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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第124話 揺れる隊列(女小隊長A視点) 後編

2/3

 


 通路の奥から、足音が響いた。

 それは規則的で、迷いのない音。

 まるで、決意そのものが歩いてくるようだった。


「えっ、B班? 先行しているはずじゃ……」


 誰かが呟く。

 その声には、驚きと、わずかな警戒が混ざっていた。


 現れた彼らの姿は、傷だらけだった。

 装備は泥にまみれ、顔には疲労の色が濃い。

 だが、その目は鋭く、何かを訴えていた。


「誤解を解きに来た」


 班長が静かに言った。

 その声は、怒りではなく――確信に満ちていた。


 掲示板では、A班が目的物を独占しているという噂が広がっていた。

 だが、それはB班の報告が間違いだったということになる。

 つまり、B班が嘘をついたのではないか――という疑念。


 個人チャットにも、匿名の警告が届いていた。

「A班に関連して、何かが裏で動いている」と。

 その『裏』にいるのがB班ではないか、という声もあった。


「我々が黙っていたら、真実が歪められる」


 班長の言葉に、周囲がざわつく。

 その一言が、空気を変えた。


 B班は、抗議のために帰還した。

 目的はただ一つ――『自分たちが暗躍している』という濡れ衣を晴らすこと。


 すでに各掲示板や個人チャットでは、 存在しないA班を隠れ蓑に、B班が独自に動いているという噂が支配的になっていた。


 理由は明白だった。

 どの隊よりも、B班が『目的物』に近かったからだ。


 今回の探索の目的は、昨日倒された『ダンジョンマスター』が落としたであろう、ドロップアイテムの回収。


『ダンジョンマスター』はいない。

 ドロップアイテムは、ただ落ちているだけ。

 B班でも、取りに行ける――そう言われれば、否定は難しい。


 これを否定する唯一の方法。

 それが、この『帰還』だった。


 誰よりも『近い』ことが、疑念の根拠になるのなら。

 ならば、戻ればいい。

 本隊に任せてしまえば、疑惑は払拭される。


 それが、先駆けB班リーダーの考えだった。


 潔白を証明するために、あえて手を引く。

 それは、誇りを守るための、静かな反撃だった。


 レイドの計画そのものを無視するような、大きな決断だった。

 だが、それはやむを得ない選択だった。


 チャット内での論争と誹謗――掲示板を埋め尽くす、怒りと疑念の言葉たち。


 それらは、もはや『情報』ではなかった。

 感情を煽る火種。

 信頼を焼き尽くす炎。


 疑心暗鬼という名の闇から逃れるには、この決断しかなかった。


 だが―― その決断に至らせた、チャットと掲示板内の会話ログ。

 そのすべてが、カルマの編集室で作られたものだとは、誰も知らなかった。


 巧妙に仕組まれた『真実』。

 誰かの手で、誰かの意図で、誰かのために。


 だが、その行動が、また新たな波紋を生む。


 誰が本当に裏で糸を引いているのか。

 A班か。

 B班か。

 それとも――もっと深い闇に潜む者か。


 人心は揺れる。

 信頼は、崩れかけている。

 そして、真実はまだ――闇の中。


 もともと『真実』などないという『事実』には、誰も気付けない。


 それでも、人は信じる。

 誰かの言葉を。

 誰かの涙を。

 誰かの沈黙を。


 それが、最も恐ろしい『罠』だとも知らずに。



読了・評価。ありがとうございます。


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