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『使い捨てられた補助スキル持ち、迷宮の主になって制服妖怪と学園祭を始める』  作者: 葉月奈津・男
マイルド(全年齢)版

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第110話 幕間 ~あるかもしれない『二部』へ向けて~

2/3

 


「はい! まずは制服を変えたいです!」


 元気に手を挙げたのは、妖怪『河童=沢辺みどり』。

 かつて探索者だった仁科悠。

 妖怪化の原点ともいえる存在だった。


「制服?」

 赤いネクタイのセーラー服姿を見下ろしながら、妖怪『雪女=氷室しらゆき』が首を傾げる。

 その声は冷静でありながら、どこか柔らかかった。


「『あの』学校の制服ってのが気に入らないわけだ?」

 妖怪『テケテケ=園下ひろ』が、テーブルの下で自分の足を撫でながら呟く。

 人間に化けた姿では、確かに『足がある』。

 それを何度も確かめていた。


「わからなくはないわね」

 妖怪『火車=焔熾サラ』が頷く。

 制服の話題に、炎のような情熱を灯す。


「賛成! 大賛成よ! 地味すぎるものね!」

 妖怪『雲外鏡=鏡夜えいり』が肩を出したショルオフスタイルで声を上げる。

 その姿は、舞台の女優のように艶やかだった。


「じゃあ、どうするの? ブレザー? お嬢様学校風とか?」

 妖怪『唐笠お化け=差傘ひより』が笑いながら提案する。

 ポニーテールの髪には、小さな傘のチャームが揺れていた。


「制服か・・・」

 妖怪『天狗=葉隠かすみ』は、袴に慣れた足取りで歩いて見せる。

 木の床を踏む下駄の音が、心地よく響いていた。

 そんな彼女からすると、セーラーもブレザーも、実は気が進まないものなのだった。


「何か腹案があってのことなのかしら?」

 妖怪『鶴女房=満島小夜』が、カルマに視線を投げる。

 藤色と薄桃の袴を揃えたふげんとみれんは、二人で一つの存在を静かに示していた。


 妖怪化しているときとは逆に、未練が主導して、ふげんが付き従う形になっている。

 知らない人が見れば、活発な妹が、引っ込み思案な姉を連れ歩いている。

 そんな双子姉妹に見えるだろう。


「ある」

 カルマと駆馬が同時に頷いた。

 ふたりの声が重なった瞬間、教室の空気がふっと和らいだ。

 まるで、ひとつの魂がふたつの口を通して語ったように——。


「ダンジョンが旧校舎をモチーフにしている」

「だから、制服も時代をさかのぼって古くする」

「ズバリ、大正ロマン! 和洋折衷の女学生制服とします!」


 その宣言に、妖怪たちの視線が生暖かくなる。

 以前のカルマでは考えられなかった『人間らしさ』が、今の彼にはあった。


「それなら、もっと早く変えてもよかったんじゃないの?」

 妖怪『達磨=曽根埼志乃』が静かに問いかける。

 朱色の巫女風袴に金の刺繍を施した姿は、厳かでありながら柔らかかった。


「君たちが君たちだと、主力たちに知らしめたかったからね」

「気づかせるのに制服は有効」

「だから、『終わる』までは変えられなかった」

「すべて終わった今だからこその、新制服だよ」


 その言葉に、妖怪たちは頷いた。

 それぞれの装いは、仮縫いながらも個性に満ちていた。



 それぞれ、空き教室で着替え、戻ってくる。

 黄色い声があちらこちらで上がった。


「うわぁ〜!みどりちゃん、それ似合いすぎじゃない!?」

 ひよりがぱっと駆け寄って、沢辺みどりの袴の裾をひらりと持ち上げた。


「深緑に波模様って、まさに河童! って感じだよ〜。その水皿の髪飾りもかわいい〜!」

「えへへ、ありがと〜! ちょっと重いけど、気に入ってるんだ〜」

 みどりは三つ編みを揺らしながら、帯をちょっと直して照れ笑い。


「水辺の記憶を、ちょっとだけ忍ばせてみたの」


「・・・私は、どうかしら」

 しらゆきが静かに立ち上がると、白から水色へと移ろう袴がふわりと広がった。


「雪の結晶、刺繍してもらったの。氷の簪も、髪の奥に隠してるのよ」

 その姿は、まるで冬の精霊のようだった。


「ううん、すごく綺麗。氷の精霊みたい」

 ふげんが微笑むと、みれんが「ちょっと寒そうだけどね」と小声で付け加える。


 ふたりの袴は藤色と薄桃。

 鶴の羽根を模した髪飾りが、静かに揃って揺れていた。


「見て見て、私のもなかなかでしょ?」

 ひろがくるりと回って、黒と赤の袴をひらめかせる。


「足、ちゃんとあるんだからね! 編み上げブーツも履けるんだから!」


「・・・それ、何回目の確認?」

 えいりが肩で笑いながら、紫のシルクブラウスの袖を整える。


「私はね、舞台女優風の装い。黒の袴にショールを合わせて、大人っぽくしてみたの。深紅の口紅もポイントよ」

「うわ〜、えいりさん、ほんとに大人の色気って感じ・・・」

 つむぎがぽそっと呟きながら、自分の淡い桃色の袴の裾をそっと撫でた。


「私は、糸車の模様を入れてもらったの。背中には小さな箱のポーチもついてて・・・ちょっと恥ずかしいけど、気に入ってる」

「つむぎちゃん、すっごく似合ってるよ!」

 ここもが優しく微笑みながら、灰青の袴の帯に吊るした小瓶を揺らす。


「私は薬師っぽく。白い上着に薬草の刺繍を入れてもらったの。包帯リボンは・・・ちょっと目立ちすぎたかな?」


「いや、それが『らしさ』ってやつだろ」

 サラが低く笑いながら、紅蓮の袴を翻す。


「焦げ模様、ちゃんと入れてもらった。墨色のブラウスに金糸の炎刺繍。火打石のチャームもつけてる。燃え残りの証、ってやつ」

「サラさん、かっこいい・・・」

 みどりがぽつりと呟くと、サラは少しだけ目を細めて笑った。


「私は、これ」

 まといが濃紺のセーラー風の上着をきゅっと引き寄せる。


「緋色の袴に、縫い目模様の刺繍。背中には信者の祈りを象った布飾り。制服というより儀式着だけど・・・制服のつもりなの」


「まといちゃん、それはもう『制服』っていうより『神事』だよ」

 ひよりが笑いながら、傘柄の帯をくるりと見せる。


「私はね、明るい黄色の袴に傘モチーフでまとめてみたの! ポニーテールに小さな傘のチャームもつけてるんだ〜」


「・・・泥の模様って、やっぱり変かな」

 みずほがそっと呟く。

 くすんだ茶色の袴に、淡い緑の上着。


「裾には水草の刺繍。腰には泥団子の香袋。・・・でも、これが私だから。泥の中でも、ちゃんと立っていたいの」

「変じゃないよ。すごく、優しい色だと思う」

 ここもがそっと声をかけると、みずほは少しだけ目を細めて頷いた。


「ふようさんのは・・・なんか、すごい」

 みどりが目を丸くする。

 白いブラウスに深紅の袴、袖には達磨の目の刺繍。

 片袖だけ長くて、祈りの布のように揺れていた。


「これは『祈り』よ。制服でもあるけど、私の『形』でもあるの」

 ふようは静かに言いながら、首元の鈴をそっと鳴らした。


「・・・で、まゆりは?」

 かすみが問いかけると、まゆりはすっと立ち上がった。

 黒のレース入りブラウスに、深紫の袴。裾には蜘蛛の糸模様が絡み、肩には小さな蜘蛛の刺繍。

 左右の髪には『糸』と『毒』を象ったピンが光っていた。


 二匹の蜘蛛が、肩と腰でじっとしている。

『ストラップです!』と。


「ふふ、どうかしら? ちょっと舞台っぽくしてみたの」

「・・・誰を絡め取る気だ」

 サラがぼそっと呟くと、まゆりはにっこりと微笑んだ。


「さあ、誰かしらね?」

 笑い声が、ふわりと広がる。

 それぞれの制服が、それぞれの『今』を映していた。


「わたしたちは・・・」

「派手なのはちょっと・・・」

 迷廻七影の二人が、他の者たちから少し距離を置いて立っていた。

 七人で『一人』という感覚がある彼女たちにとって、『個性』は重すぎる。


「だよねぇ」

「だから、これがあるんでしょ?」

「一般用標準制服・・・、ね」

 その視線の先には、仮縫いの標準制服が並んでいた。


評価いただけると続編を書く意欲に直結します


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