第128話 疑惑から、分断へ② 後編
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「……せいぜい、痛い目に遭うがいいわ」
誰にも聞かれないように、吐き捨てるように呟いた。
レイド本隊が遠ざかっていく背中を見送りながら、B班リーダーは拳を握りしめる。
「信じられるものなんて、最初からなかったんだ――ッ!?」
そのときだった。
背後に、気配。
「……誰だ?」
振り返る。
そこに立っていたのは――死んだはずの人物だった。
「やあ、昨日ぶり」
その声は、あまりにも自然で、あまりにも明るかった。
まるで、何事もなかったかのように。
だが、その瞳。
闇色に染まった瞳が、すべてを否定していた。
「……お前、死んだはず……」
「うん、死んだよ」
にこやかに、まるで冗談のように言う。
その笑顔が、異様だった。
温度がない。
感情がない。
ただ、形だけの『笑顔』。
「でもね、君たちが『見捨てた』おかげで、こうして戻ってこれたんだ」
「……何を言って……」
「だから、礼を言いに来たんだよ。『痛い目』って、どんなのがいいと思う? 君が望むなら、特別に見せてあげるよ」
その瞬間、空気が変わった。
冷たい。
重い。
まるで、深海に引きずり込まれるような圧。
B班リーダーは、言葉を失った。
目の前の『それ』は、もう人ではなかった。
かつての仲間の姿をしているだけの、何かだった。
「さあ、始めようか。君の『痛み』から」
笑顔のまま、影が一歩、近づいた。
その足音は、静かで――でも、確実に『終わり』を告げていた。
◇
「さあ、始めようか。君の『痛み』から」
その言葉に、空気が凍った。
笑顔のまま近づく『影』に、B班リーダーは身を強張らせる。
だが――
「なんてね」
その声は、あまりにも軽かった。
まるで、冗談のように。
だが、頬に触れた指先は、冷たくて――生々しかった。
『影』は一歩、距離を置いた。
そして、静かに言った。
「今回のレイドは明らかな失敗だ。企画した大人たちには、責任を取ってもらう。地上に戻ったら、学校ごと訴えよう」
その言葉に、B班メンバーたちは息を呑んだ。
驚愕。
混乱。
そして――納得。
「……確かに、限界だった」
「誰も守ってくれなかった」
「命を預けるには、あまりにも危うかった」
一人、また一人と頷いていく。
その表情には、怒りよりも疲れが滲んでいた。
でも、その疲れの奥に――静かな炎が灯っていた。
「証言は揃ってる」
『影』が言う。
「記録もある。通信履歴も、映像も、全部残ってる」
「……本当に、訴えるのか?」
B班リーダーが問う。
『影』は、にこりと笑った。
「もちろん。これは『復讐』じゃない。『清算』だよ」
その言葉に、誰も反論しなかった。
なぜなら、誰もが心のどこかで、この結末を――望んでいたのかもしれなかったからだ。
◇
「命を奪うだけが復讐ではないさ。あ、命『も』貰うけどね。ふふっ」
63階層の『拠点』に戻ったカルマが、誰に言うでもなく、呟いた。
死ねばそれで許される時代は、終わった。
未来永劫、不名誉を背負うがいい。
歴史が彼らを記憶する。
歴史が彼らを断罪し続ける。
それが、本当の復讐だ。
「それにしても、みんな『役者』だね」
それぞれが、自分で自分に役を割り振って演じていた。
ヒーロー。
犠牲者。
正義。
裏切り者。
誰もが、自分の台本だけを信じていた。
彼ら、彼女らは気付くべきだった。
『自分たち以外』の敵意がある可能性を。
そうしていれば、団結できた。
絆を強められた。
少なくとも、失うことはなかったはずだ。
カルマに言いように踊らされることは、なかったはずだ。
なのに――結果として、戦力を分断した。
266人を数えたレイド遂行人員は、今や本隊24人だけとなったのだ。
それは、カルマの『演出』が完璧だった証。
そして、舞台はまだ終わらない。
次の幕が、静かに上がろうとしていた。
◇
「で、ついに来たわけだ」
『時』が来ていた。
「新たな劇場、仕掛け満載の舞台、多様な舞台装置。新時代の幕開けだ!」
主力の分断に勤しんでいる間に、悠や友梨先輩が頑張ってくれて、『マナポイント』が溜まっていたので、『ダンジョンポイント』に変換。
レベルアップした。
『『ダンジョンレベル』が70となりました。レベル70までのモンスターを作成可能です。このレベル帯のモンスターの配置位置を変更できます。また、新たに65階層から70階層までを作成可能となります』
「おお。追加できるんだ?」
『可能です。『ダンジョンポイント』を消費しての作成が可能です』
「あー、ポイントかぁ」
と、カルマは苦笑した。
「いくら?」
『一階層に50000ポイントです』
少な!
レベル上げと比べるとすごい少ない。
高レベルモンスター並みと言っていい。
「それなら気楽に作れるな」
レベルを上げるのに百万ポイント越えだったからな。
『ソウルポイント』もいらない。
『マナポイント』は常時増加中。
気楽に作っていけそうだ。
『テーマ』は『学園祭』、『属性』は『妖怪』。ダンジョンの内装は『学校』。
「感情が転がる廊下、記憶の保存された教室、在りもしない思い出の欠片たち。廃坑になった木造校舎で行ってみよう!」
とりあえず、5階層分を丸々学校にしてしまおうじゃないか。
「在りし日の激情、忘れ去ったはずの記憶、紡がれなかった思い出。掘り起こし、暴いて、生み出そう」
カルマはノリノリで設計に入るのだった。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




