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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第81話  裏切られる巫女 ~祈りを失った者の問い~ 後編

1/3

 


「・・・ああ、そうなのね」


 その呟きは、誰にも届かなかった。

 けれど、彼には届いていたのだろう。

 予想していたのではない。

 予想されていたのだ。


 最小の犠牲で最大の戦果を。

 それが、私たちの『正義』だった。

 その正義のもとで、彼は命を捨てさせられた。


 だが、彼の魂は腐らなかった。

 怒りと憎しみと絶望が、彼を膨らませた。

 そして、彼は『神』になった。


 彼は、裏切られた魂を集めていたのだと思う。

 その中でも、志乃は特別だったに違いない。


 祈りを封じられ、未来を奪われた巫女。

 手に握らされた石は、祈りを封じるための楔。

 その光が灯った瞬間、彼女の未来は閉ざされた。


「手足が吹き飛ぶ程度の威力しかなかったんだね?」


 カルマの言葉は、彼女の力のなさを嘲るものだった。

 覚悟のなさを、暴くものだった。


 志乃は、かつて『不要な術の行使』を嫌った。

 魔力は限られていた。

 だから、無駄にしたくなかった。


 カルマの『無限魔力』は、彼女にとって羨望であり、恐怖だった。

 だから、彼を遠ざけた。

 だから、彼を見捨てた。


 そして今、私は祈りを呪いに変えられた。

 手も、足も、もういらない。

 それは、裏切られた証。

 それが、彼女が『達磨』である理由。


 流されて、流されて。

 それでも、ここに戻ってきた。


 私は、祈る者だった。

 風に願いを乗せ、剣に福を宿し、命の灯を守ろうとした。

 けれど――


 私の祈りは、裏切られた。

 私を守るはずの者たちが、私の祈りを盾にして、私を差し出した。


 そして私は、達磨になった。


 その過程で、記憶が流れ込んだ。

 私を裏切った者の顔。

 私が祈った者の死。

 そして――私の祈りが、誰かを裏切っていたこと。


 裏切りは、誰か一人の罪ではない。

 それは、恐れが形を変えただけのもの。

 私も、誰かの恐れに加担していた。


 だから、私は恨むのをやめた。

 恨みは、私に還ってくる。

 私は、自分を恨みたくない。


 代わりに、私は『淀み』になる。

 人として死に、妖怪として蘇り、ここにいる。


 生と死の境界にいる者として、領域を越える者に問いかけよう。


 ――存在を歪めてまで、何を得たいのか?

 ――それは、本当にそこまでする価値があるのか?


 本当に?


 ◇達磨として覚醒◇


 私は達磨。

 祈りを失った祈る者。

 恨みを手放した、問う者。

 そして今、静かに歩き出す。



 私は、もう人間ではない。

 祈りを捧げる巫女でもない。

 誰かのために命を軽くすることも、誰かの願いに寄り添うことも、もう、しない。


 私は知っている。

 人間は恐れる。

 恐れから逃げるために、誰かを差し出す。

 その連鎖の中で、私は裏切られた。

 でも、私はその連鎖を断ち切る。


 恨みではない。

 これは、選択だ。


 私は、人間の敵になる。

 それは復讐ではない。


 私は、祈りを呪術に変えた。

 それは、私の意志。

 誰かに命じられたものではない。

『彼』の配下として歩むのは、私が選んだ道。



 私は知っている。

 私を殺したのは、『彼』だ。

 直接ではない。

 でも、彼が命じたことではある。

 私を、ではないにしても。


 彼の怒りが、私を裏切りへ導いた。

 彼の呪いが、私の死を呼んだ。

 だから、私は彼を憎むべきだった。

 でも――


 私は、彼に惹かれてしまった。

 こんな身になってわかる。

 彼の孤独、痛み。

 私は、自分もまた裏切り者だったことを知った。


 彼は私を壊した。

 でも、私を拾ったのも彼だった。


 それは、再生。

 歪んでいて、冷たくて、でも、確かに私を『生かした』もの。


 私は、彼に恋をした。

 それは、乙女の恋ではない。

 それは、死者の恋。


 彼の孤独を知って、自分の冷たさに気付いたからのぬくもりと焦がれ。


 痛みを知った者だけが抱ける、静かで、燃えるような情熱。


 彼の孤独に触れたとき、私はようやく祈りの意味を知る。


 彼の配下になるとき、私は震えた。


 それは恐れではなく、彼の孤独に触れられる喜びだった。


 私は達磨。

 彼に殺され、彼に拾われ。

 そして今、彼の影となる。


 私は、もう祈らない。

 願わない。

 救わない。


 冷たい?

 そうかもしれない。

 でも、冷たさは、裏切られた者の最後の誇り。


 私は、もう揺れない。

 私は、もう迷わない。

 私は、ただ、問いかける。


 あなたは、なにを求めてここへ来た?

 なにを犠牲にしてでも、来なければならないほどのこと?


 答えられるのなら、実力で示せ。

 答えられないのなら、一人死んで逝け。

 誰かを裏切ることも、誰かに裏切られることもないうちに。



 私の名前は『達磨ふよう』。

 不要と呼ばれた私が、今は浮かび上がる。

 祈りの残骸として、問いかける者として。



読了・評価。ありがとうございます。


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