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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第63話 誕生『縫緋まとい』~祈りを纏う者、声を縫う衣~ 前編

1/3

 

「これからは、君がオレに敬意を捧げるんだよ」

 顔を上げさせ、真摯に説いた。

 輝いていた神像は泥に埋もれ、歪んでいた。


 水の防壁を張っていたようだ。

 それが、派閥の女子たちによって乱されて様子がうかがえた。


 意図的に邪魔されたということではなく。

 良かれとしたフォローに足をすくわれた。

 魔力の流れの残滓が、そんな風に見えている。


『水神の流れ、信者の手を知らず』。

 そんな故事成語ができそうだ。


 かつては崇められていた彼女。

 舌を巧みに動かす彼女が、今は儀式の中で沈黙を守る側となった。

 まさに『神像』というところだ。


 さて、舌を動かすと言えば、この『妖怪』!

 もうなににするかは決まっていた。

 水に愛され、水に呪われたのが彼女だったわけだし。


垢嘗(アカナメ)』さん、である。

 夜中の風呂場に侵入して、洗い残しの垢やカビを舐めとる妖怪だ。

 一般に『赤い肌で醜い顔、長い舌で風呂桶をペロペロ嘗める』そう言われている。


 風呂場、つまりは水場の妖怪なのだ。

 水魔法がさらに得意になってくれることを期待したい!




「さーてと。今回もビジュアルにはこだわりたいよね~」

 しらゆきちゃんが素晴らしい出来だったからね!

 アイテム制作機能で、装備品も作れるのはありがたい。


「君たちにも、手伝ってもらおうかな~?」


 倒れ伏す『薫様』の取り巻きたちを見下ろしながら、 静かに、けれど確かな声で告げる。 『蒼の抱擁』。

 薫様を中心に構成された、信仰と忠誠のギルド。

 その名の通り、『抱擁』は逃れられない拘束でもあった。


『妖怪』には『指定制服』が基本衣装とする。

 これは、沢辺みどりで定めた規則。

『探索者』と同じく、制服は『役割を纏うための外殻』。


 だから、アカナメさんにも制服を着てもらう。

 ただの衣装ではない。

 祈りと記憶を縫い合わせた、儀式の布。

 それは、ただの装備ではなく、ひとつの存在。


 制服を仕立てながら思う。

 この布もまた、妖怪だ。


 縫い目の奥に、声がある。

 記憶がある。

 祈りがある。


 やっていることは、ゲームのキャラクリ。

 けれど、針を通すたびに、何かが目覚めていく気配がある。


 キャラクターには、背景が必要だ。

 それが、深みをもたらす。

 そしてこの制服は、信仰の証であり、犠牲の記録でもある。


 縫い目のひとつひとつに、かつて薫様を崇めた少女たちの『崇拝の証』が刻まれていく。


 布らしきナニカ。

 それは、物質化した想いの残滓。

 毛穴は記憶を語り、血管は祈りを流し、遺志在る者の顔が、布地に浮かび上がる。


 それは、次の犠牲者を待つ『目』。

 制服は、ただ着られるものではない。

 着る者を選び、染め、喰らい、語る存在。


 制服の繊維は、もはや通常の布ではない。

 それは、物質化した信仰と記憶の織り糸。

 祈りの残響が絡まり、想いの断片が撚られ、『着る』という行為そのものが、儀式の始まりとなる。


 着用者と融合することで、制服は目覚める。

 記憶を吸収し、縫い目が脈打ち、布が呼吸を始める。

 まるで、肌の下にもうひとつの命が宿ったかのように。


 それは、信者たちの想いが反映された証。

 祈りの温度、忠誠の重み、沈黙の痛みが、一針ごとに刻まれている。


 この制服を着る者は、もう人ではない。

 彼女は、かつて『信者』と呼ばれた少女たちの信仰を束ね、その身に纏うことで、『象徴』へと変わる。


 胸元の縫い目は、儀式のたびに増えていく。

 それは、新たな祈りが縫い込まれた証。

 制服は、記録し続ける。

 誰が、いつ、どんな想いで、誰に捧げられたのかを。


 呼吸の名残は今も健在。

 血の管のような紅の縫い目が、月光に脈打つ。

 制服の布地に浮かぶ顔は、かつて彼女を讃え、祈り尽くし、そしてそのまま『布』となった者たちの魂の残滓。


 彼女が動くたび、縫い目がささやく。

「次はどんな『想い』を縫い合わせる?」


 その制服は、崇拝の証。

 そして、永遠の契約。


 崇拝は、物質を伴って切り取られる。

 純粋な想いが、穢れに染まる前に。

 崇拝対象に近づかんとした彼女たちの意思を、『霊布』へと昇華させるために。


 それが、『シルクスキン』。

 信仰と記憶が織り込まれた、語る布。

 それは、ただの素材ではない。

 意志を持ち、選び、記録し、そして喰らう。



評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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