Episode:15 昔のこと
パチパチと乾いた枝が音を立てる。
炎の暖かさに包まれながら、ゆっくりと目を開いた。
「……ん」
僕が漏らしたその声に、近くに立って見張りをしていたシェラが僕に視線を向ける。
「まだそんな経ってねぇ。寝とけ」
シェラは僕から周囲に視線を向けながらそう話した。
黒い鱗。
蜥蜴人であるシェラの鱗は闇に溶け、焚き火の灯りがなくては姿の視認さえも難しい。
それに、蜥蜴人は熱に弱いと言っていた。
心なしか焚き火から距離をとっている様にも見える……。
休憩を提案し、一番最初に焚き火の準備をし始めたのはシェラだ。
彼は、僕と、ディジーの為に、火を扱う野営を選んだと気がつく。
「ありがとうございます」
「おう、見張りはまだ交代じゃねぇ」
僕が感謝の言葉を述べると、シェラは見張りの件と勘違いしたのか、親指を立てて優しく笑う。
爬虫類特有の色彩豊かな瞳が、炎に照らされて輝いていた。
「寝ないのか?」
「そんなすぐに二度寝はできませんよ」
シェラの言葉に、僕は苦笑しながら答える。
近くで眠っているディジーに目を向けると、横たわった彼女の体には毛布が一枚かけられていた。
僕に毛布がないのは、ディジーより炎のそばにいたからだろう。
「少し……話しませんか?」
僕がそう話すと、シェラは少し考えこちらに来た。
そして、炎を囲む様に、向かいに腰を下ろした。
「話したいことがあるのか?」
「まぁ、それなりには」
僕がそう話すと、シェラは近くにあった枝を拾い上げ、大きくなる炎をつつく。
「まぁ、話せることならいいぜ」
シェラはそう言って僕を見つめる。
その言葉を聞いて、僕はある言葉を頭に思い浮かべた。
――アーガス……。
「アーガスさん……とはどんな人だったのですか?」
僕がそう話すと、シェラは眉を歪め、少しばかり困った様に頬を掻いた。
「あー……」
「話し難いことですか?」
曖昧なシェラの返事に、僕は質問を重ねる。
悪い事を聞いてしまったか……。
それとも……。
「いや、俺様もあんまり知らねぇってのが本音なんだ。まぁ、いいや。知ってることはっつったかんな」
シェラはそう話して、自身の首元を触って黒曜金級の等級章を外した。
金色の等級章は炎で光り輝き、その光がシェラの顔に反射する。
「これは、アーガスの等級章だ。自殺した死体から取った……きっと、こいつぁ、忘れちゃいけねぇんだ。そうだな、どこから話すか、ちと前の話だ、俺様が冒険者になりたての時だ」
シェラは僕を見つめ、ゆっくりと過去のことを話し始めた。




