第50話 妖怪制作① ~雪女~ 前編
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ペーストするデータは決定した。
どんな妖怪を作るのか?
「とりあえず、山形って言うか雪国で『妖怪』と言えば決まってるよな?」
絶対に外せないトップランナーがいる。
『雪女』。
妖怪のことなんて知らない、興味ない。
そんな人でも知らないとは言わないだろう。
必要なのは当然だけど冷気を扱う能力。
氷系の魔法が得意な魔職がいいだろう。
当然に女生徒だ。
百合根友梨先輩である。
実際、悪口の部類だったけど『雪女』という二つ名を貰っていたし。
場所は『指揮所』。
彼女のものらしい血痕が乾き始めている。
「どれ、まずは肉体の取り込み。そして、人格の強調と能力抽出だ」
ポチッとな。
記憶の解析をスタートした。
彼女の最期の記憶が流れ始める。
氷のように冷たい記憶が、指先から流れ込んでくる。
最後の瞬間、彼女は誰かの名前を呼ぼうとして、声を失った。
その声は、今も指揮所の空気に凍りついている。
◆百合根友梨視点◆
上から見下ろしている。
頑張ったよね。
でも、もう生きる気力がない。
彼氏がクラスメイトの女子と抱き合って、あまつさえキスをしていた。
戦闘のさなかだ。
気持ちが盛り上がっていたのだろう。
嫉妬心。
きっとそうなんだろうと思う。
何も考えないまま指揮所を飛び降りた。
なにをしたかったのかはもうわからない。
自分が何かをするより早く、彼氏はいなくなった。
カマキリに胸を斜めに切り裂かれていた。
そして、もう一人も腰から輪切りにされている。
助けるつもりだったのかどうなのか。
私は傷口を凍らせていた。
そのおかげ?
いや、そのせいで彼女は死ななかった。
少なくとも数分は。
私は見ていた。
内臓をはみ出させて引き摺りながら這う彼女を。
ムゴイシーンだ。
なのに、私の顔には冷たい笑みが浮いていた。
自覚できていた。
心が冷たく凍てついていく。
嫉妬に駆られて裏切った彼に詰め寄ることも、人の彼氏に色目を使った女をなじることもできていない。
だから——。
笑っていた。
自分でもわかるくらい、冷たい笑みだった。
でも、止められなかった。
唇が凍って、動かなくなったわけじゃない。
心が、もう、動いていなかった。
傷口を凍らせた。
それが延命だったのか、ただの延長だったのかはわからない。
でも、彼女が這っていた時間、私はずっと見ていた。
目を逸らさず、ただ、見ていた。
そのとき、胸の奥が、少しだけ、あたたかくなった気がした。
それが、罪だったのか、快感だったのか。
もう、わからない。
茫然と突っ立っていたところを襲われた。
何もできないまま肩を噛み砕かれた。
脚先の爪が肌に食い込んでいる。
逃げるのはもう無理だ。
でも、もういいか。
生きて帰る理由、なくなっちゃった。
地上の惨劇を無感動に眺めて、目を閉じた。
肩を噛み砕かれた痛みが、遠くなっていく。
でも、冷たさだけは、ずっと残っていた。
その冷たさが、私の中に根を張っていく。
まるで、雪が降り積もるように。
そうして私は、
——『人間』をやめた。
◆
「いいね!」
お誂え向きの記憶。
しかも新鮮だ。
これを使おう。
そして、もう一つ。
まだ存在している『虫』のカタログから、一匹の虫を出す。
『雪虫』。
雪国では雪の到来を告げる虫。
・・・まぁ、有名なのは北海道だけど。
彼女、百合根友梨ちゃんの彼氏の魂を入れて作成。
もちろん入れるだけ、行動は『雪虫』が支配する。
人としての記憶も感情もあるのに、『虫』の中の牢獄に捕らわれている状態。
苦痛と絶望で魂を削るがいいさ。
生前、女生徒を少なくとも二人。
弄んでリア充を楽しんだんだろ?
せいぜい苦しむがいいよ。
昔の自分の悔しさを、少しだけ込めてみた。
オレ以外には充分に素敵な女性だった。
それなのに、他の子に目移りするとか許されない!
ふわふわの白い蝋に包まれて、まるで空から舞い降りた雪の精霊みたい。
なんてことを言っていた女子もいる。
生物の授業中にね。
中に男子の魂が入ってると知ったら、なんていうのかね?
聞いてみたい気もするが、まぁいいさ。
さぁ、この虫とセットで作り出そう。
心を凍らせた雪女を。
「完成だ」
目の前に立ち上がった『雪女』を眺めて満足の吐息を吐く。
部屋の空気が、ほんの少しだけ冷えた気がした。
まるで彼女の吐息が、空間に染み込んだように。
空気が一瞬で凍りつく。
彼女の姿が、白い霧の中から現れる。
制服の裾が風もないのに揺れ、足元には霜の花が咲く。
目を開けた彼女は、何も言わず、ただ静かに一礼した。
素晴らしい出来だった。
外観には『百合根友梨』ちゃんが残っている。
だけど、本人では決してない。
中身はモンス(モンスター)だ。
名前(: 氷室 しらゆき(ひむろ・しらゆき)
冷気を閉じ込める『氷室』と、雪の純粋さを象徴する『しらゆき』。
それは、彼女の凍った心にふさわしい名だった
衣装:学校指定のブレザー制服(リボンは赤)+氷の結晶模様が刺繍されたスカート。
腰にはストラップの振りをした白いふさふさ、『雪虫』がくっついている。
ただし、これは平時。
ダンジョン配置中はオーソドックスな『雪女』スタイル。
衣装:白い着物に霜の模様、そして手から放たれる氷の結晶。
まさに雪女の覚醒!
髪は銀白色で、毛先が霧のように揺れる。
瞳は淡い水色で、見る者の心を凍らせるような静けさを醸し出す。
うんうん。
睨まれたら『ゾクッ』てくるに違いない雰囲気がある。
この子、静かな恐怖と美しさを持ってて、ダンジョンの『静寂の教室』とかに配置したらめちゃくちゃ雰囲気出るよね!
——『静寂の教室』のコンセプトがいまいち湧かないけれど・・・。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




