也が声を張り上げた。


「お好み焼き屋があるっすよ!」

 とりあえず、腹ごしらえが先らしい。

 苦笑して、メンバーは朔也を追いかけるのだった。


 ・

 ・

 ・


 【クエスト『運動部が主役。球技大会を成功に導け!

 報酬:21階層への扉・期限なし】



「……出たな」

「出たわね」

 お好み焼きを食べ終え、手鏡で口の中の青のりチェックをしていた澪が溜息を吐く。

 ある程度、予想はできていたが『やっぱりかい!』という気持ちは抑えられなかった。


「また、生徒会室分室へ集合なのね」

 手鏡をしまいながら、呟いた。


 そこへ——


「ヘンなのが出たっす!」

 トイレに行っていた朔也が素っ頓狂な叫びとともに戻ってきた。


「変なのはあんたの声と顔で十分よ」

「ひでぇっす!」

 朔也が全力で抗議した。


「今に始まったことじゃねぇことを掘り返さねぇでほしいっす!」


「……ああ、そうね。悪かったわ」

「そんなことより、あそこっす! 階段のとこ!」

 変な顔扱いされたことをさらりと流して、店の奥を指差した。


「何があるのよ?」

「貼り紙っす! 生徒会御一行様っていう立て看板があって、二階に矢印が向いてるっす!」

「……今度は二階を使えってことか……」

「なんで、こうビミョーにリアルなの……」

 額に手を当てて、脱力する澪だった。


「え―っと…」

 二階のお座敷に移動してテーブルを囲む。


「球技大会…か」

 苦いものを飲んだような顔で、陽翔がプリントをめくる。


 野球、バスケ、バレー、卓球、テニス…そしてサッカーが載っていた。


「どうしろと?」


 各会場で試合があるらしいが『生徒会』に何をしろというのか?


 そのあたりがよくわからない。


「『生徒みんなで壮行会。参加型のイベントで一体感を!』となっているな」

 行われる球技にちなんだミニゲームをして、選手以外にも興味を持ってもらおう…ということだった。


「やっぱりかい!」


 全員でツッコんだ。


 結局、みんなで何かしましょうってことだった。


 運動会と大差ない。


「あ、でも、ほら、今回はグループじゃなく個人っすよ!」

「それだけが救いよ」


 全員に順序良く参加してもらえば格好がつくのだ。

 個人だから、全員が揃うのを待つこともない。


 20階層に降りてきた者から、参加させていける。

 そこは楽だ。

 壮行会は全員が揃ったところで行い、そのまま各試合へ進む。


「足止めを食らうことになるが、これもやれそうだな」

 クエスト達成は確実だと陽翔は胸を撫で下ろした。


「そうっすね。焼きそばを食べ放題っす!」

 足止めされている間は食道楽だ!


 朔也が喝采を叫び、澪の肘打ちをもらって悶絶している。


「交代で20階層の入り口を見張ろう。誰か来たら強制的にイベント行きだ」

「そうなるわね」

「ういっす」


 方針は固まった。


 20階層、球技大会が開催される。


 『誰か』の望み通りに。



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