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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第65話 誕生『縫緋まとい』~祈りを纏う者、声を縫う衣~ 後編

3/3

 


 わたしは、彼女の肌に喰いついている。

 わたしは、彼女の鼓動を飲み込んでいる。

 わたしは、彼女の歩みを縛っている。


 わたしは、胸元の憧れ。

 わたしは、袖の嫉妬。

 わたしは、裾の執着。

 わたしは、背中の怨嗟。

 わたしは、襟の呼ばれぬ名。


 わたしは、彼女の信仰。

 わたしは、彼女の呪縛。

 わたしは、彼女の力。

 わたしは、彼女の檻。


 わたしは、制服。

 でも、布ではない。


 わたしは、纏。

 わたしは、記憶。

 わたしは、遺志。

 わたしは、契約。

 わたしは、彼女そのもの。


 彼女が笑えば、わたしも笑う。

 彼女が舌を垂らせば、わたしは次の声を喰らう。

 彼女が誰かを見れば、わたしはその目を塞ぎたくなる。


 わたしは、彼女のもの。

 でも、彼女もまた、わたしのもの。

 逃げられない。

 ほどけない。切れない。


 あなたが歩くたび、わたしたちは、あなたの背中で軋んでいる。

 あなたが笑うたび、わたしたちは、あなたの胸元で泣いている。

 あなたが誰かを愛するたび、わたしたちは、あなたを締めつける。



 こうして、『薫様』の取り巻きたち『蒼の抱擁』数人から得た『シルクスキン』を縫い合わせ、 制服『蒼の抱擁学衣』——通称『蒼衣』が完成した。


 形状は、一般的なセーラー服の外観を保っている。

 長袖の上衣とプリーツスカート。

 胸元には、命の色を滲ませたリボンが結ばれている。


 だが、その素材は繊維ではない。

 崇拝によって抽出された『例布』。

 語られぬ記憶を滲ませた、垢の緋。

 それは、祈りが焼け焦げた色。


 表面には、呼吸の痕跡が開いている。

 血の記憶が、ところどころ透けて見える。

 縫合痕のようなステッチが、『繋ぎ止めた祈り』の軌跡を描いている。


 襟元と袖口には、複数の布が継ぎ接ぎされている。 それぞれが、異なる信者の“想いの断片”。 それらが交差し、重なり、一着の“意志”となった。


 胸元はV字に開き、露出は控えめ。

 だが、そこに縫い込まれた『シルクスキン』は、生者の光沢を持ち、見る者の視線を絡め取る。


 スカートの裾には、沈んだ瞳が布の奥からこちらを見ている。

 それは、『選ばれなかった者たちの遺志』が、今も見守っている証。

 複数の顔が、布地に埋め込まれるように配置されている。


 彼女の歩みを導くために。

 彼女の影となるために。


 制服は、人体の一部のような質感を持ちながら、衣服としての構造を保っている。

 着用者の動きに合わせて、皮膚のように伸縮し、光沢と陰影が生々しく変化する。


 それは、単なる衣装ではない。

 信仰と犠牲の象徴。

 そして、祈りを喰らい、記憶を縫い、存在を変質させる『契約の器』。


 その強度は、『高レベル探索者』の皮膚をも凌駕する。

 物理耐性、魔法耐性、精神耐性。

 すべてが、信仰の密度に比例して増幅される。


 なにより——


「生きているから、当然に垢が出る。それは祈りの滓。信者たちの供物。アカナメちゃんは喜ぶ。『縫緋まとい』は喰らう。すべてが繋がった。ああ、なんて滑らかなんだ」

 芝居がかった様子で、カルマが自画自賛した。


『縫緋』は、祈りの緋色を縫い合わせた証。

『まとい』は、纏う者と纏われる者の契約。


 彼女に寄り添い、担ぎ上げていた者たちが、今は彼女の皮膚となり、声となり、力となる。


 生前のおぞましく歪な形が、『妖怪』という名の存在に変換され、正される。


 そうだ。

 彼女たちは、『元から』こうだった。

 オレはただ、それを『形』にしただけ。


 祈りは、形を持ちたがる。

 信仰は、器を求める。

 そして、器は、喰らう。


 ◇


「えっと、まとい? 絵は描ける?」

 自分が『妖怪』として現世に戻されたと知って、茫然としているまといに、みどりは臆せず切り込んだ。


「・・・風景画のレッスンなら受けていたわ」

「風景画かぁ・・・」

 ちょっと違うなーっとみどりが困り顔になる。


「ちゃ豚い、を書くような子よりはましなものを書くと思うわ」

 何か、変な言い方を、真顔でするしらゆき。

 軽口や冗談なのか、真面目なのかわからず、曖昧に笑うみどり。


「・・・・・・」

 無言で、その『ちゃ豚い』を書く練習をする、ひろ。


 仲間が増えるごとに、奇妙な空気感が広がっていく。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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