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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第130話 主力の到達 ~ようこそ、三途の川中学校へ~ 後編

2/3

 


「チッ! 増えてやがる」


 サブマスを追った先、下へと続く通路が口を開けていた。


 65階層――新たな領域。


「どうせ数階だろ! 追い詰めんぞ!」


 終わりは、見えている。

 見えている『はず』だ。


 その確信を胸に、通路を――駆け下りた。


 だが、彼らはまだ知らない。


 その先に待つのは、『終わり』ではなく、『始まり』だったことを。


 ◇


「な、なによ? これ?」


 通路を抜けると、そこは――


「……校門?」


 学校の入り口と思しき場所だった。


 これまで通りの土の通路から、突然『広間』へと出る。


 その広間には、奥へ繋がる通路。

 左右には、石柱が立っていた。


 そこには、こう記されていた。


『三□川中学校』


「三川中学校?」


「よく見なさい! 『三』と『川』の間に隙間があって…… 薄れててよく見えないけど。たぶん……『ず?』があるわ」


「……なら、『みかわ』ではなく――『さんずがわ』中学校、か?」


「……それ、まさか。『三途の川』なんじゃ?」


「…………」


 沈黙。

 空気が、ひときわ冷たくなる。


「と、とにかく進むぞ!」


 校門を抜けて、通路を進む。


 再び開けた場所に出た。

 そこは――



「昇降口?」

 靴箱がずらりと並んでいる様は、まさに学校の昇降口だ。


「写真で見たことあるわね。古臭い木造校舎だわ、コレ」

「ああ。廃校なら見たことある。今はレストランになっていたな。確かに雰囲気は似てる」

「田舎臭くてきらーい」

「コンクリートってのも味気ないと思うけど」

 口々にそんなことを言いつつも、ゆっくりと踏み込んでいく。


 木の廊下が続いていた。

 歩くたび、ギシギシと軋む音が、妙にリアルだ。


「この雰囲気って、アレに似てない?」

「アレってなによ?」

「お化け屋敷『学校の怪談』」

 あー、確かに。

 全員が頷く。


「管理者がサブマスになって、『属性』が変わったんじゃねぇか?」

「それだ!」

 納得して、探索が始まった。



 昭和初期かと言いたくなるような。

 モノクロの写真でしか知らない校舎の中を、本隊の残りは24人が歩いていく。


 人のいる気配がない木造の校舎。

 いたるところに『学園祭』の準備でもしているのかという飾り付けがされていた。


 昇降口に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。


 古びた木の匂い。

 湿気を含んだ埃の香りが、鼻の奥をくすぐる。

 床は艶のない板張りで、踏むたびにギシギシと軋む音が響く。


 左右の壁には、年季の入った下駄箱がずらりと並んでいた。

 木製の扉はところどころ歪み、塗装は剥げ、角が丸くなっている。

 誰かが落書きしたような跡もあるが、文字はすでに読めない。


 天井は低く、梁がむき出しになっている。

 その梁には、古い釘や紙片が残っていて、かつて何かが掲げられていたことを思わせる。


 窓は曇りガラス。

 外の光がぼんやりと差し込むだけで、空間全体が灰色に沈んでいる。


 傘立てには、誰のものとも知れない傘が数本、無造作に突っ込まれていた。

 靴箱には、サイズも形もバラバラな靴が並んでいる。

 まるで、誰かが今もここに通っているかのように。


 だが、気配はない。

 静かすぎる。

 音が吸い込まれていくような、異様な静寂が支配していた。


「逆に、キモチワルイ!」

「ただでさえ、木造ってコワいのに!」

 女子からブーイングが飛んでいた。


 舞台は、昇降口。

 お出迎えするのは――傘と靴。


 ありふれた、でも見慣れないものたち。

 その『静けさ』が、逆に不気味だった。


 傘立てには、色褪せたビニール傘が無造作に突っ込まれている。

 靴箱には、サイズも形もバラバラな靴が並んでいた。

 どれも、今にも誰かが履いて出てきそうなほど、整然としている。


 その時だった。


 ギィ……


 靴箱の奥で、一足の靴が、ゆっくりと向きを変えた。


 まるで――誰かが、そこに立っていて、履こうとしているかのように。


 誰もいないはずの空間で、『誰か』の存在が、確かに動いた。



読了・評価。ありがとうございます。


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