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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
マイルド(全年齢)版

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妖怪図鑑

本日、マイルド版は、これ一話で終わります。

 


 本作に登場する妖怪の多くは、既存の出版物を参考にしています。

 特に「どうもこうも」や「今年も十六、来年も十六」などは、妖怪研究の第一人者・水木しげる著『日本妖怪大観』に記載されている実在の妖怪です。

 ネット上では情報が少ないため、興味のある方はぜひ原典をご覧ください。



 妖怪ランク概要(簡易版)

 ランク種類概要・例

 G蟲妖怪人間を宿主にして育った高ステータスの虫。

→ そのまま妖怪化。

 F日用品妖怪付喪神系。

→ 化け草履、雲外鏡、ポーション瓶、コンパクトなど。

 E学用品妖怪学生向けの付喪神。

→ 靴、制服、鞄、ネクタイなど。

 D装備品+虫妖怪装備と虫の融合。

→ 鎧を着た甲虫、槍を持つアリなど。

 C人体混合妖怪人体の一部+物。

→ 傘+手足で唐笠お化けなど。

 B人体(部分)妖怪手首や足首など、体の一部が動く。

→ 手形・足型など。

 A人型妖怪完全な人間ベース。

→ 個体名ありの特別製妖怪。



 妖怪例(抜粋)

 Fランク


 ホムンクルス:ポーション瓶に人型。魔法を使う。


 ミラージュミラー:コンパクトから銀の目。幻影を操る。


 Eランク


 化け靴:左右に泣き顔と怒り顔が浮かぶ靴。


 赤うねり:ネクタイが宙を舞う。


 鞄魚:鞄がエイのように飛ぶ。


 制服流し:制服だけがふわりと逃げる。


 Dランク


 蟻槍兵:槍を構えた兵士アリ。


 兜鎧:武装した甲虫。剣・弓・魔法などバリエーション豊富。


 Cランク


 唐笠お化け:傘+手足。腕が足首を握って立つ。


 洋傘・日傘・雨傘:それぞれ異なる手足と傘の組み合わせ。


 Bランク


 手形・足型:手首や足首だけで動く。ホラー系の演出に◎。


 Aランク


【ネームド妖怪】



【沢辺みどり(さわべ・みどり)

 元名:仁科悠にしな・ゆう/妖怪種:河童(カエル型)/通称:水面に映る少女


「河童でも、制服、似合うかな?」その問いは、誰に向けたものだったのだろう。かつての彼女は、明るくて、元気で、少し抜けていて。でも、誰よりも“前を向く力”を持っていた。


 迷宮の中で、彼女は変わった。水に濡れた制服、頭に浮かぶ皿、背中に背負った甲羅。それは、カエルの柔らかさと、河童の伝承が混ざり合った、新しい“水の妖怪”。けれど、彼女の笑顔は変わらなかった。むしろ、ようやく“少女”になれたように、誇らしげだった。


 カルマにとって、最初の仲間。その笑顔は、誰にも見られなかった教室の隅で、ひとりきりで夢見た“学園祭”の始まりを告げる、最初の鐘の音だった。】



【氷室しらゆき(ひむろ・しらゆき)

 元名:百合根友梨ゆりね・ゆり/妖怪種:雪女(雪虫憑き)/通称:凍てついた参謀


「助けることが、正しいとは限らない」かつての彼女は、誰よりも冷静で、誰よりも優しかった。けれど、恋人の裏切りが、彼女の心を凍らせた。感情を凍結し、判断だけを残した少女は、やがて“雪女”として再構成された。


 制服の裾に揺れる雪虫の中には、かつて愛した人の魂が眠っている。


 カルマの傍らに立つ彼女の瞳は、いつも遠くを見ている。それは、もう戻れない過去か、 それとも、凍てついた未来か。】



【園下ひろ(そのした・ひろ)

 元名:園山裕子そのやま・ゆうこ/妖怪種:テケテケ(断裂型)/通称:這い寄る誇り


「走るのが好きだった」 誰よりも速く、誰よりも高く。その足は、彼に褒められた。それが、彼女の“誇り”だった。


 けれど、戦場は残酷だった。彼を失い、視線に焼かれ、嫉妬と怒りの中で、彼女は斬られた。 ウエストで断たれ、左手を失い、腹部からは青い霧が漏れ出した。


 それでも、彼女は這った。血まみれの腕で、ヒーラーを探して。助けを求める声を上げることもなく、ただ、前へ。その執念が、彼女を“テケテケ”へと変えた。


 園下ひろ=テケテケは、制服の上半身だけを纏った少女。下半身は霧に包まれ、足はもうない。胸元に残る“誇り”は、今やただの飾り。彼女は音もなく忍び寄り、その姿を見た者の心に、“恐怖”という名の傷を刻み込む。】


【縫緋まとい(ぬいひ・まとい)

 元名:八島薫やしま・かおる/妖怪種:垢嘗アカナメ/通称:祈りを纏う者


「薫様」と呼ばれていた。美しく、気高く、冷たく、遠い。その存在は、信仰の対象だった。 祈りは服従に変わり、崇拝は制服へと縫い込まれた。


 制服『蒼の抱擁学衣=蒼衣』。それは、信者たちの“皮膚”で織られた儀式の布。胸元には祈りの残響、袖には触れた記憶、裾には忠誠の影、 背には裏切りの沈黙が縫い込まれている。


 その制服を纏った瞬間、彼女は“薫”ではなくなった。新たな名を得た。縫緋まとい。祈りの緋色を纏い、信仰と穢れを舐めとる存在へと変貌した。


 縫緋まとい=垢嘗は、セーラー服を模した異形の制服を纏う。その布は脈打ち、呼吸し、彼女の動きに合わせてうねる。長く湿った舌は、祈りの滓をなぞり、信仰の残響を味わい、力へと変える。


 彼女の存在は、信仰の果て。崇められ、縫われ、纏われた少女は、今や“制服そのもの”となり、誰かの祈りを喰らいながら、静かに微笑む。】



【稲田みずほ(いなだ・みずほ)

 元名:稲田美水穂いなだ・みずほ/妖怪種:泥田坊どろたぼう/通称:沈む守り手


「守るって、どうすればよかったんだろう」かつて、彼女は“守りの魔女”と呼ばれていた。 土を操り、拠点を築き、仲間を包み込むように守っていた。その力は、誰かのためにあった。 けれど、あの日——仲間が泥に沈むのを、ただ見ていた。声も出せず、手も伸ばせず。ただ、立ち尽くしていた。


 その瞬間から、彼女は“人”ではなくなった。守れなかった自分を許せず、その罪を抱えて、泥の中に沈んだ。


 稲田みずほ=泥田坊は、制服姿のまま泥にまみれ、背後には泥でできた“腕”が放射状に広がっている。それは、かつて彼女を守ろうとした仲間たちの残滓。今は、彼女を引きずり込もうとする手。


 足元には、巨大なウシガエルの泥塊が控えている。それは、怒りと悲しみを支える台座。泥の中から響く声は、かつての仲間が好きだった音に似ている。それを聞くたび、彼女の心は揺れる。けれど、もう戻れない。泥に沈んだその足は、二度と地を踏まない。】



【達磨ふよう(だるま・ふよう)

 元名:曽根崎志乃そねざき・しの/妖怪種:達磨(祈りの残骸)/通称:問いかける者


「祈りは、届かなかった」かつて、彼女は“戦巫女”だった。鈴の音に祈りを乗せ、仲間の命を守っていた。その祈りは、何度も戦況を覆した。だから、信じていた。祈れば、救えると。


 けれど、祈りは裏切られた。仲間に差し出され、爆裂玉を握らされ、“贄”として命を奪われた。その瞬間、祈りは封じられ、手足は吹き飛び、残されたのは、問いだけだった。


 達磨ふようは、手足を失った“問いかける者”。片目だけが空洞から覗き、その瞳は、かつての祈りの光ではなく、今は“問い”の静けさを湛えている。


 衣装は、爆裂の痕を残した白小袖。赤い袴は泥に沈み、祈りの鈴はもう鳴らない。彼女は歩かない。ただ、浮かぶ。カルマに殺され、カルマに拾われた。その痛みを知ったからこそ、 彼の孤独に触れ、彼に恋をした。


 それは、乙女の恋ではない。それは、死者の恋。痛みを知った者だけが抱ける、静かで燃えるような情熱。】



【比翼ふげん・比翼みれん(ひよく・ふげん/ひよく・みれん)

 元名:満島小夜みつしま・さよ/妖怪種:鶴女房(双魂型)/通称:風に裂かれた双影


「守るために、選んだの」風を操る魔法使いだった。その魔法『銀鶴』は、鋭く、美しく、冷たかった。彼女は、仲間を守るために風を呼んだ。けれど、最後に選んだのは、自分だった。その選択は、命を奪い、仲間を失い、そして、自分自身をも切り捨てた。


 その魂は、ふたつに裂けた。選んだ者と、選べなかった者。比翼ふげんと、比翼みれん。

 比翼ふげんは、“完璧な彼女”。 風を操り、羽根を揃え、命令に忠実。誰かを守るために、誰かを切り捨てることを恐れない。その姿は、美しく、冷たく、迷いのない“完成形”。


 比翼みれんは、“不完全な彼女”。裂けた制服、濁った瞳、削られ続ける魂。守りたかった。けれど、守れなかった。その痛みを抱え、風の影として、半歩遅れて、ふげんの背を追い続ける。


 ふたりは言葉を交わさない。けれど、風が吹くたび、羽根が揺れるたび、同じ詠唱をなぞる。 それは、選択と後悔が織りなす、ひとつの魂の、終わらない対話。】


【差傘ひより(さしかさ・ひより)

 元名:渡瀬香子わたせ・こうこ/妖怪種:唐笠お化け(未来視)/通称:選ばれた未来の観測者


「見えちゃうんだよね。選ばなかった未来が」彼女の左目には、“傘の窓”があった。雨具を身につけたときだけ開く、その窓は、未来の断片を映し出す。それは予知ではない。“選択の先にある可能性”を映す視界。


 誰かを助ければ、誰かが消える。自分が動けば、未来は変わる。でも、代償も生まれる。 それを、何度も見てきた。だから、彼女は選ばない。ただ、傘を差し続ける。選ばれた未来に、責任を持つために。


 差傘ひより=唐笠お化けは、片目に“傘の窓”を宿す妖怪。雨具を身につけることで、未来の断片を視る。その視界は、確定ではない。あくまで、“誰かが選んだかもしれない未来”。


 彼女の問いは、静かに降る雨のように、 誰かの心に染み込んでいく。「それでも、選ぶ?」 その問いに、答えられる者だけが、次の一歩を踏み出せる。】



【葉隠かすみ(はがくれ・かすみ)

 元名:葉隠霞はがくれ・かすみ/妖怪種:天狗(風雷覚醒型)/通称:孤高の風雷


「守るより、勝つ方が早いと思ってた」風と雷を操る九大魔女のひとり。その力は、誰よりも強かった。けれど、協調性はなかった。仲間よりも前に出る。誰かを守るより、自分の力を信じる。それが、彼女の“強さ”であり、“弱さ”だった。


 そして、彼女は見殺しにした。誰かを差し出すことを黙認し、その代償として、自らも“差し出される側”となった。


 葉隠かすみ=天狗は、風と雷を宿す覚醒型妖怪。胸のさらし、モスグリーンの肩掛け、紺の道中着。その姿は、時代劇の“女渡世人”のような孤高の美しさを纏う。


 雷鳴が轟くたび、彼女の瞳が光る。風が吹くたび、誰かの声が遠ざかる。彼女は、もう振り返らない。】



【童子丸らうら(どうじまる・らうら)

 元名:鈴谷涼香すずたに・すずか/妖怪種:鬼(扇動型)/通称:燃える選択の導き手


「守るために、壊した」彼女は、仲間の盾だった。筋肉質な体で前線に立ち、大剣を振るい、 恐怖を怒りに変える“扇動者”。


 その力は、仲間を鼓舞し、戦場を導いた。けれど、最後の戦場で、その炎は暴走した。怒りは制御を失い、仲間を焼き尽くした。「私は鬼になる!」その叫びは、誰かを守るためのものだった。 けれど、守れなかった。生かすために殺し、 その選択をした時点で、彼女はもう“人間”ではなかった。


 童子丸らうら=鬼は、赤銅色の肌を持つ炎の妖怪。 筋肉質な体躯に、揺らめく炎を纏い、 その瞳には、焼け焦げた記憶と、赦されない罪が宿っている。】



迷廻七影めいかいしちえい

 元名:後詰C班こうづめシーはん/妖怪種:影妖かげよう/通称:空白を埋める者たち


「私たちは、ここにいた」誰よりも早く、誰よりも深く、ダンジョンを歩いた探索者たち。 “マップ埋め係”と呼ばれた彼女たちは、その場で命を落とし、名も記録も残らなかった。けれど、存在の残り香は、迷宮に染みついていた。そして今、“迷廻七影”として再構築された。


 迷廻七影は、六人の影と、ひとつの空白で構成される。制服は色褪せ、髪は風に溶け、瞳は光を失っている。けれど、その奥には、“誰かの隣に立ちたい”という願いが、まだある。


 彼女たちは、役割を持つ。探知、囁き、守護、斬撃、囮、癒し。そして、まだ満たされぬ七影(空位)。それは、誰かの祈り、涙、喪失が満たす器。


 彼女たちは、今もダンジョンを彷徨う。七人目を探しながら、素材を集め、空白を埋める。 それは、果たせなかった“役割”を、今度こそ全うするため。影の奥で、静かに灯る、未完の誓い。】


【霜月フラノ(しもつき・ふらの)

 元名:不明(少女A)/妖怪種:氷柱女つららおんな/通称:凍った願いの名


「言いたかったのに、言えなかった」仲間と共に戦っていた少女。けれど、最後にはひとり残され、 凍てつく孤独の中で命を終えた。


 誰にも看取られず、誰にも名を呼ばれず、ただ、静かに氷の柱となって残された。けれど、彼女の魂は、まだそこにあった。謝りたかった。伝えたかった。守りたかった。その“言えなかった言葉”が、彼女を氷柱女へと変えた。


 霜月フラノ=氷柱女は、下半身が氷柱と化した妖怪。その姿は、冬の静けさと、凍てついた感情の象徴。氷の魔力を宿し、周囲の空気を凍らせる。だが、その力は攻撃のためではない。それは、“記憶を封じるための氷”。


 名を持たなかった彼女に、カルマが名を与えた。 「お前の名前は……霜月フラノだ」 その名は、霜の月に咲く、誰かの記憶の花。 凍った願いに、あたたかな輪郭を与えられた瞬間だった。】



【キャラクター紹介:韋駄天いだてん

 元名:不明(元教師・元探索者)/妖怪種:韋駄天(疾走の残響)


 かつては、“勇者”に憧れた少年だった。誰かを守るために剣を取り、誰かの涙を止めるために戦った。だが、夢は破れ、彼は教師となり、やがて“語り部”となった。生徒を導くはずが、いつしか“加害者”の列に並んでいた。

 それでも、彼は最後の瞬間に走った。守るためでも、戦うためでもなく、 “人間として死ぬ勇気”を貫くために。


 韋駄天は、装備を持たない妖怪。武器も鎧もない。ただ、走る。それが、彼のすべて。】



【焔熾サラ(ほむらおり・さら)

 元名:沙羅さら/妖怪種:火車(罪火の再燃者)/通称:燃え残る変化の使者


「燃え尽きたい。全部、焼き尽くしてしまいたい」かつて、“火の女”と呼ばれた少女がいた。 誰も近づけず、誰も触れられず、かの炎は孤高で、儀式のように美しかった。


 彼女は、燃え尽きることを恐れなかった。むしろ、燃え残ることを恐れていた。変わりたい。壊れたい。でも、変われないまま残ることが、何よりも怖かった。


 そして、彼女は死んだ。だが、炎は消えなかった。罪も、未練も、焼き尽くせなかった。だから、彼女は“焔熾サラ”として再燃した。


 焔熾サラ=火車は、炎を纏う妖怪。その姿は、かつての“火の女”を思わせるが、今はもう、演じる必要はない。


 彼女の力は、“罪火”と“再燃”。 焼き尽くすだけでなく、 燃え残ったものを再び灯す。 それは、変化の力。 それは、再構築の炎。


 彼女が燃やすのは、“変わらないもの”。 彼女が守るのは、“変わり続けるもの”。その炎は、誰かの心に火を灯し、そして、静かに燃え続ける。】



【夜羽まゆり(よは・まゆり)

 元名:真梨華まりか/妖怪種:女郎蜘蛛(三重人格型)/通称:愛に絡め取られた繭


「愛してた。だから、壊した」レイドのサブリーダーだった彼女は、冷静で有能だった。 けれど、その内に秘めた想いは、愛と欲望と執着という名の毒だった。


 彼の隣に立ちたくて、自分を削った。それでも届かず、ついに手をかけた。壊したのは、彼。壊れたのは、自分。そして、壊れたまま、彼女は艶やかな女郎蜘蛛へと変わった。


 右肩の“糸”は誘惑を、左肩の“毒”は狂気を囁く。けれど、中心にいる“真梨華”だけは、今も静かに、カルマの背を見つめている。】



【鏡夜えいり(きょうや・えいり)

 元名:不明(女教師)/妖怪種:雲外鏡(記憶映し)/通称:記憶の案内人


「私って、どんな人間だったっけ?」かつて、彼女は“マザーコンピューター”と呼ばれていた。冷静沈着な分析力で仲間を導き、探索者としての役割を果たしていた。


 けれど、引退した瞬間、 誰も彼女を見なくなった。鏡に映る自分が、自分に見えなくなった。誰かの目に映る“私”がなければ、 自分を保てなかった。

 だから、彼女は“鏡”になった。


 鏡夜えいり=雲外鏡は、制服姿のまま、占いの館に座る妖怪。整えられた教師のような姿。 だが、襟を少し崩したショルダーオフの制服は、“整えすぎないことで自分を保つ”という、 彼女の新たな在り方を象徴している。


 彼女の力は、“記憶の映写”。鏡に触れた者の記憶を映し出し、その奥にある“本当の問い”を浮かび上がらせる。「あなたは、誰の目に映る自分を信じてるの?」】



【薬師堂ここも(やくしどう・ここも)

 元名:石清水一葉いわしみず・かずは/妖怪種:どうもこうも(痛みのけじめ妖怪)/通称:再生の薬師


「誰も裁かなかった。だから、自分で裁いた」かつて、彼女は命を救う薬“エリクサー”を作っていた。けれど、その薬を裏で横流しし、命を“商品”に変えた。誰にも責められず、誰にも止められなかった。

 だから、自分でけじめをつけた。再生する肉体に、残る痛みを刻みながら。それが、彼女の“罰”であり、“誇り”だった。


 姿と構成 薬師堂ここも=どうもこうもは、瞬時に肉体を癒す力を持つ。けれど、痛みだけは消えない。その痛みを受け入れることで、他者の傷にも寄り添える。


 名付けの由来 “どうもこうも”—— 昔の名医同士が互いの頭を切り合い、結局どうもこうもならなかったという戒めの伝承。


 “薬師堂ここも”—— 薬師如来の名を借り、“ここも”と気づかない傷まで癒す者。

 彼女の癒しは、痛みと共にある。それでも、誰かの命を繋ぐために、今日も薬を煎じる。】



【たこ焼き屋の店主(仮名:未定)

 元名:不明(元教師)/妖怪種:未分類(人間性の再燃型)/通称:夢を焼く者


「たこ焼き屋さん……かな」それは、誰にも言ったことのない夢だった。探索者として、教師として、罪を重ね、袋小路に立ち尽くした彼が、ふと口にした、忘れていた“夢”。

 夢なんてなかった。選択肢なんてなかった。でも、あの一言が、彼の中の“人間性”を再燃させた。


 たこ焼き屋の店主は、学ラン姿にねじり鉢巻き。青い肌に小さな角。背中には、たこ焼きの煙を吸って膨らむ小さな袋。それでも、笑顔は人間以上に温かい。】



【盾乃ありか(たての・ありか)

 元名:不明(通称:盾の少女)/妖怪種:盾哭(付喪神系))/通称:見えない支え


「誰にも見られなくても、私はここにいる」かつて、彼女は誰かの背中を守るために盾を持った。けれど、仲間に誤解され、教師にも見捨てられ、袋小路で一人、毒に蝕まれながら歩き続けた。


 誰にも見られず、誰にも気づかれず、それでも“歩く理由”を手放さなかった。


 姿と構成 盾乃ありか=透明盾は、半透明の身体を持つ妖怪。その姿は、まるで“見えない盾”のように、そっと誰かの背中に寄り添う。】



【箱入りつむぎ(はこいり・つむぎ)

 元名:不明(糸の部屋の少女)/妖怪種:ブンブン箱(糸車の守り手)/通称:繕いの繭


「私が、焦ったから。私が、巻き込んだから」ミミックの罠にかかり、誰にも助けられずに命を落とした少女。それは、誰のせいでもなかった。けれど、彼女は自分を責めた。


 最後に見たのは、仲間の“動けない”瞳。その後悔が、呪いとなった。でも、それは“守るための呪い”。 閉じ込めることで、守る。捕らえることで、失わせない。


 箱入りつむぎ=ブンブン箱は、制服姿のまま、糸車を抱えた少女妖怪。箱の中に糸を仕舞い、時折それを取り出して紡ぐ。誰かの袖のほころびを見つけて、そっと繕う。それが、彼女に残された“手”の意味。


 名付けの由来 “ブンブン箱”——糸車の音と、箱の中で生まれた命の残響。 “箱入りつむぎ”は、“閉じ込められた少女”と、“紡ぎ続ける者”の二重の意味を持つ。


「今年は十六、来年も十六」止まった時間の中で、彼女は唄う。忘れられた声が、風に乗って、誰かの心に届くように。】



【幅借かいな(はばかり・かいな)&幅借いきむ(はばかり・いきむ)

 元名:不明(双子の探索者)/妖怪種:憚りの双妖怪(排出と再定義の象徴)/通称:優しさのかたちをした問いかけ者たち


「あなたは、どんな言葉で誰の心を撫でますか?」その問いは、誰かのためであり、自分自身への問いでもあった。かつての彼女たちは、明るくて、奔放で、刺激に依存していた。壊れかけた精神を“元気”で覆い隠しながら、迷宮を笑って歩いていた。


 けれど、糞球に押し込まれた瞬間、人格は崩れた。残ったのは、理性的なだけの空っぽな双子。優しさを模倣した手。励ましをなぞった声。それは、誰かの痛みを引き出し、心を崩す力になっていた。


 妹・かいなは、濡れた手で“痛み”を引き出す。姉・いきむは、励ましの声で“価値観”を揺らす。ふたりの力は、“優しさのかたちをした破壊”。それは、迷宮にとって必要な“再定義”の力だった。


 彼女たちは、今日も通路を歩いている。誰かの痛みに触れ、誰かの心に声をかけながら。それは、再誕の前に必要な儀式。】



【語りの灯たち(青行灯と四つの灯)

 元名:旧先駆けB班&糸部屋組の生き残りたち/妖怪種:青行灯とその従灯(記憶の継承者)/通称:語りの導き手たち


「語りは終わった。けれど、語りは始まった」 かつては、ただの探索者だった。 逃げ惑い、迷い、失い、語り、そして歩いた。 その語りは、怪談ではなかった。 でも、怪異よりも深く、痛みよりも静かに、迷宮を染めていった。


 個別の灯たち


 青行灯(旧B班リーダー):語りの終わりを担い、始まりを導く者。選ばず、背負わず、ただ“進む”ことで導く。その青い灯は、記憶の道しるべ。


 天邪鬼(逆さ言葉の子):言葉と心がすれ違う少女。逆さ言葉の呪いが、彼女を妖怪へと変えた。


 二口女(沈黙の子):助けを求める声を聞きながらも動けなかった少女。背後の“もう一つの口”が、語れなかった声を囁く。


 油取り(冷静な子):理性の仮面をかぶりながら、内側から滲み出る“油”を集める者。


 座敷童(年少の子):記憶の中に生きる者。誰かの手を今も感じながら、未来へと歩く。】



姑獲鳥うぶめ

 元名:不明(カルマの母)/妖怪種:姑獲鳥(記憶の母)/通称:命の受け渡し者


「私、あなたに戻れたらよかったのに」かつて、子を産み、育てることができなかった女。 酒に逃げ、罪を数え、記憶の中で何度も“あの日”を繰り返していた。旧校舎の体育館裏——そこは、彼女の“後悔”が眠る場所だった。


 けれど、記憶の風が吹いた。幻影が現れ、過去が再生される。それは、命を授かった喜びと、別れの記憶。そして、若き日の自分との対話。


 その言葉が、風を呼び、記憶を揺らした。そして、彼女は“母”としての記憶を、もう一度受け取った。】




明日からは同じ時間に新章『駆馬からカルマへ――とある少年の変質――』を投稿します。

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