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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第118話 仮面デート ~背中合わせの抱擁~ 後編

2/3

 


 ◇サブリーダー視点◇


 証拠は手に入れた。

 あとは、それを使って動くだけ。


 ……でも、私がすることは、ほとんどない。

 すべては、あの男がやってくれる。

 ええと、名前……まぁ、いいわ。

『名前』を呼ぶ機会なんてない。

 どうしても必要なら…『ナイト』とでも呼べばいい。


 続きをしましょうって、甘く囁いてあげた。

 それだけで、がむしゃらに働いてくれる。

 男って、単純で可愛い。


 あの場にいた女たちも、手伝ってくれるらしい。

 理由?


 知らないわ。

 でも、利害が一致してるなら、それでいい。

 目的なんてどうでもいいの。

 私の邪魔をしないなら、それでいいのよ。


 ……♪


 個人チャットの通知が鳴った。

 甘く響く、勝利のベル。


「また?」


 誰か別の人かと思って開くと――『城野敦』。

 ああ、そうそう。

 そんな名前だったわね。


 内容は……あの女の所業を告発する文面。

 しかも、複数のルートで、文面を変えて拡散中ですって?


 早い。

 そつがない。

 完璧。


 私にだけ、特別に報告をくれるなんて。

「そんなに私が欲しいのかしら?」


 胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。

 指先が震える。

 唇が、自然と綻ぶ。


 ああ、気持ちいい。


 誰かが私のために動いている。

 誰かが、私の望みを叶えようと必死になっている。

 その姿を想像するだけで、甘い蜜が喉を滑り落ちていくような快感。


 今日は、きっと――最高の一日になる。


 黒い欲望が、ゆっくりと満たされていく。

 この陶酔感。

 この支配の味。


 もっとちょうだい。

 もっと、私を満たして。

 あなたの手で、あの女を沈めて。


 私はただ、見ているだけでいい。

 それが、私の特権。


 ◇カルマ視点◇


「……と、彼女は思っているんだろうな」


 何代ものスマホが並ぶ机の前で、カルマは静かに、ほくそ笑んだ。


 約束通りには動いている。

 告発も、拡散も、演出も。

 彼女の望んだ通りに。


 ただ、彼女は知らない。

 気づけない。


 告発されているのは、一葉だけじゃない。

 彼女自身も、すでに『火種』として投下されている。


 絶妙な角度で影が差し、顔の見えない男との密会。

 制服の襟元がわずかに乱れ、笑顔が、媚びと欲に濡れている。

 その映像が、別のルートで、別の言葉を添えて、静かに送られていく。


「さて……最初に動くのは、どのプレーヤーかな?」


 指先でスマホの画面をなぞる。

 まるで、盤上の駒を撫でるように。

 通知が弾けるたび、誰かの心が揺れる音が聞こえる気がした。


 彼女の高揚も、

 一葉の焦燥も、すべては盤上の熱。


 それを冷やすのが、オレの役目だ。


 熱を奪い、動きを止め、感情を凍らせる。


 駒を撫でる指先に、誰も気づかない毒が宿っていた。


 それは、甘い言葉の裏に潜む『呪い』。

 それは、正義の仮面をかぶった『刃』。

 それは、誰もが気づいたときにはもう遅い、『静かな死』。


 オレはただ、盤面を整える。

 そして、最後に王を詰む。


 ◇


 その告発文を読んだ『誰か』が、手を震わせた。

 スマホを持つ指が、かすかに痙攣する。

 画面に映る文字が、視界の奥で滲んだ。


 それは、盤上の熱が、初めて誰かの心を焦がした瞬間。


 胸の奥に、じわりと広がる灼熱。

 怒りか、恐怖か、それとも裏切られた痛みか。

 感情がまだ名前を持たないまま、ただ、焼けるように疼いていた。


 指先が震える。

 でも、目は逸らせない。

 言葉が、喉に刺さる。

 心が、静かに火だるまになる。


 盤面の駒が、ついに熱を帯びた。

 最初の一手が、動き出す。



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