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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
R15版。暴力・性的ニュアンスありバージョン

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第37話 カエル女の憂鬱◇仁科悠視点 ~後編~

7/7

 


 だから私は、数字に夢中になる。

 効率を上げるたび、報酬が近づく。

 それが、私の『生きている』証明だから。


 思うところがあるとすれば、跳ねることも、笑うことも、もう命令だってこと。


 でも——『命』を扱うことへの憂鬱だけは、まだ自分のものだった。


 それは、かつて誰かを守りたかった『私』の、数えるほどに少なくなった灯り。

 もうすぐ消えるかもしれない、小さな火種。

 それでも、まだ、ここにある。


「あれ?」


 ふと、違和感に気づいた。

 寄生下にあるモノたちが、静かになっていた。

 幼虫が巣立ったわけじゃない。

 彼女たちはまだ、寄生された者の中で、静かに成長を続けているはずだった。


 それなのに、動かない。

 本来なら、痒みで身をよじるはずの反応が、まるで止まっている。


「どしたの?」

 モンスターの再配置を終えたカルマが、私の肩越しにウィンドウをのぞき込んできた。


 近い。


 彼の体温で暖められた空気が、露出している肩を撫でていく。

 その一瞬だけで、全身が震えそうになった。


 でも、耐えた。

 今、彼を邪魔するわけにはいかない。


 私は画面を指差し、静かに言った。


「これ・・・おかしい。動きが、止まってる」


 カルマは一瞬だけ眉をひそめ、そして言った。


「それは・・・おかしいな?」


 でも、私はもう聞いていなかった。


 首筋にかかった吐息が、温かい。

 それだけで、心がざわつく。


 あと、何ポイントだったっけ。

 あと、何回、成果を出せば——


 彼の手に、触れられる?


 ◇カルマ視点◇



 どうしたんだろう?

 疑問に思った瞬間、『システム』さんが素っ気なく答えを返してきた。


『魂を使い切ったのですよ』


 それが、答えだった。


 苦痛や精神的ショックによって魂を破断し、その欠片を『ソウルポイント』として回収する。 だが、あまりに繰り返せば、魂そのものが限界まで摩耗してしまう。

 今まさに、その状態だという。


 魂が『白化』したのだと。


 感情も、感覚も、すべてを失い、漂白された魂。

 もう、苦しむこともない。

 ただ、そこに『ある』だけ。


『わかりやすく言うなら、転生時と同じです。死によって天へ還った魂が浄化され、まっさらになって再び地上に還る。その状態です』


『システム』は淡々と説明を続ける。


『ただ、普通はそれでも「人」として生きた経験があるため、高確率で「人」に転生します。救いがたい悪人の場合は粉々に砕かれ、破片一つ一つが動植物になったりもします。ですが、「白化」すると、確率はまるっきりゼロになる』


 人間には、もうなれない。

 動植物にすらなれない。


「じゃあ、どうなるんだ?」


『微生物からやり直しです』


 おお、生物としての原初からリスタートか。

 それもまた、ひとつの道か。


「次に生まれてくるときは、真人間になるんだよ」

 無垢な心で、そう語りかけた。

 いつになるかは知らないけど。


 ふと、気になって尋ねる。


「この状態でも、生きられるの?」


『普通なら不可能ですね。ですが、この場に限定するなら問題ありません。ソウルポイントはもう取れませんが、マナポイントは取り続けることが可能です』


「なら、このままだな」


 魔力供給の機能は残っている。

 それなら、まだ役に立つ。


 それにしても——


「詳しいんだね? 転生に」


「いいえ!」


 なんだか、やけに強く否定された。

 感情的になった?

 珍しい。


「でも、詳しいよね?」


「お答えできません」


 今度は取り澄ました声で、すっと流された。

 追及はムダらしい。

 今は、やめておこう。



 ともかく、機能に支障はない。

『ソウルポイント』はもう得られないが、『マナポイント』は今後も回収できる。


 機能を残しているものならば、活用する。

 それが、ダンジョンの流儀だ。



 ――さて。

『転職』会場は、どんな様子かな?


評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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