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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第193話 呪い ~呪われた少女~ 後編

2/3

 

 ◇疑心暗鬼と気づき◇


 仲間たちの間に、疑念が広がっていた。

 誰かが誰かを見ていた。

 誰かが、自分自身を疑っていた。


 その空気は、冷たく、重く、静かに満ちていた。

 まるで、霧のように。

 まさに、呪いのように。


 でも——その変化に、ただ一人気づいていない少女がいた。


 彼女は、確信していた。

『呪い』は自分の中にある。

 だから、誰かを疑う必要はなかった。

 誰かに疑われることも、想定していなかった。


 なぜなら——彼女は、ずっと『井戸の怪物』を見ていたから。


 あの瞬間。

 命の危機が近づいていた瞬間。

 彼女は、仲間を盾にした。


 その記憶が、彼女の中で怪物になった。

 井戸の底に潜む、黒くて、冷たい、動かない怪物。


 それを見つめ続けていた。

 それが、自分の『本当』だと思っていた。


 だから、周囲の変化に気づかなかった。

 仲間たちが距離を取り始めたことも。

 誰かが杖を握り直したことも。

 誰かが、そっと彼女の背後に立ったことも。


 彼女は、ただ——自分の中の怪物を見ていた。


「・・・私が呪われてる」


 その言葉は、誰にも届かなかった。

 誰も、もう彼女の言葉を聞こうとしていなかった。


 そして、彼女は気づく。


 誰もが、自分を見ていない。

 誰もが、別の誰かを見ている。

 誰もが、自分自身を見ている。


「・・・あれ?」


 その瞬間、彼女の視線が井戸の底から外れた。

 周囲を見渡す。

 誰もが、疑いの目を持っていた。

 でも、それは——自分に向けられていなかった。


「・・・違うの?」


 彼女の声は、震えていた。

 自分が呪われていると思っていた。

 でも、誰もそれを見ていない。


 じゃあ——この怪物は、なんだったの?


 その問いが、彼女の中で静かに響いた。


 そして、初めて——彼女は『呪いの形』を見失った。


「・・・もしかして、私じゃないのかも」


 その可能性が、少女の胸にふっと灯った。

 まるで、長い夜の中で見つけた小さな星のように。


 ずっと、自分が呪われていると思っていた。

 あの瞬間の記憶。

 あの目。

 あの罪。


 でも、誰も自分を責めなかった。

 誰も、自分を見ていなかった。


「・・・違うのかも」


 その言葉が、心の奥に染み込んでいく。

 重かったはずの空気が、少しだけ軽くなった気がした。


 その時だった。


「——捕まえた!」


 女教師の声が、背後から鋭く響いた。


 振り返る間もなかった。

 何かが背中に触れた瞬間、意識がふっと遠のく。


 視界が、ぐにゃりと歪む。

 音が、遠ざかる。

 足元が、崩れる。


「・・・あれ?」


 確かに軽くなったはずの心が、今は重く沈んでいく。

 まるで、深い水底に引きずられるように。


「・・・違うかもって、思ったのに」


 その言葉は、誰にも届かない。

 少女の意識は、静かに闇に溶けていった。


 ◇箱の中◇


 目を開けると、そこは静かな空間だった。

 音がない。色もない。

 ただ、灰色の霧がゆらゆらと漂っていた。


 空気は冷たく、でも湿っていた。

 まるで、誰かのため息の中に閉じ込められているようだった。


「・・・ここは?」


 少女は立ち上がろうとする。

 でも、体が重い。

 まるで水の中に沈んでいるような感覚。


「・・・やっぱり、私だったの?」


 誰も答えない。

 でも、霧の向こうに、誰かの影が見えた。

 影の胸元には、赤いリボンが揺れていた。

 それは、かつて彼女が盾にした仲間のものだったかもしれない。


 無表情。

 冷たい目。

 ただ、じっと見ている。


「・・・違うって、思えたのに」


 少女は呟く。

 でも、その声は霧に吸われて消えていく。


 影は、ゆっくりと近づいてくる。

 その瞳は、何も語らない。 でも、確かに——責めていた。


「・・・私が、呪われてるんだよね」


 その言葉に、影は止まった。

 そして、静かに首を振った。


「・・・え?」


 少女は目を見開く。

 影は、もう一度首を振る。

 そして、霧の中に溶けていった。


 やがて、『カチリ』と音がした。

 それはまるで、扉を閉めたような音だった。


 閉じ込められた。

 少女は膝をつき、座り込んだ。

 逃走し続けていた体力の消耗に、押しつぶされるようにして。


 退避と追跡行の脱落者=生徒7 教師9



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