第32話 殺すのは簡単だけど(悩む ~命の使い道~ 前編
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63階層の空間内。
『蠅』と『蜂』で作った『大百足』のシルエットによる幻影戦術は1時間でバレた。
我ながらよく引き延ばしたと感心する。
そうなると、向こうもバカじゃない。
手立てを講じられてしまう。
風と水の複合技で叩き落された。
嵐で地面に叩きつけられる羽虫の最期。
無残。
まぁ、『マナポイント』は儲かったからいいんだけどね。
おかげで、『ダンジョンレベル』は30に達した。
混乱している間に『メガネウロ』でさらった人間もいる。
捕らえたその場で、元気に楽しく『保母さんや保父さん』をしている者たちも同じくらいいるだろう。
『保母さんと保父さん』と、それ用の『介護者』をいいバランスで配置するのには苦労させられた。
だか、おかげで『ソウルポイント』と『マナポイント』を効率よく得られている。
『人間』を『糧』として育った『虫』たちもすでに三世代目が『巣立ち』間近だ。
二世代目は『システム』が言っていたようにステータスが高くなっている。
三世代目は、さらに進化していると期待したい。
そんな感じなので、元気なのは100人を切った。
そのうちの魔職はかなり魔力切れ寸前。
近接職も走り回ったせいで、ちょっと足取りが重い。
朝食を喰い損ねたやつもたくさんいるみたいだし。
弱らせることには成功したと言えるだろう。
ここからどう攻めるか?
敵はこの間に、バラバラだった戦力を結集して、簡易的ではあるが防衛拠点とも言うべき野戦陣地を構築。
守りを固めている。
でも・・・。
「ハッキリ言って殺すのは簡単なんだよなぁ」
『こう(虫に皇)害』。
トノサマバッタの大群による災害のことだ。
それを再現すればいい。
通常サイズでいいから飢えたトノサマバッタを万単位で発生させてぶつければ、トノサマバッタの群れが地面を覆い、探索者たちは身動きが取れなくなる。
あるいは、戦線を維持できなくなる。
『探索者』だから、少しは耐えるかもしれないが結果は変わらないだろう。
物量作戦というのは馬鹿にできないのだ。
もちろん、これは階層全体がただの空間として存在しているこの場だから採れる手段だ。
ダンジョンの通路やルームのような狭いところでは、魔法の弾幕を張られて無効化されかねない。
それでも時間をかければ勝てる。
だから、殺すのは簡単だ。
問題は、どれだけ効率よく『使い切る』かだ
ただ、この方法だとたぶん『ダンジョンポイント』を稼がないまま全滅させてしまう。
それでは、主力に勝てない。
「楽はできないってことだな」
命を奪うのは一瞬。
でも、使い切るには、少しだけ工夫がいる。
それは、旧校舎で誰にも見られることのない『オレ』が知る、『やりくり』だった。
「『蠅』と『蜂』の残りを一纏めにして、紡錘陣へ」
3三次元ウィンドウに簡易の戦力図を展開させ、指示を出す。
「真中へ正面から突っ込め!」
できた紡錘陣を正攻法で叩きつける。
すぐさま魔法の迎撃がきた。
ただし、今度は乱雑さがない。
必要なところに必要なだけ、効率的な弾幕が張られている。
このままでは、おそらく数を増やしても同じだろう。
敵は主力の帰還を待っての長期戦を選択している。
それでも、続行だ!
「30階層までの全モンスターを63階層へ移して、波状攻撃!」
こちらの戦力は、意志を持たない『量産可能な兵器』。
損耗は、ただの数字に過ぎない。
物量で押す!
ただし、相手の防御が瓦解しない程度で。
「そのために、レベル帯を低めにしているんだ。もち堪えてくれよ?」
死者を出さず、敵の戦力を削ぐ。
それが狙いだ。
「頑張ってね。『百合根友梨』先輩!」
ウィンドウウィンドウ越しに、防戦の指揮を執る後方支援部隊部隊長さんにエールを送った。
小学生のころ、能力向上プログラムで指導役だったことがある。
教え方はキツかったが、対等に『人間として』扱ってくれた。
おそらく、カルマにとって人間扱いされた『最後』の記憶だろう。
「ま、いまさら『先輩』もないけどね」
それでも、口をついて出たのは『先輩』という呼び方だった。
あの頃の呼び方を、今も変えられないまま。
カルマは肩をすくめ、ウィンドウを閉じた。
その背中に、誰も気づかない。
彼がまだ、誰かを『人間』として見ていたことに。
評価いただけると続編を書く意欲に直結します




