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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第128話 疑惑から、分断へ② 後編

3/3

 


「……せいぜい、痛い目に遭うがいいわ」


 誰にも聞かれないように、吐き捨てるように呟いた。

 レイド本隊が遠ざかっていく背中を見送りながら、B班リーダーは拳を握りしめる。


「信じられるものなんて、最初からなかったんだ――ッ!?」


 そのときだった。

 背後に、気配。


「……誰だ?」


 振り返る。

 そこに立っていたのは――死んだはずの人物だった。


「やあ、昨日ぶり」


 その声は、あまりにも自然で、あまりにも明るかった。

 まるで、何事もなかったかのように。


 だが、その瞳。

 闇色に染まった瞳が、すべてを否定していた。


「……お前、死んだはず……」


「うん、死んだよ」


 にこやかに、まるで冗談のように言う。

 その笑顔が、異様だった。


 温度がない。

 感情がない。

 ただ、形だけの『笑顔』。


「でもね、君たちが『見捨てた』おかげで、こうして戻ってこれたんだ」


「……何を言って……」


「だから、礼を言いに来たんだよ。『痛い目』って、どんなのがいいと思う? 君が望むなら、特別に見せてあげるよ」


 その瞬間、空気が変わった。


 冷たい。

 重い。

 まるで、深海に引きずり込まれるような圧。


 B班リーダーは、言葉を失った。

 目の前の『それ』は、もう人ではなかった。


 かつての仲間の姿をしているだけの、何かだった。


「さあ、始めようか。君の『痛み』から」


 笑顔のまま、影が一歩、近づいた。


 その足音は、静かで――でも、確実に『終わり』を告げていた。


 ◇


「さあ、始めようか。君の『痛み』から」


 その言葉に、空気が凍った。

 笑顔のまま近づく『影』に、B班リーダーは身を強張らせる。


 だが――


「なんてね」


 その声は、あまりにも軽かった。

 まるで、冗談のように。

 だが、頬に触れた指先は、冷たくて――生々しかった。


『影』は一歩、距離を置いた。

 そして、静かに言った。


「今回のレイドは明らかな失敗だ。企画した大人たちには、責任を取ってもらう。地上に戻ったら、学校ごと訴えよう」


 その言葉に、B班メンバーたちは息を呑んだ。


 驚愕。

 混乱。

 そして――納得。


「……確かに、限界だった」

「誰も守ってくれなかった」

「命を預けるには、あまりにも危うかった」


 一人、また一人と頷いていく。

 その表情には、怒りよりも疲れが滲んでいた。

 でも、その疲れの奥に――静かな炎が灯っていた。


「証言は揃ってる」

『影』が言う。


「記録もある。通信履歴も、映像も、全部残ってる」


「……本当に、訴えるのか?」


 B班リーダーが問う。

『影』は、にこりと笑った。


「もちろん。これは『復讐』じゃない。『清算』だよ」


 その言葉に、誰も反論しなかった。


 なぜなら、誰もが心のどこかで、この結末を――望んでいたのかもしれなかったからだ。


 ◇


「命を奪うだけが復讐ではないさ。あ、命『も』貰うけどね。ふふっ」


 63階層の『拠点』に戻ったカルマが、誰に言うでもなく、呟いた。


 死ねばそれで許される時代は、終わった。

 未来永劫、不名誉を背負うがいい。


 歴史が彼らを記憶する。

 歴史が彼らを断罪し続ける。

 それが、本当の復讐だ。


「それにしても、みんな『役者』だね」


 それぞれが、自分で自分に役を割り振って演じていた。


 ヒーロー。

 犠牲者。

 正義。

 裏切り者。

 誰もが、自分の台本だけを信じていた。


 彼ら、彼女らは気付くべきだった。

『自分たち以外』の敵意がある可能性を。


 そうしていれば、団結できた。

 絆を強められた。

 少なくとも、失うことはなかったはずだ。


 カルマに言いように踊らされることは、なかったはずだ。


 なのに――結果として、戦力を分断した。


 266人を数えたレイド遂行人員は、今や本隊24人だけとなったのだ。


 それは、カルマの『演出』が完璧だった証。


 そして、舞台はまだ終わらない。

 次の幕が、静かに上がろうとしていた。


 ◇


「で、ついに来たわけだ」


 『時』が来ていた。


「新たな劇場、仕掛け満載の舞台、多様な舞台装置。新時代の幕開けだ!」

 主力の分断に勤しんでいる間に、悠や友梨先輩が頑張ってくれて、『マナポイント』が溜まっていたので、『ダンジョンポイント』に変換。

 レベルアップした。


『『ダンジョンレベル』が70となりました。レベル70までのモンスターを作成可能です。このレベル帯のモンスターの配置位置を変更できます。また、新たに65階層から70階層までを作成可能となります』

「おお。追加できるんだ?」


『可能です。『ダンジョンポイント』を消費しての作成が可能です』

「あー、ポイントかぁ」

 と、カルマは苦笑した。


「いくら?」

『一階層に50000ポイントです』


 少な!

 レベル上げと比べるとすごい少ない。

 高レベルモンスター並みと言っていい。


「それなら気楽に作れるな」

 レベルを上げるのに百万ポイント越えだったからな。


 『ソウルポイント』もいらない。

 『マナポイント』は常時増加中。

 気楽に作っていけそうだ。


 『テーマ』は『学園祭』、『属性』は『妖怪』。ダンジョンの内装は『学校』。


「感情が転がる廊下、記憶の保存された教室、在りもしない思い出の欠片たち。廃坑になった木造校舎で行ってみよう!」

 とりあえず、5階層分を丸々学校にしてしまおうじゃないか。


「在りし日の激情、忘れ去ったはずの記憶、紡がれなかった思い出。掘り起こし、暴いて、生み出そう」

 カルマはノリノリで設計に入るのだった。



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