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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
学園祭編

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第4話 『10階層』

1/3

 


 【放課後迷宮スタンプラリー:参加者への注意】


 このラリー帳は、旧校舎に眠る『記憶』を集めるための記録帳です。

 放課後、誰もいないはずの校舎で、あなたは『選ばれし探索者』として、いくつものルートを辿ることになります。


 探索の手引き:


 校舎内には複数の『記憶の間』が存在します。どの順路を選ぶかは、あなた次第。

 各部屋には『記憶の断片スタンプ』が隠されています。

 すべてを集めた者には、真実の扉が開かれるでしょう。


 ただし、ルートによって見えるもの、聞こえるものが異なるかもしれません……。


 ご注意:


 一度通ったはずの廊下が、戻ると違っていることがあります。

 スタンプは1人1回まで。

 誰かの声がしても、振り返らないでください。

 途中で『何か』に出会っても、それは演出です。きっと。


 さあ、あなたはどのルートを選びますか?

「理科室の奥」か、「旧図書室の裏階段」か、それとも……


 ——最後のスタンプを押したとき、あなたは何を思い出すのでしょうか。


 * * *


「……意味がよくわからんのだが?」


「確かに、変に曖昧で、わかりにくいですね」


 ラリー帳の裏に書かれた説明文を読み、陽翔と澪が額を寄せ合う。


 保健室を出たところで指示が途切れた。

 しばらく歩いて反応を探ったが、何も起きない。

 そこで“スタンプラリー”という設定に目を向けたのだ。


「演出、でしょうね。それは」


 朔也が肩をすくめる。


「演出だと?」


「ええ。ダンジョン側が用意した“攻略ルート”が複数ある。

 どれを選ぶかで、出会う敵や報酬が変わる。

 でも、あまりに明確だと挑戦が偏る。だから曖昧にしてあるんす」


「まるでゲームだな」


「スタンプラリーっすから」


 まるで、ではなく事実ゲームだった。


 * * *


「なるほど、こういうことか」


 10階層に入ってしばらく、陽翔が周囲を見渡して頷いた。


 最初に感じたのは、ソースの焼ける香りと青のりの風味。

 風に乗って流れてくる匂いの先には――


『たこ焼き』の文字がでかでかと掲げられた屋台。


 焼いているのは……青鬼だった。


 ねじり鉢巻きに浴衣。

 肌は青く、頭には角。

 その姿で、竹串を器用に操り、たこ焼きをひっくり返している。


「こういうことって、何よ……」


 澪が声を震わせる。


「ドロップアイテムの“通貨”さ。ここで買い食いをさせたいらしい」


 陽翔が指差す先には、のぼりが揺れていた。


『迷宮通宝、5枚』


「一枚百円ってところか?」


「な、何の意味が?」


「さぁな。金が欲しければ戦闘するなりイベントを進めるなりしろってことかもな」


 戦闘も命の危険は感じない。

 イベントも子供向けアトラクションのようだ。

 目的がつかめない。


「まだ10階層っすからね。下に行けばリスクも上がるでしょうし」


 朔也が言う。


「……そうね。それに確実に“目的”はあるわ」


「確実?」


「魔力を集めてることよ」


 金欲しさに動き回れば、その都度どこかで魔力を吸われる。

 小さな積み重ねでも、全探索者が動けば膨大な量になる。


「集めた魔力で何をするつもりなのか……」


「研究者の中には“ダンジョンは魔力を食べる生物”なんて説もあるわ。

 巨大な構造を維持するには、途方もないエネルギーが必要。

 そのためかもね」


 魔力が必要な理由は理解できる。


「難しい話は終わりですかい? あっしはもうガマンできやせんぜ」


「え? ……ああ」


 たこ焼き屋と自分の間を行き来する朔也の視線に、澪は頭を抱えた。

 足はすでに屋台へ向いている。


『おあずけ』中の犬のようだった。


「ええ、終わりよ。でも気をつけてよ? 毒かもしれないわ」


「それを確認するのも俺らの仕事っす」


 毒見役――それが先遣隊の務め。


「おっしゃ! 兄ちゃん、一パックくれ!」


 青鬼はにっこり笑い、焼き立てをパック詰めしてくれた。


「まいどあり」


 通宝を受け取ると、もう一度にっこり。

 風貌はいかついが、雰囲気は完全に祭りの屋台だった。


 近くには木製のベンチが置かれている。

 朔也はどっかと座り、湯気の立つたこ焼きをほおばった。


「あ、あつっ! ……はふ、はふっ」


「熱いってわかるでしょうに……」


 澪が呆れる。


「う、うめぇっすよぉぉぉー!?」


「声がでけぇよ! 誰に伝える気だ!」


 陽翔が小突くと、たこ焼きが一つ消えた。


「あ、俺の金で買ったすよ!」


「ケチケチすんな。減るもんでもあるまいし」


「明らかに減ってるっすよね?!」


「あ、マジでうめぇな、これ!」


「人の話を聞けよ!」


 朔也が怒鳴るが、陽翔は気にしない。


「まったく、子供なんだから」


 澪はため息をつきつつ――


「焼きそばじゃねぇっすか!」


「向こうで売ってたわよ?」


 指差す先には別の屋台。


「くっ! 油断も隙もねぇっすね!」


 朔也はたこ焼きを完食し、焼きそばを求めて走り去った。


「元気ね。即効性の毒はなさそうだわ」


 澪は真面目な顔で頷き、割箸を動かす。


 小さな口に焼きそばが消えていく。


 ――ここに、パーティは瓦解した。


 一斉にバラけて、好みの食べ物を探しに行くのだった。



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