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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第145話 相翼の競演 後編

2/3

 


 ◇相翼の終章◇


 風が、舞っていた。

 二つだった渦が一つになり、風が収まる。


 その瞬間、空気が変わった。

 まるで、舞台の幕が静かに降りるように。


 廊下に残るのは、 隅に吹き寄せられた制服と、倒れた者のねじれた影。


 そして、女の影が二つ。


 白い女は、誇らしげに胸を反らして立っていた。

 長く流れる白髪が、薄光を受けて淡く輝き、その瞳は金色に燃えていた。


 頭上に浮かぶ白い羽根の輪は、まるで天に選ばれた者の証。


 黒いセーラー襟に赤いリボン。

 白の衣に結ばれた帯。

 それは、風を操る者としての誇りと、命令に忠実な『完成』の姿。


 その背に寄り添うように立つのは、黒い女。

 長い黒髪が肩に落ち、顔の半分を覆っている。

 琥珀色の瞳は、どこか遠くを見ていた。


 制服は黒。

 ただ、胸元の赤いリボンだけが、かつての『少女』の記憶を留めている。


 頭上には、黒い月桂の枝が弧を描いていた。

 それは、白い羽根の輪と対を成し、静かに夜空に溶け込んでいる。


 ふげんは、風の中心に立つ者。

 みれんは、風の影に立つ者。


 二人は、背中合わせに立っていた。


 一人は命令に従い、風を操る。

 一人は命令に逆らえず、風に削られる。


 その姿は、まるで『罪と赦し』の彫像。


 月の光が、白い女を照らし、黒い女を隠す。


 でも、どちらも——風の中に生きていた。


 妖怪『鶴女房』。

 己の羽で布を織る。

 献身の象徴。


 命令に忠実。

 完璧を支える未熟。

 強さと儚さの象徴。


 戦いが終わり。

 嵐は過ぎ去り。

 静寂が戻ってきた。


 そして、風は語らない。

 ただ、二人の影をそっと撫でて、次の物語へと吹き抜けていく。


 ◇


「風は役に立つ」

 自慢げに胸を反らす白い女。


 その言葉は、誇りか、それとも皮肉か。

 ふげんの『完璧』は、命令を遂行する力。

 風は、彼女の意志そのもの。


「そうね」

 虚ろな響きで、同意する黒い女。


 みれんの声は、まるで『風に削られた心』の残響。

 同じ風を知りながら、その意味をまったく違う角度で受け止めている。


 廊下には、風が猛威を振るった痕跡が、まるで傷跡のように刻まれていた。


 壁に走る無数のひび。

 床に散らばる破れた紙片と、焦げたように黒ずんだ床板。


 そして、制服が三つ。

 男女のものが、ねじれて横たわっていた。


 一つは、袖が裂け、中の腕が不自然な角度で折れ曲がっている。

 指先は、何かを掴もうとしたまま、空を切った形で止まっていた。


 もう一つは、胸元に深く抉れた裂け目があり、そこから滲み出た赤が、制服の白をじわじわと侵食していた。

 その赤は、すでに乾き、黒ずんだ花のように広がっている。


 最後の一つは、顔が見えなかった。

 長い髪が覆い隠していた。

 けれど、首の角度が、その者がもう起き上がらないことを物語っていた。


 風が吹き抜けたのは、ほんの一瞬だった。

 だが、その一瞬で、三つの命が、音もなく地に伏した。


 まるで、嵐の後に落ちた蝶のように。

 羽ばたくこともなく、ただ、静かに、そこにあった。



 残り、14人。



 数字が、物語の終わりを告げる鐘の音のように響く。

 風が吹くたびに、数が減る。

 でも、風は止まらない。

 なぜなら、それが『役に立つ』ということだから。



読了・評価。ありがとうございます。


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