Episode:18 血に塗れた黒曜級2
――シェラ
あれから数日経った頃のことだ、いつも通り依頼を受け、達成報告のためにギルドに戻り、報酬についての内容を受付嬢と話している時だった。
一人の一般人の男が血相を変えてギルドの扉を開けた。
「なんだ?」
俺は小さく呟きながら入り口を見る。
その後に飛び込んできた内容は、衝撃的な物だった。
「アーガスさんが、死んじまった!」
ギルド内に一瞬の静寂が流れる。
そして、刹那のうちに騒がしくなった。
「どこで死んだ!? 理由は!?」
冒険者の一人がそう叫び、男にジリジリと距離を詰めながら話す。
「多分、自分で……」
一般人は目を泳がせながらそう話す。
その言葉に、俺は目を見開いた。
「報酬を早く出してくれ」
俺は無意識のうちにそう、受付嬢に話していた。
「はい?」
「早く出してくれ!」
俺の声に受付嬢の体が跳ね、ぎこちない動きで報酬を袋に詰めていく。
乱雑に置かれた袋からは金属音が響き、俺はそれを受け取る。
「すまん、助かる」
そう話して、俺は慌てふためく男のもとに足を運んだ。
「おい」
この、時俺は、どんな表情をしていたのか、どんな目をしていたのかはわからない。
だが、俺の顔をみた男の顔は、恐怖に染まっていく。
「詳しく聞かせろ」
「あ……。詳しくも何も、俺だってわからねぇ! 最近姿を見ねぇと思ってたら、死んじまってたんだ!」
男はそう叫ぶ。
嘘をついている様子はない。
「案内しろ」
「あ、あぁ! わかった!」
男は怪訝そうな顔をしたが、すぐに頷いた。
銅等級の冒険者が、黒曜金級に用があるのか。
面識があるのか。
興味と、怪しい者を見る目……俺はそれに気がついていたが、無視をした。
しばらく歩くと、小さな宿に着く。
すでに見物の者たちが玄関や窓から中を覗こうと集まっていた。
「ここだ、ここなんだ!」
男の言葉を聞き、俺は人混みを掻き分ける。
「なんだ、お前! 押すな!」
後に来た俺が、人混みを掻き分け先に入ろうとするのが気に食わないのか、周囲から野次が飛ぶ。
今は、それどころではないはずだ。
「黙れ、殺すぞ」
気がついたら、そう呟いていた。
苦い顔をした周囲は道を開く。
一般人は、冒険者には勝てない。
ギルドに苦情が行くだろう、横柄な冒険者がいると、だが、今はそんなことどうでも良かった。
宿の玄関まで行くと、衛兵に止められる。
「悪いが、立ち入り禁止だ」
そう話した衛兵を睨み、俺は等級章を見せた。
「――冒険者だ」
「冒険者……。失礼しました。お入りください」
衛兵の許可をもらい、二階に上がる。
一段一段が、やけに高く、足が重く感じた。
そして、問題の現場を見る。
角の一室、扉の外まで血が流れた痕跡。
木造の床には、血が染み込み、痕が残っている。
そして、部屋の真ん中には、いまだにアーガスの遺体が残っていた。
椅子に座ったまま、目を瞑っている。
俺は近づき、アーガスを見つめた。
「……また会ったな。話、聞かせてくれよ」
静寂が包む部屋の中、俺の呟きに返答はない。
もう話さなくなった彼を見つめ、静かにため息を漏らした。




