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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第126話 疑惑、そして分断へ① 後編

1/3

 


「……誰も、信用できない」


 一人になった瞬間、沙羅は小さく呟いた。

 その声は、誰にも届かない。

 でも、自分の中では――確かな響きを持っていた。


 リーダー。

 あれほど冷静で、公平だったはずの人。

 でも今は、一葉の肩を持っている。

 サブリーダーが消えた途端、態度が変わった。

 まるで、最初から一葉を守るつもりだったかのように。


「本当に、彼は中立だったの?」


 サブリーダー。

 強引で、感情的で、でも確かに隊を引っ張っていた。

 その彼女が、突然姿を消した。

 そして、裏で誰かと会っていたという噂まである。


「何を隠していたの?」


 そして――一葉。

 冷静で、理性的で、でもあまりにも『動きが早すぎる』。

 情報の流れを把握し、先手を打ち、告げ口までしてくる。

 まるで、すべてを見通しているかのように。


「彼女が……ただの『隊員』とは思えない」


 疑念が、胸の奥で渦を巻く。

 誰が本当のことを言っているのか。

 誰が、裏で何を企んでいるのか。


「私が、間違ってるの?」


 そう思いたくない。

 でも、信じていた人たちが、次々と『別の顔』を見せてくる。

 その顔が、本物なのか仮面なのか――もう、わからない。


「……なら、私も仮面をつけるしかない」


 沙羅は、静かに端末を開いた。

 そして、いくつかの連絡を始める。


 表向きは、進行確認。

 だが、その裏には――情報の網が張られていた。


 信じられないなら、確かめるしかない。

 誰が敵で、誰が味方か。


 その答えを見つけるために、彼女は――仮面をつけて、動き出した。


 ◇


「あなた、何を隠してるの?」


 沙羅の声が、静かに響いた。

 だがその静けさは――嵐の前の静けさだった。


「隠してる? それはあなたの方じゃないの?」


 一葉は、眉ひとつ動かさずに応じる。

 その声は冷たく、澄んでいた。


「私は、隊のために動いてる」


「私もよ」


「じゃあ、なぜ私の足をすくおうとしているの?」


 言葉がぶつかる。

 どちらも冷静を装いながら、内側では激流が渦巻いていた。


「B班と連絡を取っていたのは事実。でも、それを『裏切り』と決めつけるのは早計じゃない?」


「じゃあ、なぜ私を警戒するようなメッセージを流したの?」


「あなたの動きが不自然だったからよ」


「不自然に見せられていたとしたら?」


 沈黙。

 一瞬の間に、空気が張り詰める。


 そこに、リーダーが割って入った。


「やめろ。今は争っている場合じゃない」


 だが、その言葉に沙羅が噛みついた。


「あなたが一葉を特別扱いしているから、こうなってるの! 場を収めたいだけなら、引っ込んでいてちょうだい!」


「特別扱いなんてしていない」


「じゃあ、なぜ彼女の告白を信じて、私の報告を疑うの?」


 リーダーの顔が曇る。

 その隙を、一葉が補うように、静かに反撃に移る。


「私の言葉には証拠があったからよ。あなたの言葉には、ただの『警告』しかなかった」


「証拠? あなたの『涙』が証拠になるの?」


「じゃあ、あなたの『警戒心』は何の証拠になるの?」


 言葉が鋭く交差する。

 まるで刃のように、互いの信頼を切り裂いていく。


「もうやめろ!」


 リーダーの怒声が響いた。

 だが、誰も止まらない。

 疑念はすでに、言葉では止められないほど膨れ上がっていた。


「誰かが仕組んでるのよ」


「じゃあ、それは誰?」


「……あなたじゃないの?」


 その瞬間、空気が凍りついた。


 沈黙。

 呼吸すら、音を立てるのがためらわれるほどの緊張。


 疑念が、ついに――『敵意』へと変わった。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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