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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第69話 最前線攻略者たち③ ~祈りを切り落とす剣~ 中編

1/3

 


 ◇現在◇


「ああ、そうか」

 ポン! と手を打った。


「もらい損ね続けていた報酬をもらうときが来たんだな」

 彼女たちの存在が、そのまま報酬と言える。

 ダンジョンの性質上、永遠に働いてもらえるのだ。


「大丈夫。数日で何も感じなくなるさ」

 『ダンジョン属性』を『学園祭』として、モンスターを『妖怪』にする。


 虫の養殖は止めるから、負担が少なくなるのだ。

 現行の者たちよりは楽なはずだろう。


「しらゆきちゃん、作戦開始!」

「了解。静寂の幕を、今、開けます」

 雪女が、ウィンドウを叩き、虫たちを配置する。


『お客様』のおもてなしが始まった。


 もらい損ね続けていた報酬を、ようやく受け取る時が来た。

 彼女たちの存在そのものが、供物として熟しきった今——もう、誰にも止められない。


 ◇崩れる一歩◇


「この先の通路は、まだ見てなかったよね」

 アイパッド片手に、そう言ったのは後詰C班、通称『マップ埋め係』のリーダーだった。


 探知スキル持ちの小柄女子である。

 彼女の役目は係名の通り、未踏破の通路を発見・確認してマップを埋めることだ。


 有益な採取物や鉱物が見つかる可能性もある。

 マップ埋めは必要なことなのだ。


「なにか貴重なものがある予感がしますよー!」

 ニヒヒッと笑い、発見した通路へと飛び込んだ。


「待ってくださーい!」

 リーダーが探知に集中する間、壁となってもスターの相手をしていたメンバーが悲鳴を上げた。


 場所は64階層。

 E班メンバーには少々荷が重い。


 そこへもってきて、属性変化のこともある。

 だいいち、場合によっては初見のモンスターもいる。

 気が抜けない戦闘の連続だった。

 階層踏破の正規ルートから外れたところでの活動であるため、先駆けの露払いの恩恵が皆無なのだ。


「お宝さがしとなると、見境が無くなるんだから、あの子は!」

 苦労人のサブリーダーが、グチをこぼしつつ最後のモンスターを斬り伏せた。


「さっさと追いかけるわよ!」

「人使い荒い—!」

「鬼―!」

 メンバー全員が女子という珍しい構成のE班ならではの、黄色い声が飛び交うが動きは速い。

 すぐにリーダーの背中を追って走り出した。


 ◇


「おおっと。カミキリムシさんですか! 聞いてますよー。水魔法が弱点になったんですって?」

 語尾を上げ、問いかけるように言いつつ、手には水でできた魔法が用意されている。


 探知が得意な彼女だが、特化しているわけではない。

 まともに戦うこともできる。

 使える魔法は水と火。

 そのことが、彼女を救った。


「え?」

 胸元に熱い痛みが走った。

 水魔法が命中したはずなのに、カミキリムシの鋭い脚が彼女の肩をかすめ、制服の布地を裂いた。

  肩口からじわりと赤が広がる。

 熱い液体が、制服の内側を伝って肘まで垂れた。


「ちょ、ちょっと待ってよ…!」

 属性が逆になっているなら、致命的なダメージが入っているはずなのに。


「なら、こっちは?」

 同じく、手の平に火の魔法を用意。


 投げつける。

 今度もいいところへ当たった魔法がカミキリムシを消し飛ばした。


「なによ。逆じゃないじゃない!」

 聞いていた話と違う!


 憤慨したリーダーだが。

 直後に青褪めた。


「あの子たちじゃ対応しきれないかも!?」

 属性が逆になっていると聞き、対策をとった。


 カミキリムシで言えば、接敵と同時に水属性魔法の使い手が前に出て、火属性魔法の使い手は後方に下がるというものだ。

 姿を見た瞬間に苦手な属性の魔法で囲む、止めて嵌め殺す。

 それが後詰E班の戦術。


 これで確実に勝ってきた。

 事前に属性情報があること前提の戦い方だが、今回のように先行して情報集めする味方がいれば、推奨レベルに達していない彼女たちでも立ち回れる。

 荷が重くても、やっていける。


 もちろん、自分たちでも属性の変化については検証した。

 そして、事実だと確認できたから、行っている戦術だ。

 なのに、その前提は崩れた。

 属性情報が当てにならない。


「ヤバッ!」

 リーダーは道を引き返した。


 今来たばかりの通路の奥で、何かが動いていた。

 音は聞こえていない。

 ただ、空気の質が通った時と明らかに異なっている。


 通った時は感じなかった、湿ったような、腐ったような匂いが鼻をついた。

「・・・誰か、いる?」

 返事はない。

 背後から、じっとりとした視線が肌を這う。

 振り返っても、そこには何もいない。

 けれど、心臓の奥が警鐘を鳴らしていた。


 通路に響く足音が、何か違って聞こえてくる。

 なにかが、ひたひたとついてきている感覚を拭えない。


「間に合え・・・お願い、間に合って!」

  喉が焼けるように痛い。

 息が続かない。

 けれど、足は止められない。

 止まったら、何かに喰われる気がした。



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