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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第163話 最後の10人 ③ ~毒の広がるとき~ 後編

2/3

 


 ◇七人みさきの初仕事◇


 場所は、70階層・校長室(仮)。

 今は、素材保管のための仮設拠点。


 机の上には、氷片にまみれた武器の破片。

 魔力の残滓。

 そして、命の痕跡。


 六人が、その机を囲んで座っている。

 七つ目の椅子は、空席のまま。


 一影:「道の確保は問題なし。敵の配置も予測通り。素材の質は……まあまあかな」

 ナイフの刃を布で拭きながら、淡々と報告する。

 けれど、拭き取る手が、ほんの少しだけ丁寧すぎる。


 二影:「精神干渉は成功。でも、あの子……ちょっと耐性高かったかも」

 氷片を指先で転がしながら、ぼそりと呟く。

 その声は、自分の囁きが届きすぎたことへの戸惑いを含んでいた。


 三影:「守りきれたけど、四影の斬撃に合わせるタイミング、もう少し詰めたい」

 盾の表面に残った傷を見つめる。

 そこには、守れた者と守れなかった者の境界線が刻まれていた。


 四影:「え、私? ちゃんと斬ったよ? ……でも、ちょっと派手すぎた?」

 剣を肩に担ぎながら、笑う。

 けれど、その笑顔の奥に、斬った瞬間の感触がまだ残っている。


 五影:「見せ場は完璧だったでしょ? でも、氷の床はほんとに滑る~!」

 手の中にある『モノ』の髪を、くしけずっている。

 その仕草は、まるで人形遊びのように無邪気で、だからこそ不気味。


 六影:「癒しは間に合ったけど……素材の『痛み』が、ちょっと重かった」

 手のひらを見つめる。

 そこには、消えた命の温もりが、まだ残っている気がした。


 七影:空席の椅子が一つ。

 誰も触れない。

 けれど、誰かがそこに座る日を、みんなが少しだけ待っている。


 その椅子には、まだ名前のない影が宿っている。

 それは、次の素材かもしれない。

 それは、かつて拒絶された魂かもしれない。

 それは、誰かが『影になる』ことを選ぶ日への予兆。


 ◇戦場再び◇


「うんうん! いい調子だね! 順調に邪魔者が消えていくよ!」


 フラノが、氷の上で軽やかに拍手した。

 その音は、まるで誰かの死を祝福する鐘の音のように響いた。


「さすがはリーダーさん。段取りが見事だね! 素晴らしいね!」


「待望の凱旋。幼馴染も手に入れて、全部ひとり占め。万々歳だね!」


 その言葉に、空気がザワリと揺れた。

 疑念という名の風が、戦場を撫でていく。


「『目的物』を独占しようとしている者がいる」


 誰かが呟いた。

 それは、誰の口から出たのかすら曖昧なほど、自然に場に溶け込んだ。


 ——もしも、リーダーが一人で生き残るつもりだったら?

 ——もしも、サブリーダーを『排除』したのが彼だったら?

 ——もしも、一葉を手に入れるために、仲間を『減らしている』のだとしたら?


「ま、まさか……」


 その言葉が、疑念に火をつけた。

 昨日は、あんなにうまくいっていた。

 今日は、なぜこんなに崩れている?


 誰かが、仕組んだのではないか?


 疑心暗鬼の波が、静かに、しかし確実に広がっていく。



「こらこら、フラノ。それは早すぎ!」



 ヤレヤレ、とでも言いたげな声とともに、人影が、氷の帳を割って現れた。


「う……ウソ……」


 一葉が、亡霊でも見たような顔で、リーダーにしがみつく。


「やぁ! 昨日ぶり!」


 現れたのは——カルマ。


「な、なん……で?」


「やだなぁ。もちろん、『もらっていたエリクサー』で蘇生したんだよ。『予定通りに』ね」


 ウィンク。

 その仕草が、場の温度をさらに下げた。


「こいつらを亡き者にすれば、何もかも総取りできるね。まったく、欲の深い人たちだ。リーダーのフィクサーっぷりには脱帽だよ」


 ——君たちの企みだよね?

 カルマの笑顔が、疑念に『確信』という名の杭を打ち込んだ。


「て、テメェー!!」


 剣士が、怒りに任せて斬りかかった。

 その体には、魔法使いの少女が遺した『守り火』が、まだ微かに灯っていた。


 だが、それは——


 予想外。


 混乱の渦中にいたリーダーは、反応が遅れた。

 だが、『聖騎士』のスキルは、忠実に仕事を果たした。


『逆襲者』。

 自動反撃のパッシブスキル。

 本人が反応できないとき、本能のように発動する。


 ただし——味方識別機能は、ない。


 リーダーは知らなかった。

 味方に斬りかかられた経験など、なかったから。

『混乱』状態の仲間は、いつも一葉が即座に治してくれていたから。


 だから、それは必然だった。


 ズバッ。


 剣士の胸元に、リーダーの剣が突き刺さる。

 反撃は、正確だった。

 あまりにも、機械的に。


 魔法使いの少女が残した『守り火』は、彼を守れなかった。

 むしろ、彼の理性を保たせたことで、怒りを行動に変えてしまった。


 それは、呪いだったのかもしれない。


 制服が、床に落ちた。

 命の色が、氷の上に広がっていく。


 残り、6人。


「なにやってんだ?! おまえ!!」


 槍使いが、リーダーに詰め寄る。

 怒りと混乱が、彼の理性を焼き切った。


 リーダーは、何も言えなかった。

 目を見開いたまま、ただ立ち尽くしていた。


 そして——同じことが、起きた。


 制服が、重なった。

 命の色が、またひとつ、広がった。


 残り、5人。



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