第191話 盾のありか ~盾が守るもの~ 後編
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◇カルマの嘆き◇
舞台裏の管理部屋。
モニタールーム内。
「って・・・また勝手に妖怪になってるのがいる――!」
モニターを確認したカルマが、頭を抱えた。
『ダンジョンマスター』の自分に断りもなく、『システム』の補助もなしで妖怪化するとはどういうことか?!
画面には、盾を持って歩き続ける少女の姿。
もう息をしてない。
でも、歩いてる。
しかも、実体のない亡霊と来た。
「みんな人間やめるのに潔すぎないか?!」
カルマの叫びに、周囲の妖怪たちがくすくす笑う。
「また一人、こっち側に来たねぇ」
「ようこそ、妖怪学園へ」
「って、また女か。やっぱ情念が深いってこと?」
カルマは額を押さえながら、ため息をついた。
「いや、違うだろ・・・! せめて『未練』とか『呪い』とか、なんか理由つけてから来いよ!」
でも、画面の中の彼女は、ただ静かに歩いていた。
理由なんて、もう必要なかった。
『歩く』ことが、彼女の『進む理由』だったから。
カルマは、肩をすくめて呟いた。
「・・・ま、いいけどさ」
そして、彼は新たなウィンドウを開いた。
そこには、こう記されていた。
《新規登録:盾持ち妖怪『盾乃ありか』》 学園祭スタンプラリー:シークレットポイント
報酬:幻の盾(※持ち帰り不可)
カルマは、妖怪たちのざわめきを背に、ニヤリと笑った。
「見つけた奴には、ちょっとだけ『守る意味』を教えてやるよ」
そして、彼はそっと画面を閉じた。
その向こうで、盾の少女は歩いていた。
その足元に、淡い光が灯る。
それは、彼女の歩みが、ようやく『名を持つ存在』として認められた証だった。
「付喪神・・・『盾哭』とでも名付けるかな」
既存の妖怪では思い当るのがいなかった。
器物妖怪だから、付喪神系ということにしよう。
◇学園祭実行委員会への誘い◇
足が、軽い。
『ダンマス』と会ってから——盾が、体も心も、軽くなった気がする。
腐ったせいで通路に落としていた『肉体』も拾ってきてくれていて、私は『亡霊から妖怪』になった。
初めてのケース・・・だそうだ。
よくわからないけど。
妖怪になったのに、「一緒に学園祭を盛りあげよう!」ってなに?
周りにいる妖怪たちも、ノリが軽すぎる。
踊るし、叫ぶし、屋台の準備までしてるし。
『人間』じゃなくなるって、気楽になるってこと?
絶対違うよね?!
そんな簡単に割り切れるわけないでしょ!
ツッコミたいことは、山ほどある。
でも——ツッコまないよ?
私が持っているのは盾。
槍じゃないんだから!
盾は、守るもの。
突くためじゃないの。
だから、私は黙って見守る。
でも、ちょっとだけ思う。
「・・・このノリ、嫌いじゃないかも」
盾を持ったまま、彼女は学園祭の通路を歩いていく。
気が付くと、どこかでなにかを支えている。
それが、今の彼女の『進む理由』だった。
退避と追跡行の脱落者=生徒6 教師9
◇
それはそうと、一つだけ、謎が残った。
「結局、呪われていたのは誰?」
ありかは首をひねり・・・屋台から流れるソースの匂いに意識を移した。
「透明な盾だと・・・隠せないよね」
たこ焼きを・・・
「呪われてたの、もしかして——」
ありかは言いかけて、たこ焼きを一つ口に放り込んだ。
「・・・ま、いっか。もう、関係ないし」
つぶやくありかの視線の先。
先輩の妖怪たちが、談笑しながら『たこ焼き』を食べる平和な光景があった。
『探索者』という『人間』だった頃にはなかった光景だ。
『妖怪』になったことが、正しいことだったように思えてしまう。
でも、それは——
「・・・それも、関係ない、よね」
哀しげに息を吐く
。
たこ焼きが、なくなっていた。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




