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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第82話 最前線攻略者たち⑤ ~静かな崩壊、大広間にて~ 前編

2/3

 


 残り二班となった後詰は、64階層中央――『大広間』にいた。

 当初は『中ボス』がいると予想されていたが、モンスターの姿はない。

 妙に静かで、広すぎる空間。

 それは、ただの『空き部屋』にしては、どこか落ち着かない空気をまとっていた。


 本来は『サブマスター』が陣取るための部屋。

 だが、63階層に追いやられていたことで、今は無主の空間となっている――そんな事情を、彼らは知る由もない。


 後詰の役目は、主力の速やかな移動を支援するための環境づくり。

 周囲のモンスターを粗方駆逐し終えた彼らは、ここで『待機』に入っていた。

 主力が戻るまでは、することがない。


「・・・他の奴ら、遅くね?」


 ぽつりと漏れた声に、数人が顔を上げる。


「チャットも既読つかねーな」


「なにしてんのかしら・・・」


「ミスってんじゃねーだろうな?」


「全員? さすがにそれはないでしょうよ」


「・・・それも、そうか」


 最後の予想が、最も現実に近かった。

 だが、誰もそれを口にしたがらなかった。

 昨日までは、無傷で通れた階層。

 一度は攻略した場所。

『まさか』が起きるはずがない――そう思いたかった。


「Eは宝探しに夢中、Fはお昼寝かもな」


「それだ!」


「他の奴らも似たようなもんか」


「どっかで、お金になる素材の採取でもしてるんでしょ。ほんと、意地汚いんだから!」


 サイテー!

 鼻息を荒くする女子の声に、周囲が笑う。

 だが、その笑いもどこか乾いていた。

 裏返せば、「その手があったか」と悔しさが滲んでいる。


「金になる採取ポイントか・・・そういや、近くにもあったな」


「ウソ、どこ?!」


 男子D――エンタの何気ない一言に、女子B——イクヨが食いついた。

 その目には、ほんのわずかな焦りがあった。

 何かをしていないと、不安になる。

 この静けさが、妙に耳に残るから。


「ほら、あそこだよ。部屋中糸まみれの」

「は? あの部屋って奥に宝箱あるだけでしょ?!」

 それも微妙な性能のアイテムが出る宝箱だ。


 発見当初には、糸だらけの部屋がスパイ映画のワンシーンを想起させて期待されたが、まるっきりの『ハズレ』宝箱だったのだ。

 一応、何人かで何度も開けてみもした。


『レア』があるかもしれないと思ったからだ。

 なのに出るものは変わらず。

 『ハズレ』と断定された。


「あんなもん、高くなんて売れないっての!」

 ふざけてるのか!

 イクヨの目が怒りでつり上がった。


「宝箱のことじゃねーよ」

 落ち着けと宥めるように腕を振る。


「周りの糸が実は『レア』だったって話!」

「糸?」

 あの邪魔ものが?

 イクヨは不審そうだ。


「極上のナノファイバーなんだと。科宮研(科学的迷宮研究所の略)からの最新報告だそうだ。『コレ』より上質なものが作れるんだとよ」

 『コレ』と襟をつまんで見せる。


 学校指定の学生服のことだ。

 全世界共通、最上位と言われている素材で作られているダンジョン装備である。


「マジ?」

「おおマジ」

「くっ、宝箱はブラフってわけ?」

「そういうことだろ。底意地が悪いよな。ま、ダンジョンなんだから、当然と言えば当然なんだが」

 エンタが肩をすくめた。


「回収してくる!」

 シュタ!

 片手をあげ宣言する女子A。


「ショウガナイワネ、ツキアウワ」


「あ、アタシも!」


「オレモ」


「オレモ」

 便乗する者たち。


「あんたたちだけで行かせるのは不安すぎるわね」

 手を上げた者たちを見回して、腕を組むB班リーダーのヤヨイ。


「ついて行ってやれ」

 あとは任せた!

 思い切り押し付けるA班リーダーのオオタ。


「お目付け役も一緒かぁ」

 不満そうに口を尖らせるイクヨだが、拒否して止められても困るのだろう。

 いそいそと準備を始めた。

 食料などの嵩張る荷物を残して、身軽になって出かけようということだ。


「ささっと行って、とっとと帰るんだからね?!」

「・・・はーい!」

 敵はもう駆逐してある。

 その確信から、彼女らの言動は軽い。

 お目付け役とされたヤヨイであってすらも。



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