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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第91話 最下層の討伐者たち ~糸に絡め取られた欲望~ 後編

2/3

 


 ◇観察者(カルマ視点)◇


『お見事です。キレイに嵌りましたね』


 システムの声が、耳元で囁く。

 その口調には、確かな賞賛があった。


「ふふ・・・光栄だよ」


 カルマは、静かに笑った。

 その目は、今まさに『壊れかけている』少女たちを見つめていた。


 この部屋のギミックは、彼の設計だった。

 モンスターの創造には慣れてきたが、構造そのものを弄るのは、まだ試行錯誤の段階。

 だからこそ、この成功は格別だった。


『宝箱のアイテムと、部屋中の糸。「お客様」の選択が「邪魔な糸の消滅」でも「貴重な素材の採集」でも発動する罠。お見事でした』


「ありがとう。狙い通りだよ」


 この罠は、糸がすべて回収された『後』でなければ起動しない。

 つまり、彼女たちが『働ききった』その瞬間を狙っている。

 疲労し、油断し、報酬を目前にしたその時――最も無防備で、最も欲望に近づいた瞬間に、牙を剥く。


 宝箱を開ける。

 中のアイテムを使う。


 どちらを選んでも、罠は発動する。

 選択肢は、最初から『罠にかかる』しかなかった。


「彼女たちは、このまま放置しておこう。自力では動けないし、慌てて手を下す必要もない」


 戦力は、効率よく削るべきだ。

 まずは、自由に動ける主力から。

 拘束された者たちは、恐怖の中で腐らせる方が、ずっと『美味しい』。


「放置されたことで、ソウルポイントもたっぷりもらえるだろうしね。恐怖は、熟成させるほど味が出る」


 カルマは、それを知っていた。

 恐怖は、刹那の絶叫よりも、沈黙の中で膨らむ方が深く、濃く、甘い。

 誰にも触れられず、誰にも救われず、ただ心の奥で静かに腐っていく。


 リーダーの言葉が、耳に残っていた。


「ここは・・・ダンジョンだった・・・!」


 そう。 ここは、ダンジョン。

 生と死が、常に隣り合わせにある場所。

 そして今、彼女たちはようやく『それ』を思い出した。


 カルマは、満足げに目を細めた。

 この恐怖は、まだまだ熟していく。

 もっと深く、もっと濃く。

 やがて、絶望の果実となって、彼の手に落ちるだろう。





「さすがです」

 ふげんが、恍惚とした顔で賛辞を贈る。


 巧妙な罠、相手の欲望を巧みに利用した誘導。

 理性的で隙がない。

 まさに『完ぺき』だ。


「彼、あんなに冷たかった?」

 震えるような掠れ声で、みれんが呟く。


「私たちが、そうなるよう仕向けたのよ。裏切られて爆発したのですもの、冷たくもなるわ」

 みずほが、静かに首を振った。


 彼の変化は、自分たち全員の行動に起因している。

 何一つ、言葉をかけようがない。


「・・・・・・」

「・・・そう、ね」



 彼女たちの背後では、ついに交渉のデザイン化が始まっていた。


 ふよう・・・いや。

 その腕として作られた『腕だけ』が、美術部だったらしい。

 さらさらと、いくつかの案を掻きだし、悠が歓声を上げていた。


「目がないのに、どうしてこんなに絵が描けるのかなぁ?」

 ひろが不思議そうにしている。


「見えていても『ちゃ豚い』しか書けないあなたには、永遠にわからないわよね」

 友梨が、薄い笑いを浮かべた。


「…なんで、みんなそんなに受け入れが早いのよ」

 少し離れたところで、椅子に座った薫が頬杖をついていた。

 普通の、白い色のセーラー服に化けた彼女の『制服』が、風もないのにふわりと揺れる。


 当たり前の動作で、薫の手が抑えていた。

 彼女もまた、現状に慣れつつある。



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