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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第192話 呪い ~呪われた少女~ 前編

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「結局、呪われていたのは誰?」


 その問いの答えを知っていたのは、たった二人。


 一人は追跡者。

 呪いの痕跡を追う、女教師の呪術師。

 もう一人は逃亡者。

 呪われている『当人』。


「だって、しょうがないじゃない・・・!」


 その言葉は、誰にも届かない。

 届いてほしくなかった。

 でも、自分の中では何度も繰り返していた。

 まるで呪文のように。

 それを唱えなければ、心が崩れてしまいそうだった。


 あの瞬間、目の前にあったのは“死”だった。

 胸に矢を受けた少女の、無表情な顔。

 冷たい目が、自分を見ていた。

 狙っていた。


 怖かった。

 本当に、怖かった。

 だから、反射的に動いた。

 隣にいた仲間を——押した。

 盾にした。


 仲間が倒れた。

 そして、目が合った。


 死の間際、仲間は自分を見ていた。

 責めるでもなく、叫ぶでもなく。

 ただ、見ていた。

 その目が、焼き付いて離れない。


「しょうがなかったんだよ・・・」


 そう言いながら、心の奥ではわかっていた。

『自分の命』を守るために、『誰かの命』を差し出した。

 それが、事実だった。


 誰にも言えない。

 誰にも見られたくない。

 でも、自分だけは知っている。

 あの目が、今も心の奥で、じっと見ている。


「なんで・・・?」


 誰かが呟いた。

 その声は、誰に向けたものでもなく、ただ空気に溶けていった。


 何度撒いても、追手がついてくる。

 通路を曲がり、魔法で痕跡を消し、足音を散らしても——それでも、教師たちは正確に追ってくる。


「・・・呪いが、まだあるんじゃ?」


 魔術師の少女が、青ざめた顔で言った。

 その言葉に、皆が黙り込む。


 呪い持ちだと思って、盾の少女を置いてきた。

 彼女の足に黒い染みがあったから。

 呪いの『印』だと思ったから。


 でも——それでも、追ってくる。


「まさか・・・」


 誰かが言いかけて、口をつぐむ。

 その続きを、誰も言えなかった。


『呪い』を持っているのは、ほかにいたのではないか——?


 その疑念が、仲間たちの間に静かに広がっていく。

 誰かが、そっと距離を取る。

 誰かが、他人の背中をじっと見つめる。


「・・・誰か、呪われてる?」


「いや、そんなはず・・・」


「でも、じゃあなんで・・・」


 言葉が、疑いの種になる。

 目線が、刃になる。

 沈黙が、呪いになる。


 誰もが、自分の中に問いを抱えながら、仲間の顔を見ていた。

 その瞳には、信頼も、安心も、もうなかった。


 ただ、見えない『印』を探していた。

 誰かの背中に、誰かの手に、誰かの瞳に——呪いの痕跡を。


 そして、誰かが気づく。


「・・・あの時、あの子、何か・・・」


 その言葉に、空気が揺れる。

 誰かが、そっと一歩下がる。

 誰かが、剣の塚に手を置く。


 疑心暗鬼は、もう止まらない。

 呪いは、誰かの中にある。

 でも、それが誰なのか——誰も、確かめる勇気を持っていなかった。


 通路の奥から、足音が響く。

 教師たちが、近づいてくる。


「・・・どうする?」


 誰かが問う。

 でも、その問いに答える者は、いなかった。


 ただ、誰もが——誰かを見ていた。


「・・・確認、するべきだよね」


 誰かが言った。

 でも、その声は誰にも届かなかった。

 いや、届いたけれど——誰も応えられなかった。


『呪い』が誰に宿っているのか。

 それを確かめる方法は、ある。

 呪術師の女教師が使っていた『痕跡探知』の魔法。

 簡易版なら、呪術師でなくても扱える。

 魔力の流れを見れば、わかるかもしれない。


 でも——誰も、それを使おうとしなかった。


「・・・呪いって、どんな形なんだろうね」


 魔術師の少女が、ぽつりと呟く。

 誰も答えない。

 それは、誰にもわからないから。


 目に見える傷?

 黒い染み?

 心の中の罪?

 それとも——誰かの視線?


 確認したい。

 でも、確認した瞬間、自分が『それ』だったらどうする?


 その恐怖が、皆の足を止めていた。


「・・・私じゃないよね?」


 誰かが言った。

 でも、その言葉に誰も頷けなかった。

 誰もが、自分の中に『それ』があるかもしれないと思っていた。


 あの時、逃げた。

 あの時、見捨てた。

 あの時、見て見ぬふりをした。


 その『記憶』が、呪いの形をしているのなら——誰もが、呪われている。


 呪いって、誰かにかけられるものじゃない。

 自分で、自分にかけるものなんだ。


 だから、誰も確認しようとしなかった。

 誰かを疑うことは、自分を疑うことだったから。


 通路の空気が、重く沈む。

 誰も動かない。

 誰も、目を合わせない。


 ただ、静かに——自分の影を見つめていた。

 その影が、呪いの形をしていないことを祈りながら。



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