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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第196話 始まりと終わりと始まりと 前編

2/3

 


 ◇迷宮の変化◇


 呪いが、祈りに変わった。

 それは、迷宮にも変化をもたらしていた。


「やっぱり」

 64階層『糸の部屋』。

 百合根友梨が、ひっそりと頷いた。


 迷宮の変化を確認しているところだった。

『虫』から『妖怪』へ。

『雑木林』から『学校へ』。


 そのスムーズな移行を見守るためだった。

 その途中で見つけた――思い出した――のがこの部屋。

 この『箱』だった。


 一般的な宝箱。

 その中に上半身を入れ、腰から下をはみ出させている女子高生がいる。

 もちろん、心臓はすでに止まっている。


「変化に巻き込まれているものね」

 宝箱の木板が、木造校舎へと変貌していく『ダンジョン』の床と同化しようとしている。


 ミミックが『学校の備品』になろうとしている。

 擬態ではなく同化。

 挟まれている『記憶の器』も、そうなろうとしていた。

 つまり・・・。


「また、妖怪が増えるわけね」

 仲間が増える。

 喜ぶべきか、悲しむべきか。

 悩ましいところだが・・・。


「ようこそ、こちら側へ」

 歓迎の言葉を投げかけた。


 自分は意外にも、妖怪となった自分『雪女:氷室しらゆき』を受け入れている。

 他の者たちもそうであるようだ。

 なら、きっと彼女もそうだろう。


 宝箱から出た足が、ひくひくと動き始めていた。


 ◇追跡行の終了(50階層の)◇


 女教師の反乱は、秒で鎮圧された。

 呪術師が一人で近接職に立ち向かったところで、勝負にはならなかったのだ。

 一人を消し去り、もう一人を叩きのめすのでやっと。

 残りの二人に葬られた。


 だけど・・・。

 その二人は、沈黙に沈んだ。

 捕らえられていた4人がいた。


 女教師が膝をついた瞬間、空気が震えた

 杖が床に転がり、彼女の瞳から光が消える。

 そのとき——通路の奥に並んでいた『箱』が、静かに、音もなく開き始めた。


 木の蓋が、まるで風に誘われるようにゆっくりと持ち上がる。

 内側から、淡い光が漏れ出す。

 それは呪いの残滓ではなく、祈りの名残だった。


 光の中から、ひとり、またひとりと姿が現れる。

 まるで夢から目覚めるように、彼らはゆっくりと立ち上がった。


 女教師の死が、呪いを解いたのではない。

 彼女の『願い』が、箱を開いたのだ。

『呪い』の発動減となっていた女教師が死んだことで、捕らえていた『箱』が開いたのだ。

 そして、そこに教師陣最後の二人がいた。

 箱から出た四人に、ためらう余裕はなかったのだ。


「・・・えっ!? あんたたち・・・!」

 走り始めていた生徒が、思わず足を止める。

 箱から出てきた4人の姿を見て、目を見開いた。


「うそ・・・生きてたの・・・?」

 声が震える。

 ひとりが駆け寄り、肩を抱きしめる。


「よかった・・・ほんとに・・・!」

 涙がこぼれる。

 他の生徒たちも、次々に駆け寄る。


 でも、4人は少し戸惑った顔をしていた。

 箱の中で過ごした時間が、彼らを少し変えていた。


「・・・ごめん、待たせたね」

 その言葉に、誰かが笑った。

 そして、誰かが泣いた。


 それは、呪いの終わりではなかった。

 でも、祈りが届いた瞬間だった。


「他にも追手がいるかもしれない。行こう!」

 残された生徒たちが地上へ向けて、再び走り始めた。



 退避と追跡行の脱落者=生徒6(4名復帰) 教師14



 彼女たちは知らないが、50階層にいた教職員がここで全滅したことになる。

 残るは25階層の14人だ。



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