表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

295/369

第155話 妖怪制作 ~火車~ 前者

3/3

 


「そうなると、当然に次は彼女、だよね」


 カルマの視線が、床に寝かされた遺体に向けられる。

 その目は、いつになく鋭く、そしてどこか遠くを見ていた。


 ──沙羅。


 Sランク相当のネームド素材。

 縫緋まといと双璧を成す存在になることが、すでに『確定』している。

 それは、カルマが『名前を覚えている』数少ない相手。

 それだけで、彼女がどれほど特別だったかがわかる。


「……火車、だな」


 その名を口にした瞬間、空気がわずかに焦げた。

 まだ何もしていないのに、周囲の温度がじわりと上がる。

 まるで、彼女の魂が、すでに炎を帯びているかのように。


 沙羅の遺体は、静かに横たわっていた。

 けれど、その姿には『死』の静けさがなかった。

 まるで、今にも跳ね起きて、誰かを睨みつけそうな気配があった。


 ◆60階層の追憶◆


「さっさと終わらせてね」

 声が耳に痛い。


 魔力補充のため、囲いのある静かな場所に呼び出されたカルマ。

 沙羅は、まるで儀式の始まりを待つ巫女のように、整えられた姿でそこにいた。


 用意の良さは『薫様』と同等かそれ以上だ。

 会うときに必要な儀礼の難解さもまた、同等かそれ以上だった。


「まずは服を脱ぐ・・・そうでしょう?」

 もちろん、『作業』として見れば、そんな必要はない。

 だけど、彼女の前でカルマは腰にタオルが『お定まり』だった。


 『脱ぐ』とはカルマのことなのだ。

 沙羅のことではない。


 『魔力を渡す』、そのためであれば沙羅の姿を整えるのは理に叶う。

 だけど、渡し手であるカルマにその理はない。


 それでも、『手伝ってあげる』と、後ろに回られた。

 ゆっくりと防備を剥がしていくカルマに、いっそ甲斐甲斐しいほど手を貸してくる。


 それは、神の前に出る前の禊のようだった。

 沙羅は『神』であり『巫女』でもある。

 自分の前に出ようというカルマを、儀式に出られるよう整えるのだ。


 俗世の穢れを脱ぎ捨て、赤子のような『無垢』を取り戻す。

 これは、そんな行為——所作だ。


「いいわね」

 『無垢』となったカルマの肩に、暖かく湿った風が当たった。

 彼女の浅く、熱を帯びた呼吸が聞こえる。


 彼女は激しく燃える炎。

 誰も寄せ付けない。

 誰も近付けない。

 性の別なくだ。


 『火の舞踊』。

 そんな集団の代表ではあるが、統治はしておらず、勝手に集まった者たちの合議に委ねている状態。

 形は似ているが、そういう意味では『薫様』とは一線を隔している。


 『薫様』が神と信者による信仰の関係だとするならば、彼女のそれは、神と巫女の神事を行うパートナーの関係性。

 神は巫女に指示はしても従えず。

 巫女は神に仕えようとも膝は折らない。

 カルマは今、神前に立つための洗礼を受けているのだった。


 沙羅にとってカルマは、感情ではなく『合理性』で選ばれた接触対象だった。

 好悪ではなく、利便性。

 それは、誰にも咎められず、誰にも干渉されない関係性。


 だからこそ、彼女はカルマに近づいた。

 他の『誰か』では代わることのできない関係性。

 それがカルマにはある。


 それが『誰』かはどうでもよい。

 自分と違う『構造』への興味。

 それが、彼女の行動理由だった。


 彼女が見ていたのは、『境界』だった。

 自分と違うもの。

 触れてはいけないもの。

 それでも、近づいてみたくなる『ナニカ』だ。


「クスクス」

 楽し気な笑い声が、カルマの輪郭をなぞって、流れ、落ちて、また浮かび上がった。

 カルマは『その時』が終わるまで、彼女が満足するまで耐えるほかない。



読了・評価。ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ