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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第131話 昇降口 ~傘と制服と、手紙~ 前編

3/3

 


 ペタン・・・。


 足音がした。

 歩いてはいない。

 跳ねている?


 ペタン・・・。

 足音が一つ。

 片足分だ。

 跳ねている。


 ペタン・・・。

 片足で跳んで、ナニカが近づいてくる。


「い、いやな予感がするんだけど?」

 女子Aが笑うように声を揺らした。


「イヤな予感ってなんだよ!?」

 苛立ちで声を尖らせ、男子Aが訊いた。


「さっきの校門で、変な空白に入るのが『ず』で三途の川、そして雰囲気が怪談。なら、出るのは・・・お化け?」

「くッ!」

 ある程度、予想できる結論だった。

 男子Aの顔が歪む。


「バカヤロウ! お化けだとしても、ここはダンジョン。そういう形のモンスターってだけのことだ! やる事は変わらない! ビビってんじゃねぇよ!」

 リーダーの一喝。


「あ、ああ、そっか」

「お化け屋敷のお化けが人間やロボットってのと同じことだよね」

 自分を納得させようとする呟きが、あちこちで上がる。



 気持ち悪かろうが何だろうが、モンスター。

 虫型だったのが、お化けになるだけ!


 気を取り直す彼らの前に、ついに初お化けが登場する。


「なんじゃ、ありゃ?」

「カサ?」

 出てきたのは傘だった。


 パステルカラーのファンシーな傘。

 少し閉じ気味の傘が、自立している?

 浮いている?


「・・・ひィ!?」

 悲鳴が上がった。


 傘に顔が浮かび上がっていた。

 女の子だ。

 笑っている。 でも、目が笑っていない。


 その顔が、傘の布地に『染み込んでいる』ように見えた。

 そして・・・傘が開く。

 パキパキ……ギギ……と、骨が軋むような音を立てながら。


「キャァァァァァ!」

 男女の悲鳴がほとばしった。


 傘の柄。

 本来木製か金属製であろう柄が人間の手足だった。

 細くて白い、少女のような四肢。

 傘の中心から腕が生えていて、その腕が床を踏みしめる足のすねを握り締めている。


「なによ、それ—!」

 恐怖に引き攣った叫び。


「唐笠お化けか? あれは一つ目に一本足だろうが!」

 間違っている!

 指摘するのと同時に、剣士の腕が振るわれた。


 ピョン!


 傘が、軽やかに宙を舞う。

 その動きは、まるでバレリーナのように優雅で――だが、確実に殺意を帯びていた。


「【洋子ちゃんの傘。『洋傘』】だとさ!」


 鑑定持ちが苦々しく読み上げる。

 その名に、誰もが一瞬、言葉を失った。


「シュミワル!」


 女魔職Aの魔法が飛ぶ。

 炎の礫――直撃!


 パンッ!


 軽い音とともに、傘がくるりと回転しながら魔法を弾いた。


「防御型か!」


 そう思った瞬間――


 バシュッ!


『腕』から放たれた『足』が、勢いよく蹴りを放つ!


「うわっ、って当たるかよ!」


 男子Bが身をかわす。

 だが、その直後――


 ヒュンッ!


 頬をかすめる冷気。

 氷の矢。


「え?」


 見ると、傘の『手』が男子Bに向けて開かれていた。

 そこから放たれた魔法――!


「い、意外につぇえぞ。コイツ!」


 攻守のバランス。

 奇抜な見た目。

 そして、予測不能な挙動。


 最上位討伐者たちが、ついに本気になった。


 足には魔職の魔法が迫り、傘には近接職の武器が殺到する。

 傘が切り裂かれ、骨が折られる。

 手や足のようなモノは魔法に叩かれて消えた。

 登場のインパクトの割に、倒してみれば呆気ない。


 傘が切り裂かれ、骨が砕け、手足のようなものが霧のように消えていく。


「見た目はキモチワルイが勝てる敵だ。いける!」


 リーダーの声に、全員が頷いた。

 恐怖は、戦えるという確信に変わった。


 だが――


 その後も、『傘』の襲撃は続いた。



 その後も『傘』の襲撃が続いた。


 炎の槍を投げてくる『和香子ちゃんの和傘』。


 炎の槍を投げてくる『日下さんの日傘』。


 水の針を降らせる『雨宮さんの雨傘』。


 手足を折り畳んだ状態から突然開いてナイフを投げてくる『折笠さんの折りたたみ傘』。


 蝙蝠のように飛んで音波を当ててくる『小森さんのこうもり傘』だ。


 傘の種類、デザインと使う魔法属性が変わるが、対応に苦労はなかった。


 一体、また一体。

 色も形も微妙に違う傘たちが、次々と現れては倒されていく。

 だが――


 昇降口の奥。

 傘たちが、ピタリと動きを止めた。


 まるで、何かの到来を前に、静かに頭を垂れているかのように。


「……終わった?」


 誰かがそう言いかけた、その時だった。


 ギィ……ギィ……ギィ……


 奥の廊下から、何かが引きずられるような音。


 空気が、ひときわ重くなる。

 湿気が増す。視界が霞む。

 心臓の鼓動が耳に響く。


「……来るぞ」


 誰かが呟いた。

 その声すら、空間に吸い込まれていった。


 第133話 昇降口 ~傘と制


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