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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第5話 『調査報告』

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「イカ焼きがなかったっす」


 朔也が肩を落として戻ってきた。

 ほとんどの者が満足げな顔で戻る中、一人だけ暗い。


「なぜ? なぜなんすか! 他のものはあったのに!」


 イカ焼きだけが見つからなかったらしい。


「屋台っつったらイカ焼きでしょう? 違うっすか?!」


 泣き顔で澪に迫る。


「ちょ、落ち着きなさい!」


「ゴフッ!」


 思わず鳩尾に肘が入った。


「好みは人それぞれでしょう!」


「そうっすけど……そうっすけどぉぉ!」


 朔也は男泣きだ。


「もしかすると……」


 顎に手を当てた魔法使いが口を開く。


「何かあるの?」


「途中で見た農業体験イベントらしきエリアの作物が、ここで消費されているのかもしれません」


 確かに、畑や花壇、温室など、学校にありそうな施設は一通り見てきた。


「は? ……え? それってつまり、自給自足ってこと?」


「そうです。なので“海のもの”を用意するのは負担が大きいのかもしれません」


 農業エリアにあった作物を思い浮かべる。

 米、麦、トウモロコシ、サトウキビ、甜菜……屋台のラインナップと照らし合わせれば、符合するものは多い。


「あ、でも『たこ焼き』は?」


「あれはサイズも小さいですし、優先度の問題でしょう。たこ焼きとイカ焼き、どちらかを諦めるなら……」


「それは……あるな」


 陽翔が重々しく頷く。


「イカ焼きの立場は?!」


「知るか!」


 泣き続ける朔也を押しのけ、陽翔は表情を引き締めた。


「海洋資源は乏しいとしても、ダンジョン内通貨があれば食い物を買えることは間違いないな?」


「供給量に限りはあるでしょうが、購入可能なのは確実ですね。画期的です」


 本来、食料は持ち込みが基本のダンジョンで、内部調達ができる。

 探索者にとっては大きな利点だ。


「しかも、ここは平和そうだ。いわゆる“安全圏”だろう」


 見た限り、攻撃性のある存在はいない。


「ベースキャンプを張るなら理想的ね」


 澪も陽翔の意図を察して頷く。


「本隊に、ここまでの情報を送信。彼らの到着をここで待つ」


 * * *


 ◇ 先行調査報告 ◇

 提出者:先遣調査隊リーダー 神代陽翔

 宛先:国連直轄調査本部/日本政府ダンジョン省


 1.環境および構造変化について


 迷宮内部は、既存データと完全に乖離した構造を示す。

 木造校舎を模した空間が連続して出現し、廊下・教室・保健室・屋台エリアなど、学校施設を模した“再現度の高い構造物”が確認された。

 これらは人工物ではなく、迷宮そのものが形状を変化させて生成したものと推定される。


 2.敵性反応について


 現時点で、探索者に対して直接的な攻撃行動を取る存在は確認されていない。

 ただし、黒板・教科書・屋台従業者など、『学校の記憶』を模したと思しき存在が自律行動しており、

 これらが敵性に転じる可能性は排除できない。


 3.学生失踪事案との関連性


 266名中265名が消息不明となった件について、

 本迷宮の急激な構造変化に巻き込まれ、内部に吸収・同化された可能性が高い。

 現時点で“人間の遺体”や“直接的な痕跡”は確認されていないが、

 迷宮各所に『記憶の断片』と思われる演出が散見され、

 迷宮が学生の記憶・行動・文化を取り込んでいると推測される。


 4.迷宮通貨および経済圏の存在


 内部で『迷宮通宝』と呼ばれる通貨がドロップすることを確認。

 屋台エリアではこれを対価として食料を購入可能。


 食材は迷宮内部の農業エリア(畑・温室)で生産されていると推定され、

 迷宮内部に自給自足型の経済圏が成立している。

 これは既存のダンジョンでは極めて稀な現象である。


 5.魔力吸収について(重要)


 身体測定イベント、教科書型存在との接触、屋台での購入行為など、

『探索者が行動するたびに微量の魔力が吸収される』ことを確認。


 吸収量は少量で、短期的な危険性は低いが、長期滞在時には累積的な影響が懸念される。

 迷宮が魔力を“燃料”としている可能性が高い。


 6.イベント構造について


 各階層には『スタンプラリー形式』のイベントが存在し、

 探索者はこれを進行することで迷宮内部のルートを選択できる。


 イベント内容は娯楽性が高く、敵性は低いが、

 迷宮側が探索者の行動を“誘導”している点は警戒を要する。


 7.安全圏の評価


 10階層の屋台エリアは、敵性反応がなく、補給が可能であるため、

 暫定的に『安全圏』として利用可能と判断する。


 ただし、迷宮の構造変化が継続しているため、

 安全圏の恒常性は保証されない。


 8.推奨事項


 ・本隊は10階層までの移動を推奨。

 ・長期滞在時の魔力減衰に注意。

 ・迷宮の『意図』が不明であるため、敵性が発生しない前提での行動は危険。

 ・迷宮通貨の流通量、屋台の供給能力、農業エリアの規模など、内部経済の調査を継続すること。


 9.総括


 本迷宮は、既存のダンジョンとは異なる『テーマ型迷宮』として成長しており、

 学校文化・記憶・行動様式を取り込んだ“擬似学園祭空間”を形成している。


 現時点では敵性は低いが、迷宮の『意志』が探索者を誘導している可能性が高く、

 慎重な調査が求められる。



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