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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

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Episode:16 何も持たぬ者

 ――シェラ


 俺は、王都より遥かに遠い村の生まれだ。

 小さい頃はよく水辺で遊び、笑い合っていた。

 どこにでもいる蜥蜴人(リザードマン)だ。


 王都とは別の街で、冒険者になった。

 理由は特にない、本当に、ただ興味があった。

 俺は飽き性で、挫折癖がある。

 少ししくじれば、あぁもう嫌だと、全てを投げ出していた。

 だから、いっそのこと次がない冒険者を選んだ。

 しくじればそこで終わり。

 簡単に死んじまう。

 だからこそ、失敗が許されない。

 そんな状況下で生きていくのが、俺には合っている気がした。


 小鬼(ゴブリン)を殺し、金を集め、装備を揃え、また別の魔物を狩る。

 そんな日を、何日と繰り返した。

 首からぶら下げた銅等級の等級章の色は変わらず、変わらない日々を送っていたが、それだけでも幸せだった。

 命を賭けた職業だからこそ、生きていると言うありがたさと実感が沸く、俺はその体に染み渡る様な感覚に酔っていた。


 だが、飽きは来るもんで、変化を求めて王都を訪れた。

 多種多様な種族に、魔力の香り。

 一人一人が違う生き方をしている、その事実を肌に感じながら、依頼を受け、金をもらう。

 

 そんな時だった。

 依頼書を雑嚢に押し込みながら、街を歩いていると、黒髪の男がものすごい剣幕で俺の装備を掴んだ。


「あ、君!なぁ、君! 助けてくれ、頼む!」


 男はそう話し、俺を見つめる。

 俺の装備を掴み、揺らし、彼は人目も気にせずに叫んだ。


「俺について来てくれ! あんたを鍛えられる、黒曜金級なんてすぐだ、手伝ってくれ!」


 彼はそう言った。

 自信のある声、話し方。

 本能では、彼の言っていることは嘘ではないとわかっていた。

 だが、それが逆に異常なまでの疑いを産む。


 俺は彼の腕を掴み、振り解こうとするが、いくら力をこめてもできなかった。


「――っ! 何言ってんのかわかんねぇんだよ!」


 俺はそう言いながら、渾身の力で彼の胸を押した。

 装備が指から滑り、彼は離れる。

 胸元に手を当てながら、彼は俺を睨んだ。


「――俺の名前はアーガス・ティルデ! 世界は、何度も繰り返されている!」


 アーガスと名乗った男は確かにそう話した。

 瞳に宿る光には、嘘偽りがない。

 だからこそ、俺は恐怖した。

 世界が繰り返されているなど、天地がひっくり返ってもあり得ない、だが、アーガスは信じていたのだ。


「っな……。――何言ってんのかわかんねぇんだよ! オメェ、イカれてんのか!」


「シェラ! 君は、強くなれる、前回も、その前もそうだったんだ!」


 アーガスは俺を見つめながら、捲し立てた。


「なんの話だ、俺様はオメェをしらねぇ!」


 俺がそう答えると、彼は苦い顔をした。

 そして、何かが爆発する様に叫び出した。


「なんで、なんで覚えてないんだ! 君は、何回も俺と旅をしている! なんで、ただの一つも残っていないんだよ!」


 アーガスはそう話し、息を切らしていた。

 その顔は、苦痛と、苦悩と、絶望が溢れていた。

 俺は何も口にできず、アーガスを見つめ、ただ立ち尽くす。

 この時の俺には、彼が何を言っているのか理解が出来なかったし、異常に見えた。

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