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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第166話 最後の10人 ~終焉へ~

2/3

 


 リーダーは、その姿を見ていた。

 そして、悟った。


 自分の中の『演説』が、もう誰にも届かないことを。


 夢を、現実が塗りつぶしている。

 名前だけの『英雄』となるはずだったカルマは、生きていて、目の前にいる。


 何より、実質的な『英雄』として凱旋するはずだった自分は、打ちひしがれている。


 もう、何もかもが届かない。


(ああ、そうか。現実的じゃないから、あの原稿は書けなかったんだ)


 何度書き直しても、しっくりこなかった。

 頭を悩ませた夜が、思い出される。


 事実ではなく、虚言だったから。

 真実ではなく、ただの願望……野望だったから。


 元が歪んでいるものを、どうにかまっすぐにしようとしていた。


『徒労』とは、こういう時に使うのか。


 英雄になれると思っていた。

 犠牲の上に、雄々しく立ち上がる『英雄』。


 だけど——


 リーダーは、わずかに口を歪めた。

 思い出す。


『犠牲を出させない、傷だらけの英雄』。


 それこそが、真に彼が夢見ていた『英雄像』だった。


 夢を諦めた『大人』の言葉に、耳を傾けすぎたのだ。


 でも——


 それを認めるわけにはいかない。


 認めた瞬間、自分が『誰かの犠牲を選んだ人間』になるから。


 だから、剣を握る。

 だから、口を閉ざす。

 だから、まだ『英雄』を演じ続ける。


 ◇レイドの終焉◇


「お、おまえ! な、仲間を?!」


 殺したのか?!

 そう責めたいのだろう。

 けれど、その言葉に込められた怒りは、どこか空虚だった。


 ようやく、自我を取り戻したリーダーが、『再起動することにした』自分を奮い立たせるように、声を荒げた。


 だが——


「先に殺しにかかったのは、そっちだろ?」


 カルマは、静かに首を振った。

 その動きは、拒絶というより、呆れに近かった。


「人を爆弾として使っておいて、被害者ぶるのはやめてくれ」


「ふ、復讐だとでもいうつもりか?!」


「それ以外あるか?」


 カルマの声は、静かで、冷たい。

 だが、その奥には、燃え尽きた怒りの残り火が、確かに揺れていた。


『ダンジョンマスター』としての職務もある。

 だが、今ここに立つ彼の心を支えているのは、それ以上に、『復讐』という名の答えだった。


「た、多数の必要は……」


「少数の必要に勝る? その言葉、オレも好きだからよく知ってるけど——無断で切り捨てられる身としては、頷けないよね」


 カルマの瞳が、リーダーを射抜く。

 その視線は、一切の揺らぎを許さない。


「正直、他人の命なんて、いくつあっても気にならないよ。おまえらだって、そうだろ?」


 ——そう。

 カルマは、自分を捨てて、仲間のために働いてきた。

 罵倒されても、役立たずと呼ばれても、それでも、支えることを選んできた。


 その『礼』が、爆弾としての死。


 納得できるはずがない。


 もしかしたら、事前に説明されて、頭を下げられていたら——納得してしまえたかもしれない。


 でも、何の相談もなく、ただ『素材』として処理された。


 恨むなというほうが、無理だ。


 せめてあの時、魔力の返還に乗せて、誰か一人でいい。

「ごめんね」「ありがとう」「さようなら」

 どれか一言でも、言葉をくれていたら。


 ——そうすれば、カルマは『復讐』を選ばなかったかもしれない。


 ただの『ダンジョン経営者』として、誰の命も奪わず、追い返すだけの存在でいられたかもしれない。


 でも、その可能性を、彼ら自身が否定した。


『復讐』は、カルマが望んだものではない。

 彼らの選択が導いた、唯一の答えだった。


 あの時、誰かが名前を呼んでくれていたら——その可能性は、確かにあった。


 カルマの脳裏に、妖怪たちの姿が浮かぶ。

 彼女たちなら、たとえ素直な言葉でなくても、何かを伝えてくれたかもしれない。


 でも、彼女たちの選択は——『沈黙』だった。


 沈黙。


 あれは拒絶じゃないと、信じたかった。

 でも、信じる理由が、もうなかった。


 いや、それは——『終わってから』だ。


 カルマは、ふと目を伏せた。

 そして、静かに顔を上げる。


 リーダーたちを見据えるその瞳には、もう迷いはなかった。


 終わらせる覚悟。


 それだけが、彼の中に、確かに残っていた。


「クソがッ!!」


 議論は、もはや平行線。

 言葉は届かない。

 ならば——と、リーダーは剣を握り直した。

 怒りと後悔を刃に変えて、カルマへと躍りかかろうとする。


 だが——


「いいのかな? 一人にして?」


 カルマが、ふと一葉に視線を向けた。

 その声は、からかうようでいて、鋭く突き刺さる。


「?!」


 リーダーの足が止まる。

 反射的に振り返る。

 その視線が、一葉の瞳とぶつかる。


 一葉の瞳が、揺れていた。

 まるで、自分が『人質』になったことを、今、ようやく理解したかのように。


 そして——リーダーは、気づいた。


 一葉ににじり寄る影の存在に。


 おかしな仮面で顔を隠したその影。

 64階層で見た、ダンジョンの『サブマスター』。


 真梨華。



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