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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第9話 『戦闘・活動』

3/3

 


 蜂が飛んできた。


「いや、蜂じゃねぇだろ!」


 陽翔が剣を振りながら叫ぶ。


 接近してきた“蜂”には――腕があった。


 頭部、胸部、腹部。

 体の構造は確かに虫だ。

 全長一メートル半ほどの巨大蜂。


 だが、腕だけが“人間の腕”になっている。

 六本の腕すべてが剣を握り、

 その背後には、腕のない一回り小さな蜂の群れが続いていた。


 彼らは知る由もないが、

 ランクCの虫+武器妖怪に、ランクGの人間を宿主にして生まれた“虫妖怪”だった。


「フレアバースト!」


 澪の杖が赤く輝き、炎が放たれる。


「あっつ! 熱いって、かげんしろ!」


 最前列の朔也が怒鳴るが、澪は冷たい。


「何のための大盾よ。しっかりしなさい!」


 羽虫を焼くためなら、この程度の熱量は当然だ。


 ガタガタ言うな。


 軽く睨まれ、朔也は肩をすくめた。


「驚かされたが……11階層なら、この程度だな。問題ない」


 陽翔は冷静に評価する。


 床に突き刺した剣先で、蜂が灰になる。

 ドロップしたのは――迷宮通貨。


「味気ないとも思うが、わかりやすいな」


「そうね。システムとしては合理的だわ」


 何が落ちるか確認する手間がない。

 ただ通貨を貯めていくだけ。


「使い道が、たこ焼きだけじゃなければ、だけどな」


「階層の中層あたりに店があることを祈りましょう」


「きっとあるっすよ! 購買部で幻の焼きそばパンを買うっす!」


「いや、幻はカレーパンだろ?!」


 朔也のボケに、陽翔が即ツッコミ。


「どっちでもいいでしょ!」


 澪がぶった切った。


「でも、ここまで“学校”を押してるなら、購買部はあるでしょうね。探索目標に入れておきましょう」


「焼きそばパン、絶対見つけるっす!」


「カレーパンもな!」


「あーはいはい。がんばりなさい」


 彼らは空気の中に、ソースとカレーの匂いを探しながら進んだ。


 * * *


 ◇ 奉仕活動組 ◇


 奉仕活動組が、みずほと名乗った案内人に連れられて行った先は――草地だった。

 農地に変えようとしているらしい。


 すでに十数人が黙々と“手”を動かしている。


「うわ……」


「マジかよ」


「ダル……」


 全員が嫌そうに顔をしかめる。

 何をさせられるか、すぐに理解した。


 みずほは無言でクワを突き出す。


「あー、やるよ。やりますよ」


「だから柄でつつくなって!」


 しぶしぶクワを受け取り、農地に散らされる。


「つちをたがやせー!」


 みずほの声が響く。

 奉仕活動組は、やむなくクワを振り下ろした。


 タイミングはバラバラ。

 動きもバラバラ。


「つちをたがやせー!」


 声より先に動く者、ワンテンポ遅れる者。

 腰の入らない動き、無駄に力む動き。


「つちをたがやせー!」


 不平を言う者、達観して黙る者。

 手を抜く者、逆に真面目にやる者。


「つちをたがやせー!」


 ――いつからだろうか。


 タイミングが合い始めた。


 無用なプライドが削れ、気負いが消え、

 誰もが無心になっていく。


 ただ、ひたすらに土と向き合う。


 気づけば、影は一分の隙もなく連動していた。

 元からいた“働き手”たちと遜色ない動き。


 影だけを見れば、誰が誰かわからない。

 土の上で、黒い人型が同じ動きをしていた。


 “誰か”が揃えたように。


「そこにならべー!」


 号令に応じて集まる。

 元からいた者との境界は消えていた。


「なにすんだ?」


「肥料をまく?」


「あ、それか。肥料ね」


 浅型一輪車にたい肥を積み、運んで漉き込む。


「そこまでー!」


 片付ける。


「いちれつにならべー!」


 再び並ぶ。


「畝づくりだな?」


「畝づくりだぞ」


「畝を作ろう」


 列を作り、土を寄せていく。

 まっすぐで美しい畝が生まれる。


「つぎのさぎょうにはいれー!」


「種まきだ」


「種まきだ」


「種まきだな……って、なんか、言うこと揃ってきてねぇか?」


「確かに」


 揃って頷く。


「同じことしてるしな」


 揃って肩をすくめる。


「難しいことはしてない。先読みくらい誰でもする」


「ああ。そうか」


「ああ。そうだ」


「ああ。そうだ」


 畑作業はどんどん進む。

 影たちは一糸乱れず働き続ける。


 みずほは、もう声を掛けなかった。

 その必要がない。


 ただ、一度だけ唇が動いた。


 それは――

「ひきかえせー」

 と見えた。



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