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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第195話 呪い2 ~呪いの主と使用者~ 後編

1/3

 


 ◇呪いの主◇


『糸の部屋』——あの場所で、私は死んだ。

 ミミックの罠にかかった瞬間、すべてが終わった。

 仲間たちは、すぐそばにいた。

 でも、誰も助けてくれなかった。


 ・・・助けられる状態じゃなかった。

 それはわかってる。

 あの状況で、誰も動けなかった。

 私が、そうさせたんだ。


 私が、無理をした。

 私が、焦った。

 私が、仲間を巻き込んだ。


 だから、私が死んだのは——当然だった。

 因果応報。

 自分のせいで、自分が死ぬ。

 それは、割り切れる。


 でも、仲間まで巻き込んだことだけは——それだけは、割り切れなかった。


 彼らの瞳に浮かんだ恐怖。

 動けないまま、私を見捨てる決断をする声。

 あれが、私の最後の記憶。


 だから、私は『呪い』になった。

 守るために。

 今度こそ、誰も巻き込まないように。

 今度こそ、誰も失わないように。


『呪い』は、私の後悔の形。

『糸』は、私の未練の形。

『箱』は、私の祈りの形。


 私は、守りたかった。

 ただ、それだけだった。


 ラッキーだった。

 私を殺したのが、ミミック——『箱』だったこと。


 閉じ込める。

 仕舞う。

 隠す。

 守る。


 そんな意味を持つ『箱』に、私は喰われた。

 だから、私は呪いをかけた。


『箱』の中に、捕らえるために。

 仕舞うために。

 守るために。


 普通なら、そんな呪いに力なんて宿らない。

 ただの未練。

 ただの願い。

 ただの、死者の囁き。


 でも、このダンジョンは変わり始めていた。

 何かが、全体に染み渡ろうとしていた。

 空気が、魔力が、構造が——揺らいでいた。


 そして、あの『呪術師』の先生。

 彼女の存在が、私の呪いに力をくれた。


 彼女は『呪い』を利用してくれた。

『私』と繋がることができた。

 そして、生徒を『捕らえた。

 私と同じように、『守ろう』としていた。


 その共鳴が、私の呪いを目覚めさせた。

 未練が、力になった。

 祈りが、術になった。


 私は、ただ守りたかった。

『箱』の中に、仲間を閉じ込めてでも。

 もう誰も、私のように死なせたくなかった。


 だから、私は呪いになった。

 そして今——私の呪いは、彼女の手で形になる。


 ◇呪いと女教師と決着と◇


 私は、守りたかった。

 それだけだった。


 誰かを傷つけるためじゃない。

 誰かを閉じ込めるためでもない。

 ただ——誰も、私のように死なせたくなかった。


『呪い』は、私の後悔の形。

『糸』は、私の未練の形。

『箱』は、私の祈りの形。


 そして今、私の祈りは——彼女の手で形になる。


 女教師は、静かに立っていた。

 彼女の瞳は、もう呪術師のそれではなかった。

 ただ、生徒を守る『教師』の目だった。


 生徒たちを背にして。

 敵に杖を向けて。

 その瞳には、迷いがなかった。


 彼女は、私の声を聞いた。

 私の想いを受け取った。

 そして、私の呪いを『術』に変えた。


「守るために、閉じ込める」

「守るために、捕らえる」

「守るために、戦う」


 その言葉が、彼女の中で燃えていた。


 敵は動揺していた。

 信じていた仲間に裏切られ、隊列は崩れた。

 その隙に、生徒たちは逃げ道を探す。

 でも、女教師は動かない。

 彼女は、ここに残ると決めていた。


「・・・私が、守る」


 その声は、誰にも届かなくてもよかった。

 それは、祈りだったから。

 誰かに向けたものではなく、自分自身の中に灯した、小さな光だったから。


 そして、彼女の背後に『箱』が現れる。

 静かに、ゆっくりと、開く。


 その中には、誰もいない。

 でも、確かに『誰か』がいた。

 祈りの形をした、呪いの主が。


 彼女は、箱に手を伸ばす。

 その瞬間、空気が震えた。

 魔力が、優しく流れ込んでくる。


「・・・ありがとう」


 誰の声だったのか、わからない。

 でも、確かに聞こえた。


 その声は、風のように通路を撫でていった。

 誰にも届かなくても、確かにそこにあった。


 それは、呪いの主の声だったのかもしれない。

 それとも、女教師自身の声だったのかもしれない。


 どちらでもよかった。

 二人は、もうひとつになっていたから。


 そして、箱は閉じる。

 静かに、穏やかに。

 まるで、誰かを優しく包み込むように。


 箱は、もう『罠』ではなかった。

 それは、誰かを守るための『居場所』になった。


 通路の空気が、少しだけ軽くなる。

 霧が晴れていく。

 呪いが、祈りに変わった瞬間だった。



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